事業税
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請負業は第1種事業に分類されていることから、昭和27年地方財政委員会より、請負業の範囲は限定的に解釈するものだと通達が出ている。

「事業税の第一種事業として列挙されたものは、商工業等のいわゆる営業の種類に属するものであって、請負業も右に準じ限定的に解することが妥当であるから、犬の調教師に対してこれを請負業として課税することは適当でない。また諸芸師匠業として課税することにも疑があるから政令で列挙すべきであり政令で列挙しなければ課税することは困難であると解する。(昭和27年7月23日 地方財政委員会税875号)」。

また、神奈川県では以下の4項目に当てはまる場合には請負業として課税すると通達が出ているが、個人事業税の請負業への該当性について争われた訴訟において、神奈川県が定める請負業の基準は、請負と準委任を区分するものとして適切ではないとされ採用されなかった(東京高裁令和2年11月18日判決。のちに上告不受理で確定)。

個人事業税の請負業について - 神奈川県ホームページ。
営業の範囲に属するものである。

資本的経営を行っている。

仕事の計画及び遂行について独立性を有する。

危険負担を有する。

画家は非課税であるが業務内容によってはデザイン業と見なされるなど、裁量次第となっている部分もある[6]

全国知事会では、個人事業税を業種別に分けるのは不公平かつ徴税事務の負担になり、都道府県の裁量でグレーゾーンの判定が変ることから、原則5%にするべきという要望を出しているが、非課税だった個人事業主が反対するため政治的に困難である、という議論が東京都税制調査会でなされている[7][8]
法人事業税の税率

下記、法人事業税の税率表は標準税率。都道府県によって様々だが、ある基準を満たすと、より税率の高い超過税率に変わる都道府県が存在する。超過税率は都道府県によって異なるが、標準税率は全国同一。資本金1億円超の普通法人はこの税率表ではなく外形標準課税が適用される。

東京都の平成28年4月1日から令和元年9月30日までに開始する事業年度の場合、下記条件で変わる[9]。超過税率かどうか、軽減税率不適用法人かどうかで税率が変わる。

年所得額が2,500万円超 または 年収入金額が2億円超 → 超過税率

「資本金または出資金の額が1,000万円以上」かつ「事務所または事業所がある都道府県の数が3つ以上」 → 軽減税率不適用法人

平成28年4月1日から令和元年9月30日までに開始する事業年度の標準税率区分年400万円以下年400万円超?年800万円以下年800万円超
所得課税法人
(資本金1億円以下の普通法人、公益法人等)3.4%5.1%6.7%
所得課税法人
(特別法人:協同組合等、医療法人)3.4%4.6%4.6%
収入金額課税法人
(電気供給業、ガス供給業、保険業、貿易保険業)0.9%0.9%0.9%

令和元年10月1日以後に開始する事業年度の標準税率区分年400万円以下年400万円超?年800万円以下年800万円超
所得課税法人
(資本金1億円以下の普通法人、公益法人等)3.5%5.3%7.0%
所得課税法人
(特別法人:協同組合等、医療法人)3.5%4.9%4.9%
収入金額課税法人
(電気供給業、ガス供給業、保険業、貿易保険業)1.0%1.0%1.0%

都道府県間の分割

法人の事業所が2都道府県以上に存在する場合は、製造業の場合は課税対象額を従業員数に比例して各都道府県に分配した上で税率がかけられる。非製造業の場合、課税対象額の1/2は従業員数に比例して分配し、残りの1/2は事務所などの数に比例して分配した上で税率がかけられる。
課税標準の例外:事業の情況に応じた外形標準課税

一般の法人又は個人については、「事業の情況に応じ……資本金額、売上金額、家屋の床面積若しくは価格、土地の地積若しくは価格、従業員数等を課税標準とし、又は所得及び清算所得とこれらの課税標準とをあわせ用いることができる」こととされている(旧地方税法72条の19・地方税法72条の24の4)。 但し、このとき、通常の所得を課税標準とするときの租税負担と「著しく均衡を失することのないようにしなければならない」とされている(地方税法72条の22第9項)。

なお、事業の情況に応じない外形標準課税の導入に伴い、外形標準課税の対象となる法人に対してはこの例外は適用されないものとされた。
銀行税(俗称)

東京都が2000年4月に東京都における銀行業等に対する事業税の課税標準等の特例に関する条例で、大阪府が2000年6月に制定した、資金量5兆円以上の銀行業を営む法人に対する業務粗利益を課税標準とし3%の税率で課税するとする特例条例は、上記特例に基づくものである(報道等で俗に銀行税と呼ばれることがあるが、新たに法定外の税目を設けるものではないため、適当ではない)。但し大阪府は実際の課税には至っていない。

これに対して銀行側は、事業税は所得課税を常態とする応能課税であり上記特例はきわめて限定的に運用されるべきものであること・所得課税が適当でない「事業の情況」にないこと等を主張し、違憲・違法の課税であるとして条例の無効確認と税金の還付及び営業損害等の賠償を求め、東京都を提訴。当該裁判において東京高等裁判所において、事業税の応益性と「事業の情況」の存在を認めるものの、所得を課税標準にする場合に比して税負担が「著しく均衡を失」しており違法と判断する判決が出された[10]。これを契機として最高裁判所では和解交渉が行われ、税率を条例施行時に遡って0.9%に引き下げ、納付済みの事業税額との差額を還付し還付加算金を支払う条件で2003年10月8日に和解が成立した。

外形標準課税の対象となる法人は上記特例の対象から外れるところ、東京都・大阪府に本店を置く銀行業を営む法人の全てが1億円を超える資本金を持つことから、銀行業に対する外形標準課税を定めた条例は廃止ないし空文化される可能性が高い。

なお、銀行側は大阪府に対しても同様の訴訟を起こしていたが、2004年3月29日に大阪府議会で税率を東京都の和解内容に準じて0.9%に引き下げる条例が制定されたことなどから、同年5月18日、銀行側より訴訟の取下書が提出され終結した。
外形標準課税

もともと事業税は「所得」を基に税額が算定されていた。ところが、不況による税収の伸び悩みや地方財政の悪化から、平成15年度の税制改正により、一定の法人については、いわゆる外形標準課税が導入されることとなった。
メリット

課税サイドからみた外形標準課税のメリットは、赤字法人からも税収を上げることができるため、不況時にも一定の税収を見込むことができ都道府県財政が安定する点にある。実際に、黒字法人の割合が低水準(概ね30%強)で推移している一方で、地方税には応益税的な性質があるとされる。


納税者側からみたときのメリットとしては、税額に占める所得課税部分の割合が減少することから、黒字法人の場合には事業税の負担が従来より減少する。所得割の税率が引き下げられることから、所得金額が大きい企業にとっては、税負担が減少する(黒字の大企業にはプラス)。

デメリット

デメリットとしては、赤字法人の多い中小企業や、従業員数の多い鉄鋼業等の負担が重くなるとされる。ただし、日本国では中小法人への適用拡大は見送られており、現在は大企業のみの適用となっている。そのため赤字の大企業のみ負担が重くなる(赤字の大企業にはマイナス)。

税額の計算方法が複雑である。

なお、事業税の原型であった戦前の営業税国税)は、外形標準課税を採ったために、明治大正期に商工業者による反対運動がしばしば発生したために、営業純益に対する課税に改正された経緯があった。
外形標準課税の概要[11]

資本金1億円超の法人が対象

事業税及びその課税標準を3つに分割

付加価値割の課税標準:各事業年度の付加価値額

付加価値額 = 収益配分額 + 単年度損益 , 国外事業に帰属する付加価値額は控除される。

収益配分額 = 報酬給与額 + 純支払利子 + 純支払賃借料 , 報酬給与額が収益配分額の70%超の法人は、雇用安定控除を行う。

単年度損益 = 益金の額 - 損金の額


資本割の課税標準:各事業年度の資本等の金額

資本金等の金額 = 資本金(又は出資金)の金額 + (連結個別)資本積立金額

持株会社については、資本金等の金額から(資本金等の金額×子会社株式の帳簿価額/総資産)を控除する。

資本金等の金額が1,000億円超の法人については、課税標準を一定の方法で圧縮する。

課税標準の上限は、1兆円とする。

国外事業を行う法人については、国外における事業規模等を勘案して国内事業相当額のみに課税


所得割の課税標準:各事業年度の所得及び清算所得

平成28年4月1日から令和元年9月30日までに開始する事業年度[12]所得等の区分標準税率東京都制限税率
所得割(年400万円以下)0.3%0.395%0.6%
所得割(年400万円超?800万円)0.5%0.635%1.0%
所得割(年800万円超)0.7%0.88%1.4%
付加価値割1.2%1.26%2.4%
資本割0.5%0.525%1.0%

令和元年10月1日以後に開始する事業年度[12]所得等の区分標準税率東京都制限税率
所得割(年400万円以下)0.4%0.495%0.8%
所得割(年400万円超?800万円)0.7%0.835%1.4%
所得割(年800万円超)1.0%1.18%2.0%
付加価値割1.2%1.26%2.4%
資本割0.5%0.525%1.0%

各都道府県の税率は標準税率?制限税率の間の税率になっている。
申告・納税
個人事業税

個人事業主(副業があるサラリーマンを含む)は、翌年3月15日までに事業の所得などを都道府県税事務所へ申告をする。但し、所得税確定申告や住民税の申告をしたときは個人事業税の申告をする必要はない(各申告書の「事業税に関する事項」欄に必要事項を記入)。8月頃送付される納付書をもって、年2回の納期(第1期納期限 8月31日、第2期納期限11月30日)までに納付する。また、年の中途で事業を廃止した場合は、基本的に廃止の日から1月以内(死亡の場合は4月以内)に個人事業税の申告がある。[13][14]

個人事業税が生じる事業を開始した際には、税務署の開業届出書とは別に、事業開始等申告書を都道府県に提出する必要がある[15]
法人事業税

事業年度終了の翌日から2ヶ月以内に都道府県に確定申告書を提出し納税を行う。関連して法人事業税に対して税額が決まる地方法人特別税(2019年9月まで)または特別法人事業税(2019年10月より)も支払う必要がある。
その他

税務署の調査により、所得税法人税の修正申告等がなされた場合は、事業税の課税対象となった所得が変更されるため、法人の場合は1月以内に修正申告が必要となり、個人・法人ともに事業税を追加して納めることになる。

個人事業税は、対象事業が限定列挙してあるため、どの事業に該当するのか、事業といえるかどうか等判断が難しい場合がある。(例えば請負と雇用の区別、不動産貸付業等)

脚注[脚注の使い方]^ a b 5 税額の算出 <税金の種類><個人事業税> 。


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