京都弁
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京都市などでは「-たる」は結果を表し(楳垣は、短音にならず「-たある」と言うとしている[25])、「-よる」は動作主への軽い卑蔑を表す(男性語的)[24]。この軽蔑的な「-よる」は「書いてよる」のように「て」を介して使うこともある[26]

例:あいついつでも悪いことしよる[24](宇治田原や笠置などでは「悪いことをしている」、京都市などでは「悪いことをしやがる」という意味)


否定には助動詞「-ん」「-へん」を使う。「-へん」は五段動詞では「行かへん」のようにア段に後続し、その他では連用形に「や」を介して後続するが、「や」を介さずに語幹を長音化させるなどして後続する形もある(以下のとおり)[27]。上一段・カ変・サ変動詞で現れる「-ひん」は比較的新しい形で、楳垣は1949年に「近来学童の間からミーヒン・キーヒン・シーヒンという形が現れ、追々と勢力を得つゝある」と記録している[27]。大阪では五段動詞で「行けへん」のように「エ段+へん」と言うことがあり、「エ段+へん」が不可能を表す京都とはコミュニケーションギャップが生じやすいとされるが、山城にも通常の否定で「エ段+へん」という形を使う地域は存在する(大阪府に近い地域と京都市の山間部各地)[28]

下一段(出ない):でやへん、でーへん

上一段(見ない):みやへん、みーへん(稀)、みーひん

カ変(来ない):きやへん、きーへん(稀)、きーひん

サ変(しない):しやへん、せーへん、しーひん


意志・勧誘には、五段動詞では未然形(オ段)を伸ばし、一段動詞では未然形に「-よー」を付けるが、短く言うことが多い[29]。サ変動詞は「しょ(ー)」、カ変動詞は「こ(ー)」になる点が共通語とは異なる[30]。親しみを含んだ命令を表すことがある[30]。なお、共通語では「行こう」が「行くだろう」と同様に推量を表すことがあるが、京言葉では推量は「行くやろ」のように「終止形+やろ」でのみ表す[30]

例:もっとはよーこーともたんやけど(もっと早く来ようと思ったんだが)[30]

例:とっととしょー(さっさとしなさい)[30]


可能表現は共通語と同じく助動詞「-れる」「-られる」を使う[31]。五段動詞において、大阪では「行ける」「行かれへん」のように肯定形のみ可能動詞に移行しているが、京都では「行ける」「行けへん」のように肯定形・否定形ともに可能動詞に移行している[32]。不可能を表す場合、「よー -ん」という言い方もある。

例:よー走らん


敬語

長らく御所が存在し宮中の御所言葉が庶民の言葉にも影響を与えたこと、古くからの都市社会で封建的な社会階層化が進んだことなどから、敬語が非常に発達している。特に女性層で顕著であり、女性層では敬語に限らず常に丁寧な言葉遣いが好まれ、「食う」よりも「食べる」、「うまい」よりも「おいしい」を用いようと努めたり、日常生活の名詞にも「お豆さん」のように盛んに敬称をつけたりする[33]

-はる:京都とその周辺の最も代表的な敬語で、「なさる」が「なはる」を経て変化したものとされる[34]。五段動詞では「書かはる」のようにア段に後続し、その他では「でやはる(出る)」「きやはる(来る)」「しやはる(する)」のように連用形に「や」を介して後続する[35]。「はる」は五段活用であるが、命令形はない[34](楳垣は男性の親しい間柄で「そうしやはれ(そうしなさい)」のように言うこともあると記録している)[35]。「-はる」は京都以外の関西各地でも使われるが、大阪と比較した場合、「行かはる(京都)」「行きはる(大阪)」という形式上の違いのほか、京都の方が日常会話での「-はる」の使用率が(特に会話の話題に登場する第三者に対して)高く、大阪では明確に尊敬語として使われるのに対し、京都では身内・目下・動物などにも親しみを込めて使われ、聞き手に対する丁寧語美化語も兼ねるとされる[36]。例えば1990年代の調査で、「父親」「赤ん坊」を話題にする際に「-はる」を使う割合は、大阪では男女とも2割程度だったのに対し、京都では父親に「-はる」を使う者は女性9割、男性6割、赤ん坊に「-はる」を使う者は女性8割、男性でも4割にのぼった[36]

例:乗って来はるわ(乗って来られるよ)


なはる:「する」の尊敬語。「-なはれ」「-な(は)い」の形で様々な動詞の命令表現にも使うが、「-なはれ」は大阪的な言い方で京都ではほとんど使わない[35]

例:あんさんがなはったんどすか(あなたがなさったのですか)[35]

例:はよーおいなはい(早くいらっしゃい)[35]

例:あてにもおくない(私にも下さい)[35]


お 連用形+やす:「はる」よりも敬意の高い敬語表現。「お行きやさへん」(お行きにならない)のように活用させて使うのは京都市とその周辺に限られるが、命令表現としては山城・口丹波一帯で使われ、「おやすみやす」「おいでやす」「ごめんやす」など「やす」を使った挨拶語はさらに広範囲で使う[34]。相手への確認のための強調として、「やっしゃ」とも。

例:ちょっともおいでやさしまへん(少しもお出でになりません)[35]

例:またおいでやしとーくれやす(またお越しください)[35]

例:さっさとおしやっしゃ(早くしなさいよ)[35]


-といやす:「ておいやす」の変形。

例:しといやした(していらっしゃいました)


お 連用形+る:必ずしも丁寧とは限らず、ごく親しい感情を込めた表現。楳垣によると、江戸末期から、音便を使わない「行きて」「行きた」のような言い方に「お」を冠して使うようになり、そこから「お行きる」のような終止形が逆成されたものだという[37]。「お+連用形」の後ろに助詞「な(いな)」を付けて禁止を表したり、否定助動詞「-ん」+助詞「か」「かい」「かいな」などを付けて勧誘や命令を表したり、否定助動詞「-ん」+助詞「と」を付けて条件を表したりもする[37]


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