このほか、八瀬・大原(大原女も参照)・北白川・高雄・桂・大枝など[11]、郊外の農村に特有の方言もあった。
発音「近畿方言#音声」も参照
音韻体系は共通語とほとんど変わりないが、子音を弱く、母音を長く丁寧に発音する傾向があり、京都人が朗読すると同じ音節数でも東京人のほとんど2倍の時間を費やすという[12]。 連母音アイ・オイ・ウイの変化は、「わたい→わて(女性の一人称)」や「さかい→さけ(接続助詞)」など若干の語でアイ→エが見られるのみで[13]、「黒い→くれー」「悪い→わりー」などが起こる関東や丹後とは対照的である。なお「消える→けーる」「見える→めーる」などイエ→エーの変化もあるが[14]、逆行同化によるものである。 母音の長短意識が多少曖昧という特徴がある。「学校→がっこ」「山椒→さんしょ」「先生→せんせ」のように長母音を短く発音する傾向があり、特にオ段音で多い[13]。短音化は主に語尾で起こるが、「御幸町→ごこまち」のように語中で短音化する例もある[14]。1拍名詞は「蚊→かー」「野→のー」のように伸ばして発音するが、付属語を伴う場合や下降型のアクセントの語は長音化しにくい[13]。「露地→ろーじ」「去年→きょーねん」のように2拍・3拍名詞が長音化することもあるが、1拍名詞の場合と違って特定の語に限られる[13]。 その他の母音変化の例は以下のとおり[14]。 「さかい・さけ(接続助詞)→はかい・はけ」「しつこい→ひつこい」「読みません→読みまへん」「それから→ほれから」など[s]・[?]→[h]・[c]の変化が多く、若干ではあるが「人→しと」のように[c]→[?]の例もある[13]。[z]・[d]・[r]の混同([d]→[z]はほとんどない)は山城でも起こることがあり、特に南山城地方で「ただ今→たらいま」「めでたい→めれたい」のような[d]と[r]の混同が多い[13]。[z]・[d]・[r]の混同はかつて京都市内の老人・学童の間でも多く、舌が廻らぬ言葉遣いとして教育上問題視され、1942年(昭和17年)に「京都市児童を対象とせるヨミカタ方言訛音矯正資料」が作成されるほどであった[15]。 その他の子音変化の例は以下のとおり[14]。 「死による→しんにょる」「お宮はん→おんみゃはん」「年寄り→とっしょり」「日曜→にっちょー」など、イ段音・ウ段音にヤ行音が続く場合に、撥音や促音を伴ってヤ行音が拗音化することがある。イ段・ウ段音が鼻音(ナ行・マ行)の場合は撥音、それ以外のイ段・ウ段音の場合は促音が挿入されることが多い[16]。 京言葉のアクセントは典型的な京阪式アクセントであり、京阪神でほぼ共通するが一部の表現で異なる(以下はその例[17])。京都のなかでも地域差や世代差があり、例えば「粘土」「金曜日」を京都旧市内では「ねんど」「きんよーび」と発音し、伏見区や南山城地方では「ねんど」「きんよーび」と発音する[14]。また京都市南部では「-ました」が大阪・神戸と同じ発音になる[14]。 京都大阪神戸備考 特に注記しないかぎり、昭和20-30年代の記録を中心に記述する。 動詞の活用には共通語と同じく五段活用・上一段活用・下一段活用・カ行変格活用(カ変)・サ行変格活用(サ変)があるが、サ変の上二段・上一段化傾向が見られる[18]。基本となる活用形は以下のとおり[19]。 未然連用終止連体仮定命令
母音
イ→エ:しらみ→しらめ、にんじん→ねんじん
エ→イ:前垂れ→まいだれ、羽二重→はぶたい
ウ→オ:うさぎ→おさぎ、たぬき→たのき、室町→もろまち
子音
[s]→[?]:鮭→しゃけ
[m]→[b]:蝉→せび
その他
アクセント詳細は「京阪式アクセント」を参照
-ました食べました食べました
(無声化で「食べました」となる人もいる)京都でも低起式の動詞を中心に大阪・神戸と同じ発音になることがある。
-はった食べはった食べはった
(伝統的な神戸弁では「はる」を用いない)
鏡かがみかがみ
かがみ
かがみかがみ神戸が最も古い発音を保っており、幕末以前は京都でも「かがみ」であった。
2000年代の若年層では地域を問わず「かがみ」または「かがみ」が多い。
文法
動詞
五段[20](行く)いか-
いこ-[21]いき-いくいく(いきゃ)
(いったら)いけ
下一段(出る)で-で-でるでる(でりゃ)
(でたら)でー
上一段(着る)き-き-きるきる(きりゃ)
(きたら)きー
カ変(来る)き-
こ-き-くるくる(くりゃ)
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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