人工林
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この後、全国の人工林の伐採地を再造林することに加え、衰退しつつあった薪炭林(天然林)の伐採跡などにもスギやヒノキ、カラマツを植栽する「拡大造林」が農林水産省等により奨励された。

1970年代後半 - 80年代にかけて外材の輸入制限が緩和され、海外からの輸入量が急増すると一転して木材価格は暴落。日本の山には、採算の取れない人工林の多くが取り残されることとなった。
統計

日本の森林面積は約2510万haでその約4割にあたる約1,000万haが人工林である[5]

日本の地方別に見たデータは以下のようになっている。森林の地方別構造(1995年 林野庁編『林業統計要覧』)[6]

森林面積林野率人工林率国有林
北海道555万ha66%27%57%
東北471万ha74%41%43%
関東145万ha45%46%30%
中部512万ha75%41%22%
近畿183万ha67%48%5%
中国232万ha73%40%7%
四国139万ha74%62%14%
九州278万ha66%55%20%
日本2515万ha66%41%31%


林野率=森林面積÷総面積

人工林率=人工林面積÷森林面積

国有林率=国有林面積÷森林面積

中国

中国は世界で4番目に広い国土面積を有しているが、内陸部には砂漠や高地が多いため、国土面積に対する森林面積の割合はさほど高くはない。分布も東北部や西南部に集中している[7]
歴史

中国の森林には国有林と集団所有の集体林の2種類があり、個人所有は認められていない[7]

2001年に国家林業局は「国民経済と社会発展に関する5カ年計画」を発表している[7]
統計

2010年の中国の森林面積は2億686万haで世界第5位、人工林の面積は7,716万haで世界第1位となっていた(国連食糧農業機関「世界森林資源評価2010」)[7]。2020年までの「世界森林資源評価2020」によると中国では2010年から2020年まで年平均で114万haの人工林が増加し、人工林の面積は8,470万ha、人工林率38.5%となり世界第1位だった[1]
ブラジル

ブラジルでは、長らくアマゾン川流域の原生林を中心に収奪的に伐採、開発が行われたことから、緑化目的以外の人工林は目立たないものであった。一方で、初期成長が早いユーカリが6年-7年で収穫でき、製紙原料のパルプ[8]として有望であることが注目されると次第に植林面積が増加。2000年代にはユーカリの植林面積が100万haを越える規模となった[9]

2020年までの「世界森林資源評価2020」によるとブラジルの人工林の面積は1,120万haで第7位、人工林率2.3%だった[1]
人工林の問題

世界の人工林は以下のような問題を抱えており、日本の農林水産省等が奨励した人工林も多くの問題を抱えている。
緑の砂漠
「緑の
砂漠」とは、樹木はあるものの、下層植生が乏しい状態である。人工林は過密に植えたものを適宜間引いていくことで、良質の木材を得るという手順をたどる。まず樹木が幼いうちは下草を刈るなどして、太陽光や養分をめぐる下層植生との競争を人為的に避ける方針がとられる。下層植生は刈り取られてしまい、樹木は過密な状態のまま成長する。やがて樹木が大きくなり下層植生に対して優位に立つと、今度は樹木間で間引きを行わなければならないのであるが、これを怠ったまま放置しておくと密に広がった樹冠によって太陽光が遮られ、下層植生は枯れ果てて土がむき出しになった状態になってしまう(一応、時間が経てば再生はする)。因みに木材として育てる為には枝打ちをして余分な枝は切り落とさねばならず、枝打ち作業を行う為にも地面が露出していた方が便利という理由でも下草刈りが行われる。このため土がむき出しの状態になる期間が人為的に増えてしまっている。これが緑の砂漠と呼ばれる状態で、遠目には緑に覆われているものの、実態は生物多様性という面で非常に乏しい森林となってしまっている。また、下層植生がないことで雨滴による土壌侵食を受けやすく、土砂災害や水源地の保水力低下や水質悪化[10]の原因となってしまうことがある。

なお、天然林の場合は種子が芽生えた時から激しい競争に晒され、樹木が幼いうちから密度が急激に減る。陽光が地表近くまで届くため下層植生もよく育ち、この問題は起こりにくい。
生態系の破壊
単一の樹種で構成されることが多く、天然林に比べると多様性という面では乏しいものがある。下層植生があるうちはまだ良いものの、前述の「緑の砂漠」状態になってしまうと単純化が一気に進んでしまう。木の実や草、小動物といった餌が不足した野生動物が、人里に下りてきてしまう一因とも言われている。
健康被害
手入れのなされていない人工林から発生する大量の花粉が花粉症の原因として問題になることがある。

これらの原因はいずれも手入れ不足だが、そうなる原因として日本では以下のようなことが挙げられている。

民有林では地籍調査が進んでいないことから、所有者間の境界が不明瞭であり、森林所有者の管理意識が低下しがちである。

木材価格の暴落により売っても利益が出るどころか、手間賃を差し引くと赤字である[注 1]

地形が急峻で機械化が容易ではないし、機械を入れるお金もない。

林家の高齢化と後継者問題。

天然更新にかかわる問題

近年の人工林は天然更新と称して皆伐後に広葉樹林とすることを狙い、植林をせず放置されることが多くなってきている。これは近隣に広葉樹林があり、条件のよい場所でとられる方法で、人工林にかかわる諸問題を解決する手段ともなっているが、豪雪地帯や風害地など条件の悪い場所ではササ類などが繁茂し森林が順調に回復しないケースもみられる。

2006年時点で、日本の人工林の8割が未整備状態であるとされており[11]、公益的機能の低下に伴う土砂災害や森林の荒廃の危険性は年々高まってきている。廃村限界集落周辺の森林、大規模河川や都市を流れる河川の上流に位置する森林などは、整備の重要性が特に高いとされている。
人工林の将来

かつて日本の国産材を圧倒した南洋材(東南アジアなど)は、資源の枯渇と自然保護による伐採の禁止などの動きにより輸入用が激減している。

南洋材を補うように輸入量が増加した北米材(カナダアメリカ)も同様に規制が厳しく、供給は減少傾向にある、また、北洋材(ロシアシベリア地方)に関しては長年収奪的な伐採を続けたことによる資源量の減少が著しい。このような状況から、2009年には日本の木材自給率は2008年の24.0%から27.8%と漸増したものの、国産材の供給力は未だ回復しておらず、1985年の35.6%と比較して木材自給率は低水準にとどまっている。

世界的に利用可能な森林資源が減少傾向にある中、経済発展が目覚ましい中国の木材輸入は急増傾向にあり、木材需給が逼迫し始めている。このため国産材の競争力は回復しつつあり、人工林の伐採による国産材の供給増加が急がれている。
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 林野庁の木材価格で平成22年9月のデータをみるとスギの丸太(枝を払い幹だけのこと)で1立方メートルあたり約12,000円、製材品にすると約41,000円となっている。ちなみに、一般に伐採する程度の樹齢のスギの容積は約0.3立方程度とされる。

出典^ a b c d e f 世界森林資源評価(FRA)2020メインレポート 概要 (PDF) 林野庁。2021年10月8日閲覧。
^ a b c人工林と天然林 森林・林業学習館、2017年5月17日閲覧。
^ 昭和32年度年次経済報告 昭和31年度の林産物の動向(経済企画庁)2016/08/30閲覧
^ 「木材高騰の真因はどこにあるのか」『朝日新聞』昭和47年12月4日朝刊
^日本の森林面積と森林率 森林・林業学習館、2017年5月17日閲覧。
^日本の森林・林業と林業労働力問題 (PDF) (1999年4月 農林金融)
^ a b c d 世界の森林と保全方法 中華人民共和国 フォレスト・パートナーシップ・プラットフォーム(環境省)、2017年5月17日閲覧。
^アマゾンで植林・チップ生産輸出事業に取り組む 日本ブラジル中央協会 2017年12月16日閲覧
^南米の植林事情 中川木材産業株式会社 2017年12月16日閲覧
^ 【センサー】荒れる人工林、水源地ピンチ/手入れの人材現象、土砂流入し水質悪化『日本経済新聞』朝刊2018年1月15日(社会面)
^ 縦並び社会・格差の現場から:限界集落(毎日新聞

参考文献


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