乳癌
乳癌のX線画像(左上隅の矢印)
概要
診療科腫瘍学
分類および外部参照情報
ICD-10C50
乳癌(にゅうがん、英: Breast cancer、独:Brustkrebs、羅:Carcinoma mamae、略称:BC)とは、乳腺内の乳管および乳腺小葉の上皮由来の悪性腫瘍である。診療科目では「婦人科」や「乳腺外来」の範疇に入る。
40歳代後半から60歳代後半に多い[1]。患者の大半は女性である。トランス女性も併せてホルモン治療や性別適合手術をしている場合など、女性と同様に乳癌の発症率が一般男性に比べて50倍にのぼる[2]。一般男性の場合は、女性の約1/100の頻度で発生する。
乳房の腫瘤(しこり)として発見されることが最も多い。
症状
女性
乳房のしこり、隆起(新たにできたもの)。痛みはないことが多いが、時に圧痛を伴うことがある。
乳房の陥凹(新たにできた「えくぼ」)。
乳汁分泌、血性乳汁。膿汁滲出。
脇の下のリンパ節を触れる。
などの症状がみられる。
男性
男性の胸のしこりに関しては、「乳癌は男性には発生しない」と誤解する人が多いことから、女性に比べて発見・受診・治療開始が遅れる傾向がある。
男性では女性に比べ乳腺が表皮や胸壁に近接しているために、乳腺外への浸潤をきたしやすい。
男性の場合、乳癌の罹患時に同時に胸が異常発達(女性化乳房)の併発症状が見られることもある。
日本乳癌学会で2015年に新たに発症が登録された全(男女併せ)乳癌患者約8万7000人のうち、男性患者は560人であった[3]。英国で乳癌に罹患した男性の患者の発生は、250人/年と報告されている。
女性乳癌と比べて症状や治療に関する情報が少ない、患者本人が乳癌を想定しないことが多い、女性の様にキャンペーン(ピンクリボンキャンペーン=乳癌啓蒙・乳癌検診の受診推進)を張っての乳癌検診や相談などの機会がほとんどないなどの理由から、NPO法人キャンサーネットジャパンが2018年から男性患者の交流会を開いている[3]。 乳癌の罹患率は様々な要因の影響を受ける。乳癌を発症しやすい遺伝的要因は複数知られている。また人種によっては乳癌リスクの高いグループが存在し、アジア系に比べてヨーロッパ系とアフリカ系は乳癌リスクが高い。 その他の危険因子としては以下のようなものが考えられている。
危険因子
妊娠・出産歴がない。出産回数が少ない[4]。
第一子出産の後、母乳を与えない。なお、関連がないとする報告もあり[4]。
初経年齢(月経が始まった年齢)が低い[4]。
閉経年齢が高い[4]。
ホルモン療法(エストロゲン製剤、ピルなど)を受けている。なお、関連がないとする報告もあり[4]。
飲酒[5]
喫煙[6](喫煙については、日本人を対象とした研究では、喫煙女性の乳癌リスクは、非喫煙者に比べて1.9倍となる[6]。)
「乳ガンと喫煙の因果関係」も参照
高脂肪の食事
20歳時の体重が低いほど乳癌になりやすい。閉経後の女性では、成人後の体重の増加が多いほど乳癌になりやすい[7]。
シフト勤務による不規則な生活(IARC(国際癌研究機関)は、「サーカディアン・リズムを崩すシフト勤務」をグループ2A(ヒトに対する発癌性がおそらくあるもの)と2010年に報告している。主に前立腺癌、乳癌のリスクを高める可能性があるとしている[8]。)
ホジキンリンパ腫治療のためのマントル照射の既往
女性化乳房(男性の場合)
EBウイルス感染(インド[9]・中国[10][11]・北アフリカ[12][13]・南ヨーロッパ[14][15][16] にて、EBウイルスと乳癌との関連が指摘されていた。