京都弁
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

後者は話者の職業や地域によってさらに細かく分類することができ、その例として井之口有一と堀井令以知は以下の4つを挙げている[10]

中京ことば - 中京区を中心として、室町問屋街などで話されることば。

西陣の職人ことば - 西陣の機屋(西陣織)の人々のことば。

祇園の花街ことば - 祇園を中心とする花街の舞妓芸妓によって話されることば。客の前など口頭では都合の悪いやりとりをする際には、簡易的な手話のような「身振り語」も用いられる。

伝統産業語 - 京焼京友禅・京扇子といった伝統工芸の現場で話される職業語(業界用語)。

このほか、八瀬・大原大原女も参照)・北白川高雄・大枝など[11]、郊外の農村に特有の方言もあった。
発音「近畿方言#音声」も参照

音韻体系は共通語とほとんど変わりないが、子音を弱く、母音を長く丁寧に発音する傾向があり、京都人が朗読すると同じ音節数でも東京人のほとんど2倍の時間を費やすという[12]
母音

連母音アイ・オイ・ウイの変化は、「わたい→わて(女性の一人称)」や「さかい→さけ(接続助詞)」など若干の語でアイ→エが見られるのみで[13]、「黒い→くれー」「悪い→わりー」などが起こる関東や丹後とは対照的である。なお「消える→けーる」「見える→めーる」などイエ→エーの変化もあるが[14]逆行同化によるものである。

母音の長短意識が多少曖昧という特徴がある。「学校→がっこ」「山椒→さんしょ」「先生→せんせ」のように長母音を短く発音する傾向があり、特にオ段音で多い[13]。短音化は主に語尾で起こるが、「御幸町→ごこまち」のように語中で短音化する例もある[14]。1拍名詞は「蚊→かー」「野→のー」のように伸ばして発音するが、付属語を伴う場合や下降型のアクセントの語は長音化しにくい[13]。「露地→ろーじ」「去年→きょーねん」のように2拍・3拍名詞が長音化することもあるが、1拍名詞の場合と違って特定の語に限られる[13]

その他の母音変化の例は以下のとおり[14]

イ→エ:しらみ→しらめ、にんじん→ねんじん

エ→イ:前垂れ→まいだれ、羽二重→はぶたい

ウ→オ:うさぎ→おさぎ、たぬき→たのき、室町→もろまち

子音

「さかい・さけ(接続助詞)→はかい・はけ」「しつこい→ひつこい」「読みません→読みまへん」「それから→ほれから」など[s]・[?]→[h]・[c]の変化が多く、若干ではあるが「人→しと」のように[c]→[?]の例もある[13]。[z]・[d]・[r]の混同([d]→[z]はほとんどない)は山城でも起こることがあり、特に南山城地方で「ただ今→たらいま」「めでたい→めれたい」のような[d]と[r]の混同が多い[13]。[z]・[d]・[r]の混同はかつて京都市内の老人・学童の間でも多く、舌が廻らぬ言葉遣いとして教育上問題視され、1942年(昭和17年)に「京都市児童を対象とせるヨミカタ方言訛音矯正資料」が作成されるほどであった[15]

その他の子音変化の例は以下のとおり[14]

[s]→[?]:鮭→しゃけ

[m]→[b]:蝉→せび

その他

「死による→しんにょる」「お宮はん→おんみゃはん」「年寄り→とっしょり」「日曜→にっちょー」など、イ段音・ウ段音にヤ行音が続く場合に、撥音や促音を伴ってヤ行音が拗音化することがある。イ段・ウ段音が鼻音(ナ行・マ行)の場合は撥音、それ以外のイ段・ウ段音の場合は促音が挿入されることが多い[16]
アクセント詳細は「京阪式アクセント」を参照

京言葉のアクセントは典型的な京阪式アクセントであり、京阪神でほぼ共通するが一部の表現で異なる(以下はその例[17])。京都のなかでも地域差や世代差があり、例えば「粘土」「金曜日」を京都旧市内では「ねんど」「きんよーび」と発音し、伏見区や南山城地方では「ねんど」「きんよーび」と発音する[14]。また京都市南部では「-ました」が大阪・神戸と同じ発音になる[14]

京都大阪神戸備考
-ました食べました食べました
(無声化で「食べました」となる人もいる)京都でも低起式の動詞を中心に大阪・神戸と同じ発音になることがある。
-はった食べはった食べはった
(伝統的な神戸弁では「はる」を用いない)
鏡かがみかがみ
かがみ
かがみかがみ神戸が最も古い発音を保っており、幕末以前は京都でも「かがみ」であった。
2000年代の若年層では地域を問わず「かがみ」または「かがみ」が多い。

文法

特に注記しないかぎり、昭和20-30年代の記録を中心に記述する。
動詞

動詞の活用には共通語と同じく五段活用上一段活用下一段活用カ行変格活用(カ変)・サ行変格活用(サ変)があるが、サ変の上二段・上一段化傾向が見られる[18]。基本となる活用形は以下のとおり[19]

未然連用終止連体仮定命令
五段[20](行く)いか-
いこ-[21]いき-いくいく(いきゃ)
(いったら)いけ
下一段(出る)で-で-でるでる(でりゃ)
(でたら)でー
上一段(着る)き-き-きるきる(きりゃ)
(きたら)きー
カ変(来る)き-
こ-き-くるくる(くりゃ)


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:110 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef