事務弁護士は、州裁判所の刑事事件・民事事件ともに完全な弁論権を有する。また、簡易裁判所(スコットランドの最下級刑事裁判所)でも弁論権がある。簡易裁判所は現在、治安判事裁判所 (Justice of the Peace Courts) に置き換えられつつあるが、事務弁護士はそこでも完全な弁論権を有する。法廷では、事務弁護士はスーツ、ネクタイと黒い法服を着る。 事務弁護士はアイルランド・ロー・ソサエティー (Law Society of Ireland) に属し、その監督を受ける。同ロー・ソサエティーは1852年の勅許状により正式に設立された。現在の役割を立法的に整備したのは1954年から2002年にかけての数次の事務弁護士法である。 アイルランドは1921年に独立したが、法制度は変化した面よりもイングランドの制度が存続した面が大きい。法律職は法廷弁護士(アイルランド語でabhcoidi)と事務弁護士(アイルランド語でaturnaethe)の分業制が残っている。ただし、その役割分担はややあいまいになっている。1971年裁判所法の第17節により、事務弁護士はすべての裁判所での弁論権を与えられた。それでも、上位の裁判所での弁論を行う事務弁護士は比較的少ない。 弁護士法制は州によって異なり、弁護士の資格取得は州単位で行われる。ただし、州どうしの承認により、一つの州で登録された弁護士は全国的に活動することができる。法廷弁護士と事務弁護士の区別は名目化している州もあるが、少なくとも実務レベルで両者が分かれている(実務家が他方の仕事を行う資格はあっても業務を一方に特化している)州もある。すべての事務弁護士は「法廷弁護士兼事務弁護士」の資格を有しており、法廷弁護士として活動することもできるが、多くが別途法廷弁護士に委任し、自分自身は法廷に出頭しない。 しかし、ニューサウスウェールズ州とクイーンズランド州では、法廷弁護士会は強い独立性を保っており、そこへの加入には特別な研修が要求される。両州では、事務弁護士の上位裁判所での弁論権は理論上は制限がないものの、実際に行われることは少ない。ビクトリア州も、独立した法廷弁護士団が存在するが、事務弁護士はすべての裁判所で完全な弁論権を有する。 香港では分業制が残っており、事務弁護士は香港ロー・ソサエティーの規律を受けるのに対し、法廷弁護士は香港弁護士会の規律を受ける。香港で事務弁護士になろうとする者は、法学の学位(LL.B.またはJD、あるいはその他の同等の学位)を取得し、1年間のPCLLプログラムを修了する必要がある。その上で、2年間、法律事務所と契約して研修生として働かなければならない。事務弁護士は下位裁判所での弁論権があるが、香港高等裁判所 (Hong Kong High Court) と香港最終上訴裁判所 (Hong Kong Court of Final Appeal) では弁論権がない(弁論権は法廷弁護士に限られる)。ただ、この伝統は将来変わる可能性がある。事務弁護士に上位裁判所での弁論権を認める立法作業が進行中で、首席判事の下に作業部会が設けられている。香港首席判事は、事務弁護士が上位裁判所での弁論権を有する「ソリシター・アドヴォケイト」の資格を得ることができる仕組みを設けることに同意している。 カナダのケベック州以外の州では、法律職は一元化されており、すべての法律専門職が法廷弁護士団 (bar) に登録されるとともに、事務弁護士の資格も持っている。いずれか一方の仕事に特化する弁護士が多いが、二つの領域をまたいで仕事をする弁護士も多い。
アイルランド
オーストラリア
香港
カナダ
脚注[脚注の使い方]^ “ ⇒SRA - Academic Stage” (英語). Solicitors Regulation Authority. 2009年1月4日閲覧。
^ “SRA - Conversion Course
^ “SRA - Training contract information
^ “Public Access
関連項目
弁護士
アドボカタス
アドボケイト
法廷弁護士
上級事務弁護士
勅選弁護士
外部リンク
⇒The Law Society of England and Wales Directory Of Solicitors
⇒The Irish Law Society Directory Of Solicitors
⇒Law Society of Scotland's Directory Of Solicitors