アメリカでは夫婦同姓を強制する法律はなかったが、結婚改姓しない女性は社会的に非難されていた。女性運動家であるルーシー・ストーン(英語版)は1855年に結婚した際、夫の同意を得て結婚後も夫の姓にしなかったが、土地購入の際には夫の姓でサインすることを求められたという[52]。1920年にはルーシー・ストーン同盟(英語版)が結成され、自らの姓をアイデンティティとする活動を行い、1972年には女性が生来の姓を使用する権利が裁判所で認められた[53]。1970年のニューヨーク・タイムズの調査では結婚改姓を行わない女性の割合は17%であり、1980年に14%、1990年に18%となっている。また別の調査では2000年に26%、2014年は29.5%となっているものもある[51]。
日本と諸外国の違いは、選択の有無ではなく、家族の姓の統一を重視して夫婦と子を同姓にするかそれとも出生から死亡までの個人の姓を重視するか、あくまで本名の姓に関する考え方の違いである。これは、異なる文化・歴史的背景が国民の身分の在り方に影響しているといえる。またアメリカにおいては、結婚時に改姓をする女性は「人に依存する傾向があり、志が低く、あまり知的ではない」という逆の偏見が研究者や社会にもあるという指摘も行われている[49]。
一方で、日本では通称としての旧姓に関して、旧姓使用の可否に関する明確な規範がまだないという課題が残っている。もっとも、およそ令和期に入ってからは旧姓を身分証(運転免許証、個人番号カード、パスポートなど)に併記することが可能になったことから、旧姓が通用しない日常的場面がすでに減ってきている。 新生児が生まれたときには、14日以内(国外で出生があったときは、3ヶ月以内)に届け出なければならず(戸籍法第49条)、事実上、新生児の名はこの出生届のときに定められる。子の命名において使用できる文字には制限が設けられている(戸籍法50条1項、戸籍法施行規則60条参照)。人名については固有の読み方をさせる場合があるが、法的な制限はない(→人名訓)。そのため、漢字表記と読み仮名に全く関連がないものや当て字なども許容される(例:風と書いて「ういんど」、太陽と書いて「サン」など)。 また、文字数にも制限はない。皇族の場合、生後7日(御七夜)を迎えた時に命名の儀が行われ、命名される。 (同じ戸籍内にいる人物と同じ文字の名を付けることはできないが、同じ読み方の名を付けることはできる。例えば「昭雄(あきお)」と「昭夫(あきお)」のように同音異字の場合は可能であり、「慶次(よしつぐ)」と「慶次(けいじ)」のように異音同字の場合は不可能である。なぜなら、戸籍に読み方は記載されないからである(翻せば、読みを替えるだけなら改名の必要はないことになる)。なお、「龍」と「竜」のように新字体と旧字体とは同じ字とみなされるため、「龍雄」と「竜雄」のような場合は不可能である。稀に夫婦で同名というケースもあるが、これは問題ない。) 氏・名のどちらも、比較的独自の語彙があるため、ある人の氏名を聞いて、それが人の氏名とわかるのが普通である。また、氏か名かいずれかを聞いた場合、「ゆうき」「しょうじ」「はやみ」「わかな」「はるな」「よしみ」「あいか」「まさき」「とみお」などのごく稀な例外を除いて、それがどちらであるかを区別することも比較的易しい(これは、例えば英語でRyan, Douglas, Scottのように氏にも名にも用いられる語がかなり多くの人名に使われていることと対照的である)。 しかし、氏名を聞いた時にそれがどのような文字で書かれるかについては必ずしも分からない場合が多い。これは同じ読みの漢字がたくさん存在するという日本語の特徴のためである。また、漢字で書かれた氏名から正しい読み方が特定できない場合もある。これは、馴染みの薄い読み方(難読人名)であるために起こることもあるが、単に2つ以上のよく知られた読み方があるために起こる場合もある。日本の漢字は読み方が多いためこのようなことが起こりやすい(例えば、「裕史」という名はひろし、ひろふみ、ゆうし、ゆうじ、などと最低4通りの読みがある / 字面通りの読みである必要はないので、実際にそれ以上存在する)。そのため、各種の申込書・入会書・願書・申請書などに名を記す時に振り仮名の記載を求められる場合が多いが、法的にそれを証明する手段は少ない。これは、戸籍が読みではなく字を基準にした制度であるためである。 人が互いを呼び合う際には、氏と名の全て(フルネーム)を呼ぶことは多くない。あだ名や、氏・名に「さん」「ちゃん」などの呼称を付け、あるいは、肩書きや続柄に関する呼称、二人称代名詞、まれに字(あざな)などを用いることが多い。また、親しくない相手に、名のみで呼びかけるのは失礼との考えを持つ人が少なくない。 一般に、呼称をめぐる習慣は非常に複雑であり、簡潔に説明することは困難である。当事者間の年齢や血縁や仕事上の関係、社会的な文脈などによって大きく変化するが、そうした文脈の制約条件だけからは一意的に決まらないことが多く、個人的な習慣や好みなども影響する。さらに、方言などと絡んだ地方差も認められる。 2000年には国語審議会が「言語や文化の多様性を生かすため名字を先にするのが望ましい」とする答申を出したが、理工系の研究者の論文やサッカーの登録選手名などを除くと広まっておらず、政府機関でも名→姓の表記が続いていることから2019年には柴山昌彦文部科学大臣が関係機関に対し姓→名の表記を要請した[54]。2019年10月25日、『公用文等における日本人の姓名のローマ字表記について 日本人の多くは、死亡すると、仏教式の葬儀を行い、戒名(法名[注釈 10])を付ける。戒名とは、仏門に帰依して授戒した出家・在家の者に与えられる名で、多くは僧侶が与える。戒名の形式はそれぞれの宗派によって異なる(例:○○大居士、○○居士(大姉)、○○信士(信女)、釈○○など)。
名
氏名の読み・表記・呼び方
氏名の「読み」と表記
名前の呼び方
英語表記
戒名詳細は「戒名」を参照
漢字文化圏の名前「漢字文化圏」および「東アジア」も参照
中国人の名前詳細は「中国人の姓名(英語版
中国人の名前は漢字一字(まれに二字)の漢姓と、一字か二字の名からなり、「父方の姓」「その父系血族の同世代に共通の漢字(輩行字)」「子に特有の漢字」という順に表記される(現在では輩行字に従わない命名もある)。例えば毛沢東には2人の弟がおり、それぞれ毛沢民、毛沢覃という名であったが、この3人に共有されている「沢」が輩行字である。まれに輩行字と特有の漢字は逆になる場合もある(例えば?経国と?緯国)。漢字一文字名には輩行字がないことになるが、その場合でも同世代で共通の部首を持つ字のみを名付けることがある。たとえば「紅楼夢」の主人公賈宝玉の父の名は賈政であるが伯父の名は賈赦、賈政と同世代の親族の一人は賈敬である。元来姓は父系の血統を示すので原則としては夫婦別姓であるが、現代の中国や台湾では、男女平等の観点から、女性は結婚に伴って、夫の姓を名乗ることも選択可能なことが法律で保証されている。夫の姓に続けて自分の姓を書く(従って漢字四文字になる)場合もある。二文字の姓(複姓)もあり、諸葛・上官・欧陽・公孫・司馬などが有名である。
また、歴史を遡れば姓と氏は別のものであった。周の代には王「「周」の一族は「姫」、太公望「呂尚」の子孫である「斉」公の一族は「姜」、後に始皇帝を出した「秦」公の一族は「?」といった姓を持ったが、これは漢族形成以前の部族集団の呼称とでもみるべきもので、族長層だけがこれを名乗った。こうした族集団の内部の父系血族集団が氏であった。例えば周代の姫姓諸侯である晋公の重臣であり、後に独立諸侯にのし上がった「韓」氏は「姫」姓であって周の族長層に出自するが、氏は「韓」であった。しかし戦国時代になると社会の流動性が高くなり、それによって姓はその根拠となる族集団が形骸化していった。また姓を持たず氏のみを持つ非族長層も社会の表舞台に立つようになっていった。そして「漢」の代になると古代の姓の多くが忘れられ、氏が姓とも呼ばれて両者が混同される形で父系の血縁集団を示す語として用いられるようになったのである。前漢の皇帝を出した劉氏も姓を持たない階層に出自した。
さらに伝統的に下層階級以外の男性は目上の者だけが呼んでよい名(「諱」とも言う)と別に同等者や目下の者が呼ぶ「字(あざな)」という呼び名を持った。現在は字の風習は廃れつつあるようである。
香港や台湾のように、外国に支配されていた期間が長かった地域は、欧米や日本などの名前を模して、本名とは別の名前を持つ場合がある。特に香港は、近年までイギリスの支配下であったため、イギリス風の名前を持っている場合が多い(ジャッキー・チェン、アグネス・チャン、ブルース・リー)。台湾でも65歳以上の女性には日本式に「子」を止め字とする名前も少なからず見られる。中国では婚姻による名字の変更はなく、子供の名字は、父親の名字を名乗るのが通例である。香港では、イギリス風の名前はパスポートなどの身分証明書にも使用できるなど、広く使われている。名づけ方は、キリスト教徒の家系なら洗礼名という形で親が付ける場合もあるが、学校の先生が付けたり、本人が自分で付けたりする場合もある。名づけ方はかなり自由度が高く、英語圏には存在しない名前も多く、男性名が女性にも使用される事もある[55][56]。
朝鮮半島の名前この朝鮮語のハングル文字には、一部のコンピュータや閲覧ソフトで表示できない文字が含まれています(詳細)。「漢姓#朝鮮」、「朝鮮人の姓の一覧」、および「朝鮮人の人名」も参照「韓国併合ニ関スル条約」に関する李完用への全権委任状。