交響曲第6番_(チャイコフスキー)
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チャイコフスキーの又甥のゲオルギイ・カルツォーフの妻で歌手であり、作品47が献呈されているアレクサンドラ・V・パナーエワ=カルツォーワの回想録「P・I・チャイコフスキイの思い出」には、チャイコフスキーが本作の初演後、従姉妹のアンナ・ペトローヴナ・メルクリングを家まで送る道中、アンナ・ペトローヴナに対して「新作の交響曲が何を表現しているか分かったか」と尋ね、彼女が「あなたは自分の人生を描いたのではないか」と答えたところ「図星だよ」と言ってチャイコフスキーは喜んだと記している。チャイコフスキーはアンナ・ペトローヴナに対して「第1楽章は幼年時代と音楽への漠然とした欲求、第2楽章は青春時代と上流社会の楽しい生活、第3楽章は生活との闘いと名声の獲得、最終楽章は〈De profundis(深淵より)〉さ。人はこれで全てを終える。でも僕にとってはこれはまだ先のことだ。僕は身のうちに多くのエネルギー、多くの創造力を感じている。(中略)僕にはもっと良いものを創造できるのがわかる」と話したと述懐している[5]
作曲の経緯・初演博士ガウンを身に纏ったチャイコフスキー《1893年6月、ケンブリッジ大学にて》交響曲第6番が作曲されたテーブル(チャイコフスキーの家博物館

チャイコフスキーは1891年に着想を得た変ホ長調の交響曲(自身で『人生』というタイトルをつけていた)を途中まで書いたところで、出来ばえに満足出来ず破棄し、ピアノ協奏曲第3番に改作した(未完に終わる)。しかしこの「人生」というテーマは彼の中で引き継がれていたようで、既に名士となり多忙な生活の中、新しく交響曲を書き始める。

残されている資料によれば1893年2月17日(第3楽章)に作曲に着手した。作業は急ピッチで進められ、それから半年後の8月25日にはオーケレストレーションまで完成し、同年10月16日(グレゴリオ暦では10月28日)に作曲者自身の指揮によりサンクトペテルブルクで初演された。あまりに独創的な終楽章もあってか、初演では当惑する聴衆もいたものの、先述するようにこの曲へのチャイコフスキーの自信が揺らぐことはなかった。

しかし初演のわずか9日後、チャイコフスキーはコレラ及び肺水腫が原因で急死し、この曲は彼の最後の大作となった。詳細は「チャイコフスキーの死」を参照
日本語における副題

副題の日本語訳に関しては諸説がある。曰く、チャイコフスキーがスコアの表紙に書き込んだ副題はロシア語で「情熱的」「熱情」などを意味する "патетическая"(パテティーチェスカヤ)である故に「悲愴」は間違いである、というものであるが、チャイコフスキーはユルゲンソンへの手紙などでは一貫してフランス語で「悲愴」あるいは「悲壮」を意味する"Pathetique" (パテティーク)という副題を用いていた[6] ため、一概に誤りとは言えない。ベートーヴェン『悲愴』ソナタも、作曲者自身によって付けられた副題はフランス語の "Pathetique" である。もっとも、その両者とも語源はギリシャ語の "Pathos"(パトス)であり、 "Passion"(受難曲) も同ギリシャ語に由来するものなので、ニュアンスとしては関連性がある。

いずれにしても、命名した時にはチャイコフスキー本人はあくまでもこの曲のイメージのみで発想したもので、死ぬ気や遺言などとして作曲したつもりもまったくなかった、とする研究もある[7]
編成

編成表木管金管
Fl.3(3番はピッコロ持ち替え)Hr.4Timp.Vn.1●
Ob.2Trp.2他バスドラム,シンバル,タムタム(任意)Vn.2●
Cl.2Trb.3Va.
Fg.2Tub.1Vc.
他他Cb.

ファゴットパートの一部をバスクラリネットに置き換える演奏上の慣例

第1楽章の一部(160小節の後半、譜例と試聴用サウンドファイル参照)で、ファゴットパートの4つの音をファゴットではなく編成外のバスクラリネットに演奏させることがしばしば行われる[8][9][10]。バスクラリネットに置き換える理由としては、この部分に pppppp (ピアニッシシシシシモ)という極端な強弱記号が付されており、そのように小さな音で演奏するのはファゴットよりもバスクラリネットの方が適していること[8][9][10]、またこの部分が同小節前半までのクラリネットの旋律を受け継ぐ形となっており、同族楽器のバスクラリネットで受け継ぐ方がファゴットで受け継ぐよりも音色的に旋律のつながりが良いこと[9][10]が挙げられる。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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