亜鉛(あえん、英: zinc、羅: zincum)は、原子番号30の金属元素。元素記号は Zn。亜鉛族元素の一つ。安定な結晶構造は、六方最密充填構造 (HCP) の金属。必須ミネラル(無機質)16種の一つ。 鉛製造工業の副産物として得られていた亜鉛の表面は平滑ではなく、櫛の歯 (Zinken) のような筋状になっていたので、Zinkと呼ばれるようになった[1]。 日本では真鍮を意味する鍮石という言葉は天平年間から記録があり、文禄年間には真鍮という名称に変化している。その当時すなわち16世紀終わり頃、亜鉛は中国名で倭鉛と呼ばれ、ポルトガルではツタンナガ (Tutanaga) といったが、これを日本ではトタン(吐丹)と呼んだ[2]。 亜鉛という言葉は1713年(正徳3年)に『和漢三才図会』に記録されたのが最初であるとされる[2]。 亜鉛は光沢を有し、反磁性を示す青味を帯びた銀白色の金属である[3]。融点は419.5 °C、沸点は907 °Cと金属としては比較的低い[4]。比重は鉄よりも小さく7.14[5]。常温では脆いが、約100 ?150 °Cの範囲のみで展性、延性に富むようになる[3][6]。210 °Cを超えると、再び脆性を示すようになる[7]。亜鉛は良好な電気伝導体である[3]。 単体金属の格子定数はa = 265.9 pm、c = 493.7 pm (25 °C) で、理想的な六方最密充填構造よりもやや c 軸方向に伸びている。c 軸方向の熱膨張率は a 軸方向の約3.5倍と異方性が強く現れ、線膨張率は a 軸方向(c 軸と垂直)は1.50×10?5 K?1、c 軸方向では5.30×10?5 K?1である[8]。亜鉛を曲げると双晶変化によるスズ鳴きが起こる[9]。 亜鉛を含む合金は多く、銅との合金である真鍮がよく知られている。その他の亜鉛と二元合金を形成する金属としては、アルミニウム、アンチモン、ビスマス、金、鉄、鉛、水銀、銀、スズ、マグネシウム、コバルト、ニッケル、テルル、ナトリウムが知られている[10]。亜鉛とジルコニウムは共に強磁性ではないが、その合金ZrZn2は35 K以下の温度で強磁性を示す[3]。
名称
性質
物理的性質