両院制(りょういんせい、英: Bicameral system)とは、二つの「議院」によって構成される議会がそれぞれ独立して活動する制度である。二院制(にいんせい)とも呼ばれる。対照的な制度に一院制がある。 両院制の「両」は、「bicameral」という言葉の翻訳であることから「対になっている二つ」という意味合いをもつ。一般に「両院制」と「二院制」は殆ど同義の用語として使われているが、以下のように異なる制度を指すものとして使い分けることもある。 「上院 (upper house)」「下院 (lower house)」という言葉は、アメリカの首都がフィラデルフィアにあった頃に議会が使用していた二階建ての公会堂(現在の独立記念館、当時の大きい邸宅と変わらないほどの小振りな建物)で、議員数の多い代議院 (House of Representatives) がその一階部分 (lower house) を、少ない元老院 (Senate) が二階部分 (upper house) を使用したことからこう呼ばれ始めたといわれる。 議会制度の発祥地であるイギリスをはじめ、欧米の多くの国では上院に相当する議院(貴族院、元老院など)を「第二院」、下院に相当する議院(庶民院、代議院など)を「第一院」としている。 日本では公式にこのような名称が使用されたことはないが、政党名として第二院クラブ(かつては国政に参議院議員のみを擁立していた)が存在する。 オランダにおいては正反対であり、上院を第一院、下院を第二院としている。 二度の審議を行うことで、下院の決定に過誤があった際に改めることが期待されている。すなわち、司法における三審制と同様、人間が過ちを犯しうることから慎重に手続を進めることを意図しているものである[1]。したがって、選挙方法および選挙時期を下院と異なるものにすることが望まれる[2]。例えば参議院の選挙制度は当初衆議院の中選挙区制との差別化を図り、全国区と地方区に分けた選挙制度をとっていた[3]。 「両院制」の意義は「多角的な民意の反映」というのが本来の趣旨である[3]。これは双方異なった方法で選出されて構成される議院が存在することによって、様々な角度からの意見が反映されていくことでより深い議論が出来るというものである[4]。加えて、下院のみでは代表され得ない国民の意思を国政に反映させ、国民の意思を問う回数を増やすという意義もあるとされる[4]。 しかしながら、「下院の決定に過誤があった際に改めること」も「多角的な民意の反映」も、その達成のために「両院制」というシステムを採用する必然はなく、その目的達成のために他に合理的な手法がいくらでも考えられる。むしろ「両院制」の目的は、日本国憲法の制定時の政府の見解にあるように、一院制では必ず院内の多数党が形成され、その多数党の横暴が懸念されるため[5]、両院制として多数党の形成および維持を難しくする(両院の選挙で勝たなければ、両院で多数党になれない)ことにあると言うべきである。 下院に相当する議院は基本的には、社会の多勢を占める中産階級の利害を代表している。政治が異なる利害の調節を行なう作業である以上、中産階級で代表されるものとは別の視点からの利害を何らかの形で反映するメカニズムが存在しなければならない。それは少数民族であったり、各地方の利害であったりする。社会が複数の民族から構成される場合や、異なる言語集団から構成される場合は特に重要となる。 現代においては、両院の力が対等であることは少ない[6]。立法に関しては下院に優越がある場合が多く、上院に法案を否決する権利が無い、あるいは制限されていることが多い[6]。行政に関しては、予算や条約の承認などで、どちらかの院にのみ決定権を与えている国が多い。両院の異なる選出メカニズムをふまえ、その民意を適切に反映させるために役割分担がなされるのである。 慎重を要する審議を長期化することによって国民の意思形成を促すことができるという意義もあるとされる[7]。 下院の解散時に上院が国会の機能を補完することなどが存在意義として挙げられる[8]。 日本国憲法第54条第2項は参議院の緊急集会について定めており、衆議院が解散されたときは参議院も同時に閉会となるが、内閣は国に緊急の必要があるときは参議院の緊急集会を求めることができるとしている。
定義と構成
二院制と両院制
両院制
「1つの議会」が、独立した2つの議院によって構成されているもの。例:日本、英国、米国など
二院制
完全に独立した2つの議会が存在しているもの。例:ドイツ、フランスなど
上院と下院
第一院と第二院
両院制の特徴
両院制の意義
多様な民意の反映と下院の過誤の修正
国民の意思形成の促進
緊急時の危機管理
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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