予算
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完全性の原則(総計予算主義の原則)完全性の原則(総計予算主義の原則)とは、すべての収入と支出を漏れなくそのまま総額で計上することを求める原則をいう[17][18]。予算を通じた財政のコントロールのためには、すべての収入と支出が隠されることなく予算に編入されている必要があるからである[18]。日本では財政法第14条に規定されている[15][18]。企業など民間の経済主体では収入を取得するのに必要な経費を収入から控除する純計主義も認められるが、政府を経済主体とする場合には議会の決定通りにコントロールされているという合法性が重視さるため収入と支出の差額のみを計上しない総計主義が用いられる[18]

統一性の原則(単一性の原則)統一性の原則(単一性の原則)とは、収入と支出は単一の予算として計上しなければならず、予算は複数あってはならないとする原則をいう[17][19]。予算が複数並立すると相互の関係が複雑化し統制機能が果たせなくなったり、効率的な資金利用が困難になり管理機能を果たせなくなるからである[17]。統一性の原則は1787年にイギリスの統合国庫基金法で実現された予算原則である[19]。統一性の原則は特定の収入を特定の支出に結び付けて充当することを禁止するノンアフェクタシオンの原則の基礎となっている[17][19]。この統一性の原則を貫くことは現代の財政運営では事実上不可能となっており特別会計の制度が設けられている[20]

明確性の原則(明瞭性の原則)明確性の原則(明瞭性の原則)とは、予算の内容は収入の源泉・支出の目的・責任の所在などが国民にも明瞭に理解されうるような形式でなくてはならず、予算内容について目的別・機関別などに合理的・体系的に明確化され、かつ概観は容易な数量的表現で示さなければならないとする原則をいう[19][21]

排他性の原則排他性の原則とは、予算には歳入及び歳出以外の事項を記載してはならないとする原則をいう[17]

厳密性の原則厳密性の原則とは、予算の編成にあたって、予算に計上される予定収入と予定支出の見積もりは可能な限り正確でなければならないという原則をいう[17][22]。意図的に収入を過少に見込んだり、支出を過大に見込んだりすると、行政府に財政操作を行う余地が生じ、議会による財政統制が有効に機能しなくなるためである[22]。しかし、実際には正確な見積もりには限界があるため、収入を控えめに支出を多めに見積もる慎重主義が採用されており、一般に予算規模の3%ほどの歳計剰余を生じるように見積もられるのが一般的である。

事前性の原則事前性の原則とは、予算は当該会計年度が開始するまでに編成を終え、議会の承認を得ておかなければならないという原則をいう[23][24]。事前性の原則を厳格に適用すると、会計年度の開始までに予算の議会承認が得られなかった場合には、行政活動は停止せざるを得なくなり予算空白を生じる[24]。予算空白に対しては、前年度予算をそのまま新年度にも施行する施行予算という方法もあるが、議会の予算審議権を著しく制限することとなる[24]。予算空白に対するもう1つの方法として、短期間にわたる暫定予算を編成して対応する方法がある[24]。日本の場合、大日本帝国憲法下では憲法第71条で前年度施行予算の制度を採用していたが、日本国憲法下での予算制度は暫定予算の制度を採用している[25]

限定性の原則限定性の原則とは、予算に計上された経費について、年度間での融通、支出目的間での融通、支出額の超過を禁じる原則をいう[23]。それぞれ会計年度独立の原則、流用禁止の原則、超過支出禁止の原則と表現される[23]。なお、会計年度独立の原則は、それぞれの会計年度の支出はその会計年度の収入で賄わなければならないとする原則であり、予算は会計年度ごとに作成して議会の承認を得なければならないという単年度原則とは意味が異なるが、単年度原則は会計年度独立の原則の前提となっている[26]

公開性の原則公開性の原則とは、予算に関する情報は議会に対してのみならず国民に対しても公開されるべきことを求める原則をいう[23]。予算の数値の公開は一般には1781年にフランス蔵相のネッケルが「国王への財政報告書」を公開して始まったとされている(ただし、イギリスでは名誉革命以後、予算数値の公開は行われていた)[27]。さらに公開性の原則は、議会での予算審議のためだけでなく、国民全体への公開が必要と考えられるようになり、この意味での公開性の原則が確立するのは1834年にイギリス議会に新聞記者席が設置されてからであるとされている[27]

現代的予算原則

現代の財政運営では、より行政府に裁量と責任を与え、予算手続も多元化すべきであるという考えから、ハロルド・スミスなど現代的な予算原則を提唱する者が現れ、これらの予算原則は現代的予算原則と呼ばれている[16]

現代的予算原則は企業会計原則の公会計への適用を目指すものだが、財政には社会統合という統治を被支配者が行うという民主主義原理が基本にあり市場社会はこれを否定するわけにはいかないため、効率性の要請と財政民主主義のバランスをとる必要があると考えられている[16]
予算循環

予算は会計年度ごとに作成されるが、1つの予算が運営される過程には通常3年度以上の年月を辿るとされ予算循環と呼ばれている[28]。予算循環には、立案過程、決定過程、執行過程、決算過程の4つの過程がある[28]。このうち予算の立案過程と決定過程はまとめて編成過程とも呼ばれる[28]

議院内閣制の国々では内閣が予算を立案して議会に提出する。アメリカは大統領制の国であり予算の作成も議会に権限があるが、1921年に大統領のもとに予算局が設置され、その予算書をもとに議会が歳出予算法を決定している[29]。いずれの国でも実際の予算の立案は行政府が行っている[29]
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予算の編成

事業別予算制度行政目的の効果的な達成の観点から、事業目的に従い管理する。

ゼロベース予算(ZBB(Zero-Base Budgeting))全ての計画を、会計年度ごとに新規事業とみなしてゼロから査定する方式。

増分主義承認された歳出項目に関して、「前年度比○%増の範囲」という方式で予算を組むこと。

シーリング方式(
概算要求基準)財政規模抑制の必要性から採用され、予算全体としての規模を一定の基準におさめる方式。

計画事業予算制度(PPBS(Planning-Programming-Budgeting System))アメリカで費用便益分析の手法を導入し、政策に対して、効果を同一の基準で複数の代替的な政策の効果を比較測定し、それに基づき予算の削減・増額を決定する方式。

サンセット(時限)方式全ての予算項目を例外なく時限措置とし、必要性が認められた支出だけ継続される方式。

裁量予算制度(行政需要予算制度)

航空/陸上運送量や隣国の軍事力等、客観的・統計的基準によって各行政部局の担当する行政サービス需要の前年対比伸長率を算定し、それを元に各行政部局への予算配分枠を決定し、部局予算枠内で内部留保と各部局の裁量権を許容する制度を言う。

実際問題として各部局への配分予算枠は歳出化経費を割り込む事はできないので、歳出化経費予算と新規事業予算を分け、基準年度歳出化経費と行政需要伸長率に基いて当該年度の歳出化経費枠ガイドラインを定め、行政需要が縮小して歳出化経費がガイドラインを超過している部局については、超過額に応じた法定率での人員削減や耐用年数延長を行い削減した上で超過を認め、残額を新規事業予算として基準年度新規事業費と行政需要伸長率に応じて各部局に配分する事になる。

長所

予算配分が財務部局の裁量ではなく、客観的・統計基準によってなされるため、既得権益や政治圧力の影響が弱まり、必要な部局に予算を重点配分できる。


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