交流電化
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またAT饋電用変電所での饋電母線の地絡検出において、計器用変圧器 (VT) に中性点接地形VT(EVT)を使用しており、VTの2次側の電圧上昇を検知することで地絡を検出する。電車線側の饋電回路には、特別高圧を使用しているため、車両故障・架線故障・飛来物・鳥害・碍子閃絡・樹木接触などでの故障では故障電流が大きいため、早期に故障を検知して電流を遮断する必要がある。通常の動力車の走行では反応せず、故障電流だけを的確に検出するため、変電所では、変電所から故障点までの距離により保護特性が定まる距離継電器、饋電電流の変化が一定値以上の場合に動作する交流ΔI形故障選択継電器、不足電圧を検知する不足電圧継電器、過電流を検知する過電流継電器により動作原理の異なる保護継電器を組み合わせて検知を行い饋電用遮断器を作動させて保護する。保護継電器の架線での保護範囲は、変電所から饋電区分所としており、距離継電器と交流ΔI形故障選択継電器による2つの保護継電器で行われる。また、アークによる閃絡故障では、アークが消滅すると閃絡故障が回復することが多いため、回復後に饋電用遮断器を開放から0.5秒後に自動で再投入させている。

電圧降下が架線の電圧許容変動範囲よりも大きい線区では、電圧降下対策が行われており、BT饋電方式では、コンデンサを負饋電線に直列に接続して、回路内のリアクタンスの約80 %を補償して電圧降下を抑える方法が取られており、その他にも、負饋電線回路のリアクタンスが小さくなることにより、BTセクションでのアークを抑える効果もある。AT饋電方式では、変圧器のタップサイリスタで高速切替を行い、1段で1200 V程度の電圧が補償される架線電圧補償装置を饋電区分所に設置して、負荷力率の改善を行い饋電回路の電圧降下を抑える静止形無効電力補償装置が設置されている。

電圧不均衡や電圧変動に対しては、できるだけ小さいことが望ましく、大きい電源容量から受電したり、三相二相変換変圧器を用いることで、それを小さくしているが、電源容量が負荷に対して相対的に小さい変電所では、パワーエレクトロニクス技術を使用した、静止型無効電力補償装置(SVC)や電力融通方式電圧変動補償装置(RPC)使用しており、SVCには、電車線と饋電線又は負饋電線との間と変圧器の饋電側に接続して負荷の無効電力を補償することで、電圧変動を半減できる他励式SVCとSVCの出力電圧の位相を系統電圧に変圧器を介して同期させた状態で、SVCの出力電圧と系統電圧を制御することで負荷の有効電力の制御を行い電圧変動対策を行う自励式SVCがある。

交流電化電路において架空電車線や饋電線の、碍子を介した地絡の場合は異常電圧の発生もあり好ましくない。それを防ぐためすべての碍子の大地に近いところにレールと同電位の「保護線」を接触させておき、碍子の閃絡事故を短絡事故に転換させ変電所の饋電用遮断器を開放する。保護線はBT饋電方式の場合、負饋電線が、AT饋電方式の場合はレールと同電位の保護線がその働きを担う。

饋電回路故障時の保護継電器の動作後には、故障点標点装置(ロケータ)を起動させて故障点を特定することで、故障の早期復旧を図っており、BT饋電方式では故障点までの線路リアクタンスが距離に対して直線状に比例するため、変電所から故障点までの線路リアクタンスを演算して、既知の線路リアクタンスと比較することで、故障点を特定する、リアクタンス検出方式故障点標点装置が、AT饋電方式では、故障点から両側のATの単巻変圧器の中性点のレールから吸い上がる吸上電流の値が故障点までの距離に対して反比例するため、両側のATの単巻変圧器の吸上電流の値を利用して、距離に対して直線的に比例する吸上電流比を算出して故障点を特定するAT吸上電流比方式故障点標点装置がそれぞれ採用されている。
沿革
初期の交流電化

1903年 ベルリン郊外で運行された三相交流の試験電車。縦に3本の架線を並べている点に注意。スペイン国鉄ヘルガル-サンタ・フェ線で使用された電気機関車No.3。屋根上のビューゲル先端の集電部は2つに分かれ、2本の架線に接する。2本の架線とレールから三相交流電源が供給される。ユングフラウ鉄道のパンタグラフ。三相交流のため、2本の架線が並んでいる

電気鉄道は、直流電源を用いる方式ではじまった。しかし市内電車や近距離鉄道には向いていたが、長距離鉄道には変電所の建設や送電のコスト、電圧降下などの問題があった。そのために交流電化を試みるようになる。19世紀末には低電圧の三相交流と誘導電動機を用いた方式がスイス登山鉄道でいずれも1898年開業のユングフラウ鉄道(650 V, 40 Hz、現在は1125 V, 50 Hz)、ゴルナーグラート鉄道(550 V, 40 Hz、現在は750 V 50 Hz)、シュタンスシュタート-エンゲルベルク鉄道(850 V, 33 Hz、現在は単相交流15 kV, 16.7 Hz)で採用されている。また、ドイツでは1892年よりジーメンス社がこの方式の試験を進めていた。その後、同社やAEGなどが参加した高速電気鉄道研究協会の実験路線(ベルリン郊外の王立プロイセン軍事鉄道線を使用)で1903年に電車と電気機関車がそれぞれ鉄道史上初となる200km/h突破 (210 km/h) を達成している(これは当時人類が搭乗可能な交通機関の最速記録でもあった)。

しかし、三相交流電化架線を複数設置しなくてはならず、また速度制御が難しい。このため、ハンガリーのガンツ社が開発した技術を採用したイタリア北部(3,000 V, 15 Hz、1902年 - 1917年もしくは3600 V, 16 2 3 {\displaystyle 16{\frac {2}{3}}} Hz、1912年 - 1976年[5] である程度広域的に使用された例を除くと、1906年に開通した瑞伊国境のシンプロントンネル[5](3000 V, 15 Hz、1930年に単相15000 V, 16 2 3 {\displaystyle 16{\frac {2}{3}}} Hzに変更)や1911年に電化されたスペイン国鉄ヘルガル-サンタ・フェ線(5,200 V 25 Hz、1966年に電気運転を廃止しディーゼル化)[5] など局地的なものに終わり、広く普及することはなかった。

一方、単相の交流で交流整流子電動機を直接駆動することも考えられた。この場合、周波数に比例して発生する電機子起電力により整流悪化が発生するため、25 (= 50 2 {\displaystyle {\frac {50}{2}}} ) もしくは 16 2 3 {\displaystyle 16{\frac {2}{3}}} (= 50 3 {\displaystyle {\frac {50}{3}}} ) Hzなど周波数の低い交流電気を使用する。欧州では1904年ジーメンスの手によりドイツ・バイエルン地方のムルナウ - オーベルアンメルガウで実施したのがはじまりである。欧州では当初は800 - 6000 V, 25もしくは26 Hz、続いて、5000 V, 16 2 3 {\displaystyle 16{\frac {2}{3}}} Hzを経て、15000 V, 16 2 3 {\displaystyle 16{\frac {2}{3}}} Hzに落ち着く。この規格は1912年ドイツ帝国プロイセンバイエルンバーデンで幹線鉄道の標準電化仕様として採用され[注釈 10]、現在でもドイツ、スイス、オーストリアスウェーデンノルウェーの幹線鉄道で多用されている。独自の送電網を整備する必要があることや、変圧器が重くなるのがデメリットである。同様にアメリカでは1905年ウェスティングハウスの手によりインディアナポリスインターアーバンで3300 V, 25 Hz電化を実施、その後、1907年にはニューヘブン鉄道で11000 V, 25 Hz電化が採用、他にもサウスショアー線(6600 V)、ペンシルバニア鉄道などでも採用された。しかし、以降は同時期に開発された直流1200 - 3000 V電化で直流整流子電動機を使う方式が主流となり、交流電化はそれほど広まらなかった。
商用周波数方式の実用化.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

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出典検索?: "交流電化" ? ニュース ・ 書籍 ・ スカラー ・ CiNii ・ J-STAGE ・ NDL ・ dlib.jp ・ ジャパンサーチ ・ TWL(2014年11月)


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