京言葉
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「えろー静かなやな(大層静かなんだね)」のように、形容動詞連体形「な」にさらに「や」を続けることがある[44]

助詞

格助詞「を」「が」と係助詞「は」がよく省略される[45]。「が」の省略は「を」ほど多くなく(特に主語が無生物の場合)、「が」の省略が起こる際には、主語の長音化や別の助詞「のん」が伴うことが多い[46]

例:本読んだり字ー書いたり[45]

例:火ー燃えてる[46]

例:赤いのん好きや[46]

例:字ー上手やけど絵ー下手や[45]


「しか」の用法が共通語よりも広く、「より以外は」という意味のほかにも、「よりも」という意味[46]や「の方が」という意味[45]でも使う。「しか」は「ほか」とも言う[46]

例:うちしか知ってへん(私しか知っていない)[46](共通語でも言う用法)

例:うちしかあんたの方がえらい(私よりあなたの方がえらい)[46](共通語では言わない用法)

例:あいつしか上手や(あいつの方が上手だ)[45](共通語では言わない用法)


原因・理由の接続助詞に「さかい」「よって」「し」があり、「さかい」は「はかい」「さけ」「はけ」と変化させることも多いが[45]、「はかい」「はけ」は「さけ」ほど多くなく、特に南山城などではあまり見られない[46]。「さかい/はかい/さけ/はけ」「よって」は後ろに「に」を付けて言うこともある[46]

例:いま行くさかい待っててや(今行くから待っていてね)[45]

例:じき行くよって待っててや(すぐ行くから待っていてね)[45]


確定逆接の接続助詞に「けど」を使うが、旧愛宕郡や南山城の一部では「けんど」と言う[46]。仮定逆接には「かて」を使うが、京都市とその周辺では「て」もかなり見られる(共通語のように「って」とは言わない)[46]。「かて」は「でさえ」「でも」を意味する係助詞でもある[45]

例:叱られたかて/叱られたて、かまへん(叱られても構わない)[46]

例:行かなんだて、えーやろ(行かなくたっていいだろう)[45]

例:言わんかて、分かってる(言わなくとも分かっている)[45]

例:なごーかてみじこーかて思いのままや(長くでも短くでも思いのままだ)[45]

例:あてかてできるえ(私でも出来るよ)[45]

例:いまからかておそない(今からでも遅くない)[45]


副助詞「なりと」を「なと」と略して共通語の「でも」の意味で使う[45]。並列助詞に「やら」を使うほか[46]、不定の副助詞「やら」を「や」と略すことが多い[45]。また、共通語の「か」に当たる不定の副助詞には「ぞ」を使う[46]

例:走りなとしたらえーのに(走りでもすればいいのに)[45]

例:水なと飲もかい(水でも飲もうかな)[45]

例:なんなと言いたいこと言うてー(何でも言いたいことを言っていろ)[45]

例:馬やら牛やらがおる(馬や牛がいる)[46]

例:ほんまや嘘や分からへん(本当やら嘘やら分からない)[45]

例:だれぞどこぞで言うてた(誰かがどこかで言っていた)[45]

例:なんぞあるやろ(何かあるだろう)[45]


疑問の終助詞には一般的に「か」を使い、ぞんざいな表現として「け」も使う(なお、口丹波では「け」はやや丁寧な表現とされる)[46]。南山城地方などでは目下に対する疑問表現に「や」(必ず「や」でアクセントが下がる)も使う[46]

告知の終助詞「ぜ」「ぞ」は「で」「ど」と言うことが多く、「ぞ/ど」よりも「ぜ/で」の方がやや丁寧とされるが、他の山城各地と比べて京都市内ではいずれも使用が少ない[46]。また他人の疑問や決定を反駁する終助詞として「がな」がある[45]。その後「やん(か)」も使われるようになったが、「?なんだよ、それでね」という意味で「やんか」を使う際に、京都と大阪で言い方に違いが生じている[16]

例:昨日、梅田に行ってんかー(昨日、梅田に行ったんだよ、それでね……)(大阪では「昨日、梅田に行ってんやんかー」になる)[16]


共通語の「よ」に当たる終助詞に「え」と「わ」を使う[46]。「わ」には「行くわ」のように「わ」で下がる場合と「行くわ」のように「わ」を高く発音する場合があり、前者は山城だけでなく丹波などでも広く見られるものの、後者は山城に限られ、より丁寧で柔らかい[46]

間投助詞としては「なー」を最もよく使い、やや丁寧な場面では「ねー」を使う[46]。京都市とその周辺の女性層では、相手の関心を強く引こうとする際に「なー」を「なーへー」と言う[46]。「なー」「ねー」は「なー、母ちゃん」のように自立語としても使う[46]

会話術
婉曲

依頼や辞退を表す時には、直接的な言い方は避け、婉曲的で非断定的な言い回しを好む。例えば、「○○を下さい」と頼む際に「○○おくれやさしまへんやろか」(○○を下さりはしませんでしょうか)のように否定疑問で表現したり、釣銭が足りないことを店員に伝える際に「足りません」などではなく「ちょっと足らんように思いますが」のように間接的に表現したりする[47]。辞退する時も「おおきに」「考えときまっさ」などと曖昧な表現をすることによって、勧めてきた相手を敬った表現をする。また、「主人に訊かなければ分からない」などと他人を主体化させ、丁重に断る方法も良く用いられる。一方で、褒め言葉を使ってイケズ(意地悪)をすることもあり、例えば「おうちえー着物きたはりますな、きれーどすな」(お宅いい着物を着ておられますね、綺麗ですね)と言われても、綺麗と褒めているのは着物のことであり、その人について言っているとは限らないので安易に喜んではいけないという[48]

京都の婉曲表現を語る上でよく挙げられるのが「京都で他人の家を訪問した際、その家の人にぶぶ漬け(茶漬けのこと)を勧められたら、それは暗に帰宅を促している」という風習であり、上方落語の演目「京の茶漬け」や北森鴻の小説『ぶぶ漬け伝説の謎』など、これを主題にした作品まで作られるほどである。詳しくは茶漬け#茶漬けにまつわる儀礼を参照。こうした直接的表現を嫌う風土による表現は、京言葉を解さない人からはコミュニケーションを取りにくいと思われている。
語彙

京言葉独特の表現・語彙に以下のようなものがある(近畿で共通するものも含む)。「駄々をこねる子」を「ダダコ」と表現するなど、別の品詞から名詞を作り出すパターンが多い。また、女房言葉に由来する、名詞(主に生活に関するもの)に敬称「お」や「さん」をつける表現がある。またオノマトペを多用し、リズム感を構成する一因となっている。
名詞

あめさん - 飴。女性語。「お」は付けない。
[49]

おあげさん - 油揚げ[49]

おいた - カマボコ[50][49]


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