人工生命
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2003年の段階で塩基配列より人工ウイルスを約2週間で合成することに成功している。ただしウイルスは他の生物細胞内に侵入して自身の複製を行わせないと増殖できないため、生命の範疇に含めるかどうかには議論の余地がある。これは米代替バイオエネルギー研究所が1200万ドルの予算で2002年から行っている研究の一端で、5386塩基対を持つものであった。

2010年、アメリカのクレイグ・ヴェンター博士のチームはmycoplasmaのゲノムを表すほぼ完全なDNAを、酵母の中で合成し、本来のDNAを除去された近縁種の細菌の細胞に、合成したDNAを移植する手法で、自立的に増殖する人工細菌を作成することに成功している(この手法では、分裂の前段階で天然由来の細菌の細胞に頼ってはいるが、2回目の細胞分裂以降の細菌は人工的に合成された生物であると解釈している)。
オープンプロブレム

生命は非生命からどのようにして生まれるか?[4][5]

試験管で分子原生生物を作る。

シリコン内での人工化学における生命への移行を達成する。

本質的に新しい生命システムが存在しえるかを決定する。

単細胞生物をライフサイクルをシミュレートする。

生きているシステムの物理的なダイナミクスからルールやシンボルが生成されるメカニズムを説明する

生きているシステムの可能性と限界は何か?

オープンエンドな進化において必然的なことを決める

特異的な応答システムから一般的なシステムへ進化するための最小条件を決定する。

全てのスケールで力学的階層を作るフレームワークを作る。

生物や生態系を操作することによる進化の結果の予測可能性を決定する。

進化するシステムの情報処理、情報流、情報生成の理論を開発する。

人生は心、機械、文化にどのように関係しているか?

人工生命システムにおける知性と心の創発を実証する。

機械が及ぼす生命の大きな変化への影響を評価する。

文化的進化と生物学的進化の相互作用を記述する量的モデルを提供する

人工生命の倫理原則を確立する。

批判

ソフトウェアによる人工生命は多くの批判にさらされてきた。しかし、サイエンスネイチャーなどの学術誌に最近掲載される人工生命に関する論文[6]に示されるように、徐々に学界の主流にも人工生命技術が受け入れられつつあり、特に進化の研究でその傾向が強い。

一般に人工生命の研究は計算機科学の分野で盛んであり、生物学者が人工生命を研究するということはほとんどない。計算機科学の中でも人工生命の研究に懐疑的な立場もある。
バイオテクノロジーに対する懸念

人工ウイルスに関して問題が指摘されている。韓国より報告のあったブタの遺伝情報のサンプルから、十数年前に開発された人工ウイルスの遺伝情報が検出されたとされている(→ ⇒[1])。ウイルスは感染の過程で宿主の遺伝情報に自身の遺伝情報を書き込むため、もし人工ウイルスが環境中に流出した場合、どんな生物に感染しうるのかや、どんな影響があるのかが予測することができない。

またバイオテクノロジー的な技術によって改変された生物(LMO:Living Modified Organism)の漏出に関しては生物の多様性に関する条約に含まれる「生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書(通称:カルタヘナ議定書)」において監視対象として制限されているが、生命そのものを製作した場合に於いても、同様の監視と漏出防止のための努力が求められている。

さらに人工微生物もナノマシン同様に、グレイ・グーの可能性が指摘されている。特に単なる機械装置とは違って、人工生命が環境中にある素材から自己複製が可能な場合、あらかじめ無限増殖を予防する措置も必要と考えられている。
脚注[脚注の使い方]^ Christopher Langton. “ ⇒What is Artificial Life?”. 2007年1月19日閲覧。
^ Mark A. Bedau (2003年11月). “ ⇒Artificial life: organization, adaptation and complexity from the bottom up”. TRENDS in Cognitive Sciences. 2007年1月19日閲覧。
^ 正確には、動物界・植物界・鉱物界の「3界」
^ “A List of Open Problems (Open Problems in Artificial Life)”. 2018年3月18日閲覧。
^ “ ⇒Open Problems in Artificial Life”. 2018年3月18日閲覧。
^ “ ⇒Evolution experiments with digital organisms”. 2007年1月19日閲覧。

関連項目

遺伝的アルゴリズム

ウォルターの亀

仮想生命

ゲーム理論

シムアース

人工知能

セル・オートマトン

フランケンシュタインの怪物

ホムンクルス

ボイド

メカニマル

ライフゲーム

ロボット

バーチャルペット

生命の起源

合成生物学

複雑適応系

OpenWorm - C.elegansを神経細胞間の信号伝達までシミュレーションすることによって精緻に再現するプロジェクトである。

外部リンク

人工生命の宝庫

Primordial Life

海洋科学博物館機械水族館

International Society for Artificial Life (ISAL)


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