二重らせん
[Wikipedia|▼Menu]

6. 一回転あたりのらせん軸の長さは34オングストローム (A) 、らせん軸に沿った塩基対間の距離は3.4 A、らせんの直径は20 Aである。

7. の特徴は二重らせんは完全に規則正しいらせんを描いているわけではないことをあらわしている。塩基の積み重なりと糖ーリン酸骨格のねじれの関係上、完全に規則正しい二重らせんから鎖がずれ、らせんには幅が異なる2種類の溝が存在する。大きなほうを主溝、小さなほうを副溝という。多くのタンパク質は、主溝からアクセスすることによって特異的な塩基配列を認識する。
様々な二重らせん構造左から、A-DNA、B-DNA、Z-DNAの構造

DNAは異なる形状の二重らせん構造をとることが知られている。例えば、DNAの周囲に存在する水分子を減らすことによってプリンピリミジン塩基の位置が変化することにより立体構造が変わってくる。現在、A-、B-、C-、D-、E-、Z-の6つが見つかっているが、中でも重要なものはA-DNA、B-DNA、Z-DNAである。
A-DNA
右巻き、1回転あたり塩基数11、塩基対間距離2.6 A、らせんの直径23 A、湿度75%時にとる立体構造。
B-DNA
右巻き、1回転あたり塩基数10、塩基対間距離3.4 A、らせんの直径20 A、湿度92%時にとる立体構造。生体内では最も一般的な構造は、このB-DNA である[3]
Z-DNA
左巻き、1回転あたり塩基数12、塩基対間距離3.7 A、らせんの直径18 A、グアニンシトシンの繰り返し配列がとる立体構造。
二重らせんモデルの歴史的背景

ワトソンとクリックがDNAの二重らせん構造にたどりつく背景には、2つの重要な研究があった。

第一は、エルヴィン・シャルガフによる『DNAの塩基存在比の法則』である。彼が明らかにしたのは、DNA中に含まれるアデニンチミングアニンシトシンの量比がそれぞれ等しいという至極単純な法則である。しかし、ワトソンとクリックの仕事以前にはこの法則をうまく説明できるような着想は存在しなかった。

第二は、モーリス・ウィルキンスとロザリンド・フランクリンによる『X線結晶構造解析』である。X線結晶構造解析は、1912年のマックス・フォン・ラウエによるX線回折現象の発見以降主として低分子の物質の構造解析に使用されてきたが、やがて高分子の結晶化が可能となり生体分子の解析にも応用されるようになった。例えば、αヘリックスのようなタンパク質二次構造については早くに立体構造が判明していたが、三次構造の決定は1958年のジョン・ケンドリューらによるマッコウクジラミオグロビンを待たなければならなかった。二重らせんモデル構築の参考となった写真はフランクリンが撮影したものである。彼女自身は、その写真もとにして『DNAは2、3あるいは4本の鎖からなるらせん構造をとっているだろう』というレポートを残している。

当時のフランクリンとワトソン、クリックの研究環境と人間模様については数多くの出版物に描かれている。このうち、『二重らせん』(ジム・ワトソン著)はワトソンの視点から、『ロザリンド・フランクリンとDNA―ぬすまれた栄光』(アン・セイヤー著)はフランクリン側の視点から描かれている。フランクリンの研究の公表が遅れた理由のひとつとして、B型以外にも取りうる構造(A型)があることを発見したため、その両方を比較解析したうえで公表することを意図していたとされている。ワトソンとクリックが提案した二重らせん構造は、B型のモデルのみであった。

なお、ワトソンとクリックがX線結晶構造解析を行ったと誤解されることも多いが、彼ら自身は構造解析を行っていない。彼らは、当時入手可能であった多くのデータをすべて満足させるモデルを構築することによって歴史に名を刻むこととなったのである。
出典^ a b “『二重螺旋 完全版』訳者あとがき by 青木薫”. HONZ (2015年5月28日). 2023年10月2日閲覧。
^ Watson, J. D.; Crick, F. H. C. (1953). “Molecular Structure of Nucleic Acids: A Structure for Deoxyribose Nucleic Acid”. Nature 171 (4356): 737?738. doi:10.1038/171737a0. .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}PMID 13054692. 


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:19 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef