京都弁
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1993年平成5年)から1994年(平成6年)にかけての方言調査では、「どす」に関して80歳代では「使用する」と回答した割合が49.2%なのに対し、10代では「聞いたこともない」が54.0%であった[4]。楳垣は1950年昭和25年)の時点で以下のように書き残している。京言葉--優美なあでやかなあの京言葉--というものは、もう京都にもなくなろうとしている。その最後の保存地であった祇園あたりにさえその傾向は見えそめている。
(中略)
京都もやはり近代都市の一つで、終戦後の社会混乱の洗礼を受けて変貌を遂げているのである。しかもまた一方においては標準語化の波が、京都にも押し寄せて、アクセントだけを残して、語彙や語法の面では非常な変化が起っている。古い言葉などは、これらの変化に抗して生き残る余地はほとんどない。よほど根強いものだけが、まだ残っているに過ぎない。 ? 楳垣実、『国語学』第4輯 26ページ
イメージ

京言葉には「優雅」「女性的」といったイメージがあり、2019年令和元年)に「方言がかわいい『都道府県』ランキング」で京都府が2位になる[5]など、21世紀になってもそのイメージは依然根強い。一方で、楳垣は「我々京都人から見れば、正直に云って、京都は一般に少し理想化されて考えられているような気もする。」「京都といえば一木一草までみやびやかであると考える人も多い。京言葉の魅力も或はそんな所から生れて来るのかも知れない。」と述べている[6]。ゆったりした優しい雰囲気の言葉というイメージについて、「芸舞妓さんの話すことばからの連想によってできたイメージであろう」「一般市民の日常会話における話しことばは、かなりテンポの速い、また決して柔らかいとは言えないどちらかといえば語調のきついものである」と指摘する研究者もいる[1]
区分

日本語学者の奥村三雄は山城の方言を以下のように区分している(区分の基準とされた方言の特徴および市郡の名称・範囲は概ね1962年当時のもの)[7]

京都市内(戦後に編入された旧郡部を除く) - 進行「-てる」。終助詞「ぜ」「で」の使用少ない。いわゆる京言葉(「どす」「おす」「やす」など)を使用。

その他 - 進行「-たる」あり。終助詞「ぜ」「で」あり。京都市内と比べて荒い。

愛宕郡(現在の左京区岩倉八瀬以北と北区雲ケ畑)・乙訓郡宇治市久世郡の各大部分 - 京言葉を多用。

綴喜郡と久世郡の各西部(現在の八幡市伏見区の一部など) - 京言葉を多用。女性語の終助詞「し」や順接助詞「よってに」など、大阪弁の影響あり。

乙訓よりも八幡の方が大阪的である点について奥村は、鉄道開通以前、京都・大坂間の往来に淀川(宇治川)や京街道がもっぱら利用されていた時代の影響であろうと推測している[7]


綴喜郡南部と相楽郡の大部分 - 京言葉の使用やや少ない。親愛表現「-らる」あり。

葛野郡(現在の右京区中川・小野郷) - 京言葉の使用やや少ない。親愛表現「-らる」あり。逆接助詞「けんど」など、丹波言葉の影響あり。

奥村は、丹後・丹波間と比べて丹波・山城間の方言差はそれほど著しくなく、口丹波北桑田郡(特に京北と広河原)は京言葉的傾向がかなり多いとした[7]。楳垣によれば、京言葉の影響は口丹波だけでなく福井県若狭滋賀県三重県北部(北伊勢伊賀)にも及び、奈良県北部も「年配の人達は京言葉に近く、若い人ほど大阪弁的になる中間地域」だという[8]。また山本俊治によれば、大阪府内でも、三島地区北河内の淀川沿いや能勢町歌垣村の方言には京都の影響が見られるという[9]

京都市中心部の京言葉は位相の面で、京都御所で話された公家言葉(御所言葉)と市中で話される町ことば(町方ことば)に大きく分けられる。前者は室町時代初期の女官の話し言葉が起源で、宮中・宮家公家で使われ、明治以降も一部の尼門跡で継承されている。後者は話者の職業や地域によってさらに細かく分類することができ、その例として井之口有一と堀井令以知は以下の4つを挙げている[10]

中京ことば - 中京区を中心として、室町問屋街などで話されることば。

西陣の職人ことば - 西陣の機屋(西陣織)の人々のことば。

祇園の花街ことば - 祇園を中心とする花街の舞妓芸妓によって話されることば。客の前など口頭では都合の悪いやりとりをする際には、簡易的な手話のような「身振り語」も用いられる。

伝統産業語 - 京焼京友禅・京扇子といった伝統工芸の現場で話される職業語(業界用語)。

このほか、八瀬・大原大原女も参照)・北白川高雄・大枝など[11]、郊外の農村に特有の方言もあった。
発音「近畿方言#音声」も参照

音韻体系は共通語とほとんど変わりないが、子音を弱く、母音を長く丁寧に発音する傾向があり、京都人が朗読すると同じ音節数でも東京人のほとんど2倍の時間を費やすという[12]
母音


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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