事務次官
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ただし、法務事務次官は検察官とは別の官であり、法務事務次官在任中は、検察官ではない。この点、法務省の局長課長の多くが検察官の身分のままの充て職であることとは状況が異なる。検察官の経歴を有する者以外の者が法務事務次官になる場合もあり得るが、その者が一級の検事となる資格を有しないものである場合は、検察庁法の規定により、検事総長・次長検事・検事長となる道そのものが閉ざされている(検察庁法第15条第1項、第19条)。そのような制度的事情から、法務省・検察庁の幹部人事調整の必要性にかんがみ、一級の検事となる資格を有しないものが法務事務次官に就任するケースは、1952年(昭和27年)8月1日の行政機構改革により、法務府が法務省と改称され、法務事務次官職が設けられて以来、皆無である。

一方で、事務次官経験者が東京高等検察庁検事長・大阪高等検察庁検事長といった主要都市に置かれる高等検察庁の検事長ポストに昇格する例が多々あり、これをもって事務次官の地位を主要都市以外に置かれる高等検察庁の検事長よりも実質的に上位にあるとする考え方がある[注 10]。しかし、法務省は上記のように「一般の行政権」と「検察権」という異質な行政権をまとめて担っており、検察官の地位と法務事務次官の地位を一元的に体系づけることには無理があると思われる[注 11]
外務省における事務次官

外務省では、事務次官経験者がその後大国または国連等の重要な国際機関に派遣される特命全権大使を務める慣例があり、特に在アメリカ合衆国大使の多くは次官経験者が務めてきた。しかし、2001年頃に発覚した数々の外務省の不祥事を受けた改革において、次官経験者の自動的な大使任用慣行は一旦改められた。その後、政府は大使の任用は「適材適所の観点に立って」判断するとしてきたが[17]、2012年には11年ぶりに佐々江賢一郎が次官経験後に駐米大使に就任した[18]
技官(技術系行政官)の事務次官

各府省においては事務官優位の人事慣行のもと、事務官の就任するポストと技官の就任するポストとは明確に区別されており、技官が事務次官に到達する例は少ない。しかし、科学技術庁建設省の後身官庁である文部科学省国土交通省では、技官が事務次官を務めることがある。

北海道開発庁、科学技術庁では主に技官が事務次官に就任しており、建設省においては事務官と土木系技官とが交互に事務次官に就任する慣例が存在していた(いわゆるたすきがけ人事)。中央省庁再編後の文部科学省では文部省出身の事務官と科学技術庁出身の技官が交互に就任しており、国土交通省では建設省出身の事務官と建設省出身の土木系技官と運輸省出身の事務官とが順番に就任している。環境省では環境庁出身の事務官と厚生省出身の技官と財務省からの出向者とが概ねたすき掛け人事で就任している。中央省庁再編が行われた2001年1月から2022年6月現在までに、技官の事務次官経験者は文部科学省5名(結城章夫坂田東一森口泰孝土屋定之戸谷一夫)、国土交通省7名(青山俊樹佐藤信秋谷口博昭佐藤直良徳山日出男森昌文山田邦博)、環境省2名(谷津龍太郎関荘一郎)となっている。
事務次官等の一覧

※各府省の事務次官のほか、警察庁長官、内閣府の外局たる庁の長官、デジタル監、復興庁事務次官も含めて記載。

府省等
官職氏名就任年月日出身大学等採用官庁
採用年次前職
内閣府
内閣府事務次官田和宏2021年9月1日東京大学経済学部経済企画庁
1984年(昭和59年)内閣府審議官
警察庁
警察庁長官露木康浩2022年8月30日京都大学法学部警察庁
1986年(昭和61年)警察庁次長
金融庁
金融庁長官栗田照久2023年7月4日京都大学法学部大蔵省
1987年(昭和62年)金融庁総合政策局長
消費者庁
消費者庁長官新井ゆたか2022年7月1日東京大学法学部農林水産省
1987年(昭和62年)農林水産審議官
こども家庭庁
こども家庭庁長官渡辺由美子2023年4月1日東京大学文学部厚生労働省
1988年 (昭和63年)内閣官房こども家庭庁設置準備室長
デジタル庁
デジタル監浅沼尚2022年4月26日慶應義塾大学理工学部民間デジタル庁 Chief Design Officer
復興庁
復興庁事務次官角田隆2023年7月4日東京大学法学部大蔵省
1988年(昭和63年)復興庁統括官
総務省
総務事務次官内藤尚志2023年7月7日東京大学法学部自治省
1984年(昭和59年)総務審議官
法務省
法務事務次官川原隆司2023年1月10日慶應義塾大学法学部検事任官
1989年(平成元年)法務省刑事局長
外務省
外務事務次官岡野正敬2023年8月10日東京大学法学部外務省
1987年(昭和62年)内閣官房副長官補
財務省
財務事務次官茶谷栄治2022年6月24日東京大学法学部大蔵省
1986年(昭和61年)財務省主計局長
文部科学省
文部科学事務次官藤原章夫2023年8月8日東京大学法学部文部省
1986年(昭和61年)文部科学省初等中等教育局長
厚生労働省
厚生労働事務次官大島一博2022年6月28日東京大学法学部厚生省
1987年(昭和62年)政策統括官(総合政策担当)
農林水産省
農林水産事務次官横山紳2022年6月28日東京大学法学部農林水産省
1986年(昭和61年)農林水産省大臣官房長
経済産業省
経済産業事務次官飯田祐二2023年7月4日東京大学経済学部通商産業省
1988年(昭和63年)経済産業省経済産業政策局長
国土交通省
国土交通事務次官和田信貴2023年7月4日東京大学法学部運輸省
1987年(昭和62年)国土交通審議官
環境省
環境事務次官和田篤也2022年7月1日北海道大学大学院工学研究科環境庁
1988年(昭和63年)環境省総合環境政策統括官
防衛省
防衛事務次官増田和夫2023年7月14日慶應義塾大学法学部防衛庁
1987年(昭和62年)防衛省防衛政策局長

歴代の事務次官等

事務次官等の一覧 - 各府省庁の歴代の事務次官の一覧

演じた俳優
テレビドラマ


大地真央(特別出演) - 〈架空人物〉藤川真沙子・総務事務次官(『リッチマン、プアウーマン』第1 - 2・9話、2012年7月9日 - 9月17日、フジテレビ系)

佐藤浩市 - 風越信吾・通商産業事務次官(佐橋滋がモデル)(『官僚たちの夏』2009年7月5日 - 9月20日、TBS系)

脚注[脚注の使い方]
注釈^ 内閣府事務次官[1]
復興庁事務次官[2]
総務事務次官[3]
法務事務次官[4]


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