依頼や辞退を表す時には、直接的な言い方は避け、婉曲的で非断定的な言い回しを好む。例えば、「○○を下さい」と頼む際に「○○おくれやさしまへんやろか」(○○を下さりはしませんでしょうか)のように否定疑問で表現したり、釣銭が足りないことを店員に伝える際に「足りません」などではなく「ちょっと足らんように思いますが」のように間接的に表現したりする[47]。辞退する時も「おおきに」「考えときまっさ」などと曖昧な表現をすることによって、勧めてきた相手を敬った表現をする。また、「主人に訊かなければ分からない」などと他人を主体化させ、丁重に断る方法も良く用いられる。一方で、褒め言葉を使ってイケズ(意地悪)をすることもあり、例えば「おうちえー着物きたはりますな、きれーどすな」(お宅いい着物を着ておられますね、綺麗ですね)と言われても、綺麗と褒めているのは着物のことであり、その人について言っているとは限らないので安易に喜んではいけないという[48]。
京都の婉曲表現を語る上でよく挙げられるのが「京都で他人の家を訪問した際、その家の人にぶぶ漬け(茶漬けのこと)を勧められたら、それは暗に帰宅を促している」という風習であり、上方落語の演目「京の茶漬け」や北森鴻の小説『ぶぶ漬け伝説の謎』など、これを主題にした作品まで作られるほどである。詳しくは茶漬け#茶漬けにまつわる儀礼を参照。こうした直接的表現を嫌う風土による表現は、京言葉を解さない人からはコミュニケーションを取りにくいと思われている。 京言葉独特の表現・語彙に以下のようなものがある(近畿で共通するものも含む)。「駄々をこねる子」を「ダダコ」と表現するなど、別の品詞から名詞を作り出すパターンが多い。また、女房言葉に由来する、名詞(主に生活に関するもの)に敬称「お」や「さん」をつける表現がある。またオノマトペを多用し、リズム感を構成する一因となっている。
語彙
名詞
あめさん - 飴。女性語。「お」は付けない。[49]
おあげさん - 油揚げ[49]
おいた - カマボコ。[50][49]