京都議定書
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

このEU指令下では、京都議定書策定以前から技術のみに依存するのではなく化石燃料を使わない方法で化石燃料由来排出量を減らしてきた北欧諸国[1][2][3]などは京都議定書の目標値が緩く設定されており[4]、例えばスウェーデンは +4%が認められている[注釈 1]など、具体的な成果を挙げている国については相応の評価がされている。
遵守

気候変動枠組条約および京都議定書により定められた義務については、その約束が遵守されることを担保するため、罰則規定のように機能する規定が設けられることとなった。具体的には締約国会議7および締約国会議/moP1で決定され、疑義が唱えられた際の審議・判断を行う遵守委員会が設けられるとともに、不遵守時には次のような措置が取られることとなっている。
報告義務不遵守
[5]
気候変動枠組条約および京都議定書による温室効果ガス排出量管理に必要な各種排出量および森林吸収量の変化を推計するための基礎的数値については、各国が集計し報告することとなっている。この報告に問題があった場合には京都メカニズムへの参加資格を喪失する。
排出枠不遵守 [6][7]
京都議定書により約束した割当量を超えて排出した場合には、

超過した排出量を 3割増にした上で次期排出枠から差し引く。

排出量取引において排出枠を売却できなくなる。

締約状況
発効条件

発効の条件は、以下の両方の条件を満たす必要がある(京都議定書25条)[8]

55か国以上の国が締結

締結した附属書I国(先進国、積極的に参加した諸国)の合計の二酸化炭素1990年の排出量が、全附属書I国の合計の排出量の55%以上

後者の条件について、世界第二位の温室効果ガス排出国であるアメリカ合衆国が国内事情により締結を見送っている。

経済発展をおこなう以上、多量の二酸化炭素を排出せねばならないと考えられたため発展途上国の自発的参加が見送られ、当初は推進していたアメリカ合衆国も後に受け入れを拒否[注釈 2][9]ロシア連邦も受け入れの判断を見送っていたため、2004年ごろまでは議定書の発効が行われていない状況であった。

2004年に、ロシア連邦が批准したことにより、2005年2月16日に発効した。日本においても、2005年1月26日に公布及び告示され(平成17年条約第1号及び外務省告示第58号)、同年2月16日から効力が発生している。

先進諸国の中で京都議定書を批准していないアメリカ合衆国政府は、産業界の自己経済利益のみを追求する考え方に基づき取り組みを拒否しているとの非難を国内外から浴びている[10]。同様に批准していなかったオーストラリアでは世論の高まりを受けて総選挙により政権交代し、直後の 2007年12月3日に批准した[11]

なお、日本では2002年5月31日に国会で承認され、2002年6月4日に国際連合に受諾書を寄託した。
署名・締約国数

以下に、署名・締約国数[12][13]を示す。各国の批准の状況を示した図
(2012年2月時点)
■: 数値目標をもつ締約国(主に先進国)
■: 数値目標をもたない締約国(主に発展途上国)
■: 態度未定・不明
■: 批准を拒否している国
■: 議定書を離脱した国

署名国:83か国

締約国:192か国

なお、批准を拒否している米国においては、219都市が独自に京都議定書を批准している[要出典]。
京都メカニズム

国内での単なる排出量削減を除く植林活動や、国外での活動、削減量の国家間取引など、温室効果ガスの削減をより容易にするための規定で、柔軟性措置とも呼ばれる。一般に、クリーン開発、排出量取引、共同実施の 3つのメカニズムを指す[14]が、これに吸収源活動を含めることもある。
クリーン開発メカニズム

クリーン開発メカニズム (CDM: Clean Development Mechanism) とは、先進国開発途上国技術資金等の支援を行い温室効果ガス排出量を削減、または吸収量を増幅する事業を実施した結果、削減できた排出量の一定量を先進国の温室効果ガス排出量の削減分の一部に充当することができる制度である。

先進国は少ないコストで削減が可能となり、途上国は技術や資金の供与といった対価が望めるなどの効果がある。
排出量取引

排出量取引 (ET: Emissions Trading) とは、下記 4種類の炭素クレジットを取引する制度である[15]。「排出権取引」「排出許可証取引」「排出証取引」とも呼ばれる。

AAU (Assigned Amount Unit) - 各国に割り当てられる排出枠

RMU (Removal Unit) - 吸収源活動による吸収量

ERU (Emission Reduction Unit) - JI で発行されるクレジット

CER (Certified Emission Reduction) - CDM で発行されるクレジット

これらの炭素クレジットを 1t-CO2 単位で取引する。排出量を排出枠内に抑えた国や事業で発生したクレジットを、排出枠を超えて排出してしまった国が買い取ることで、排出枠を遵守したと見做されるものである。温室効果ガス削減が容易ではない国は少ない費用で削減が可能となり、削減が容易な国は対価を求めて大量の削減が望めるという、2つの効果を念頭に置いている。

京都議定書は国家間での排出量取引のみを定めているが、より効果的な温室効果ガスの削減が可能な国内での排出量取引も行われつつある。しかしながら、排出量の上限を最初にどのように公平に割り振るかが問題であり、一律に割り振ると、既に省エネを徹底していた企業が損をするという問題がある。このため、オークション方式で排出権を購入する方式が広まりつつあるが、当初の購入資金が負担となることや、価格の変動による経営リスクが生じることが問題とされている。

なお、2001年のマラケシュ合意では、排出上の権利を与えるものではないとしており、欧州連合も排出の権利とは認めていない。本来この制度は、排出量の削減による取引上の利益により、さらなる削減意欲を生じさせることを意図したものであるが、逆に排出枠の設定方法によっては過去の排出量が既得権益のようになってしまったり、炭素クレジットの市場価格が化石燃料から再生可能エネルギーへの切り替えや省エネルギー等による排出量の削減にかかる費用よりも割安になってしまった場合に、本来必要な努力を減じさせるおそれもあると指摘されている。

また、近年は関心の高まりを受けて第三者機関が認証する排出削減量 (VER: Verified Emissions Reduction) が民間で取引されるようになったが(カーボンオフセットグリーン電力証書などを参照)これらは一般に京都メカニズムの枠外で行われる取引である。
共同実施

共同実施 (JI: Joint Implementation) とは、投資先進国(出資をする国)がホスト先進国(事業を実施する国)で温室効果ガス排出量を削減し、そこで得られた削減量 (ERU: Emission Reduction Unit) を取引する制度。つまり、先進国全体の総排出量は変動しない。
吸収源活動

吸収源活動とは、1990年以降の植林などで CO2 の吸収源が増加した分を、温室効果ガス排出量削減に換算し算入するもの。また、吸収源である森林が同年以降に都市化農地化などで失われた分は排出量増加として算入される。京都議定書 第3条で定められており、土地利用・土地利用変化及び林業部門 (LULUCF: Land Use, Land Use Change and Forestry) 活動とも呼ばれる。

具体的には次の活動が規定されている(京都議定書 3条3項)[16]

新規植林(Afforestation、過去50年間森林がなかった土地に植林)

再植林 (Reforestation、1990年より前には森林であったが同日時点では森林ではなかった土地に植林)

森林減少(Deforestation、森林を他用途に転換)

これらの英頭文字を取って ARD活動 とも呼ばれる。

これに加え、マラケシュ合意では「森林管理」「放牧地管理」「植生の管理」を利用することも許容された(京都議定書 3条4項)。このため、既存の森林についても 1990年以降に適切な管理を行うことで、その森林を吸収分として算入できるようになった。これは、義務達成を難しいと考え、しかも緑被率の比較的高い国である日本、カナダが主張し、採用されたものである。
日本の目標達成状況「京都議定書目標達成計画」を参照

日本の削減量6%については、1990年度(代替フロンについては1995年)を基準としている。また、京都議定書目標達成計画で、それぞれの温暖化対策要素ごとに削減目標を定めている。同計画では、温室効果ガス排出量を基準年比 -1.8%から -0.8%に抑制し、森林吸収量を基準年比3.8%程度確保し、残りを京都メカニズムの活用と見込んでいた。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:110 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef