事実婚
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もっとも、上記の認定の要件を満たす場合であっても、原則として当該内縁関係が反倫理的な内縁関係である場合、すなわち、民法第734条(近親婚の制限)、第735条(直系姻族間の婚姻禁止)又は第736条(養親子関係者間の婚姻禁止)の規定のいずれかに違反することとなるような内縁関係にある者については、これを事実婚関係にある者とは認定しないものとする。

また、重婚的内縁関係については、婚姻の成立が届出により法律上の効力を生ずることとされていることからして、届出による婚姻関係を優先すべきことは当然であり、従って、届出による婚姻関係がその実体を全く失ったものとなっているときに限り、内縁関係にある者を事実婚関係にある者として認定するものとする。
民間企業の対応

一部の企業では提供するサービスにおいて、同性婚や事実婚のカップルに対して法的な婚姻関係と同等の扱いを行っている[22]

ドコモauソフトバンクでは家族割引サービスにおいて、自治体が発行する証明書があれば、同性カップルや事実婚カップルもサービスの対象としている[23][24][25]
事実婚における問題点

事実婚は、法的には婚姻に当たらないため、様々な問題も存在する[26][27][28][29][30][31][32]
法的な問題点

まず、家族法上の観点では、子どもがいる場合はどちらかしか親権を持てない(共同親権が持てない)[26][27][30][33]、子を認知したとしても戸籍には子の立場として婚外子(非嫡出子)と記載される[27]、自分が死んだ際に相手に相続権がない(遺贈するための遺言を残す必要がある)[26][27][34]、しかも、法律婚における配偶者への遺産分割や遺贈の場合は税額の軽減があるが、事実婚の場合、特に相続財産が大きい場合には相続税の面で大きな経済的デメリットがある[32][35][36]、などの問題点がある。また、離婚の際の財産分与や慰謝料等の支払いで、法律婚ではかからない贈与税が発生する場合がある[32]。夫婦の一方が認知症などで判断能力が衰えた場合などに、成年後見を開始しようとしても、成年後見開始の申し立てをすることができない(そのような事態になる前に任意後見契約を結ぶ必要がある)[32]。また、特別養子縁組もできない[37]。夫婦間の契約取消権もない[38]
日常生活上の問題点

日常生活上の不都合としては、「配偶者」との家族関係を証明しにくい。そのため、家族の手術署名ができない場合や、入院家族の病状説明を断られたり[28][39]、事故時などの保険金の請求は法律上の親族に限られ事実婚では難しく[32]生命保険の受取人や住宅ローン連帯保証人になりにくい[26][32][注 1]、法律婚では取得できる配偶者の戸籍抄本などを取り寄せることはできない[32]、などの問題がある。また、夫婦の一方が海外赴任等をする際に、事実婚では配偶者ビザや永住権が認められないことが多い[32][41]。介護等のための福祉施設への夫婦としての入居を断られることもある[42]

これらの問題は自治体ごとのパートナーシップ証明書があっても対応が分かれている[22]
経済・コスト上の問題点

法律婚の場合と比較して、上記の相続時等の不利益以外にもさまざまな経済的な不利益がある。具体的には、確定申告配偶者控除が受けられない[26][30][32]医療費控除の夫婦合算ができない[30][32]不妊助成が受けられない[28][30][43]などが挙げられる。

仮に夫婦間問題が起こった場合も法律的には結婚していないので結婚していれば可能な損害賠償が認められない場合がある[27]

多くの企業では社員の家族手当において、同性婚や事実婚を対象外としている[44]

かつてはクレジットカードマイレージ携帯電話契約等の家族会員・家族割、海外旅行保険の家族セットが対象外であることが多かったが[30][32]、社会的な関心の高まりにより、サービスの対象となることも増えている[22]
回避策として考えられる方策
旧姓通称使用

これらの問題を回避する方策として、事実婚ではなく結婚後旧姓通称使用することも考えられるが、その場合も様々な問題点がある(「夫婦別姓#旧姓通称使用」も参照。)。
ペーパー離再婚

さらに別の方策として、普段は婚姻状態をとるものの旧姓を通称として用い、必要に応じて離婚し旧姓に戻り、旧姓での証明書を得るなどの手続きを行った後再び婚姻する夫婦もみられる。このような目的で離婚・再婚を行うことをペーパー離再婚とよぶ[45]。逆に、普段は事実婚状態で、子供の出生時などにのみ婚姻状態をとる夫婦もみられる[46]。なお、これらの場合再婚相手が同じ人物であるため、民法第733条が定める女性の100日間の再婚禁止期間待婚期間)は適用されない。ペーパー離再婚における離婚期間は事実婚の状況となる。ただ、この場合、離婚期間中に得た証明書等を再婚中に用いることには法律的な問題が考えられる。
議論されている施策

これらの問題のため、氏を変更しなくても法律婚をすることのできる選択的夫婦別姓制度を求める議論があるほか、事実婚に対するより厚い法的保護の必要性についての議論がある[26]。「夫婦別姓」、「#事実婚の法的保護に関する議論」、および「旧姓#旧姓の通称使用」も参照
事実婚の法的保護に関する議論

届出を出すことのできないやむを得ない事情がある内縁の場合とは異なり、当事者間の主体的・意図的な選択によって婚姻届を出さない事実婚の法的保護のあり方、特に準婚的保護を認めるべきか否かについては学説の間に争いがある[47]。(ただし、事実婚に限らない内縁夫婦に対する一般的な法的保護に関しては、「内縁#内縁の効果」を参照。)

典型的には以下のようなライフスタイル論と婚姻保護論の対立が挙げられる[48][49]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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