九州旅客鉄道
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2016年9月中間期の売上高に占める「非鉄道」部門の割合は51%と過半を超えており、民営化以降こうした事業の多角化が経営面での安定に寄与したこともあって、『旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律』(平成27年法律第36号[15])が2015年6月10日に公布、2016年4月1日に施行され、JR旅客会社では東日本旅客鉄道(JR東日本)・西日本旅客鉄道(JR西日本)・東海旅客鉄道(JR東海)に次いで4番目、本州以外に鉄道路線を有する、経営が厳しいと見られているいわゆる「三島会社」では初の上場および完全民営化を果たした[16][注釈 5]。なお、完全民営化前に経営支援策として設定されていた経営安定基金(3877億円、元本の利用はできない。利益配当のみ経常利益に含まれる)については、九州新幹線の施設使用料(年102億円)の一括前払い(計2205億円)および借入金の償還などに充てられている[19]

1987年のJR九州発足後は、福岡市博多区博多駅前に福岡本社(登記上本店)、北九州市門司区門司港駅隣の旧国鉄九州総局ビルに北九州本社を構えていたが、2001年に福岡本社に統合し、北九州市小倉北区西小倉駅近隣(小倉駅からも至近)に北部九州地域本社を設置している[20]
経営環境

鉄道事業においては、博多駅・熊本駅鹿児島中央駅の各都市間の輸送を主としている九州新幹線と、博多駅を中心に九州の各主要都市間を結ぶ在来線特急列車などの中長距離輸送が主な収益源となっているが、九州では主たる都市間を結ぶ高速道路の整備が早期から進んでおり、JR九州の列車に対して料金面で優位性のある高速バスが九州の各地で競合している[21]。さらに福岡市と北九州市の大都市同士を結ぶ博多駅 - 小倉駅間では国鉄分割民営化により、山陽新幹線西日本旅客鉄道(JR西日本)の所有となったことで、JR九州の所有する鹿児島本線の同区間を走る特急列車(「きらめき」「ソニック」など[22])と、時間的な優位性のあるJR西日本の山陽新幹線が競争関係になった。宮崎県と福岡県の移動では所要時間が短い航空機を使う人も多く[23]、九州内では競合交通機関に対して時間面、料金面、利便性の面などで圧倒的な優位性を発揮できる区間は限られているのが現状である。九州新幹線は山陽新幹線と直通運転を行い、九州の各都市と山陽地方関西とを結んでいるが、ここでも高速バスや航空機と競合関係にある。

近距離輸送の面では、管内には福岡市・北九州市(北九州・福岡大都市圏)をはじめ、九州各県の県庁所在地の近郊など比較的輸送量の多い線区も存在するが、首都圏関西圏などのように莫大な収益をもたらすものではなく、経営の一助になるには至っていない。むしろ、管内には輸送密度が低いローカル線も多く抱え、沿線の過疎化などの社会問題も相まって年々利用が減少しており、経営の負担になっている。

このように厳しい経営環境から、発足当初から積極的に関連事業に乗り出し、飲食業のほか、スーパー銭湯や果てはライバルである自家用車を売る自動車販売業ユーノス)にまで手を伸ばしたこともあった[24]。自動車販売のように不採算のため撤退した分野も多いが、不動産など成功した分野も多く2016年中間期には前述のように「非鉄道」部門の売り上げが半分以上を占めるようになってきた。

このような経営環境にあり、ネット予約を用いた割引切符の拡充や増発などで主力である中長距離輸送のサービス向上を図る一方[21]現業部門のコスト縮減・合理化の一環として以下の施策により現業部門の人員削減を進めているほか、2020年代に入るとコロナ禍による鉄道事業の大幅な減収への対策として、不要な設備の撤去や普通・快速列車のロングシート化などによる保有車両数の削減を打ち出している[25]
ワンマン運転の拡充
普通列車では、1988年の香椎線三角線を皮切りに、車掌を乗務させないワンマン運転を九州各地で拡大させた。普通列車のワンマン運転は2023年3月時点で、山陽本線下関駅 - 門司駅間、鹿児島本線の折尾駅 - 鳥栖駅間、日豊本線重岡駅 - 延岡駅間を除く全ての区間で行われている。2004年以降は、2両以下の編成のD&S列車もワンマン運転となっている(車内改札は客室乗務員が担当する)。特急列車においても、「ゆふいんの森」「あそぼーい!」「36ぷらす3」を除くD&S列車と、「にちりん」「ひゅうが」の一部と「きりしま」(いずれも787系電車4両編成を使用する列車)[26] でワンマン運転を実施している。
駅の無人化等
JR九州発足以降一貫して駅の無人化を進めており、2015年には、同年春以降に同社発足以来最大規模となる100駅前後を無人化する計画が明らかになった。このうち香椎線ではANSWERと呼ばれる駅遠隔案内システムを導入した「Smart Support Station」として、香椎駅長者原駅を除く線内の14駅が無人化された[27]。同システムはこの他に2021年3月3日時点で筑豊本線 若松駅 - 新入駅折尾駅を除く11駅)[28]、大分地区の豊肥本線と日豊本線の一部の駅、指宿枕崎線郡元駅 - 喜入駅にも導入されている。新玉名駅を皮切りに新幹線駅では全国で初めてホームへの駅員配置を廃止した。JR九州が管理する新幹線駅では2021年3月3日時点で新鳥栖駅熊本駅鹿児島中央駅を除く駅の新幹線ホームが駅員無配置となっている。今後はJR九州列車予約サービスによるインターネットを用いた割引切符の販売強化などによるみどりの窓口の削減[29]を予定しているという。

その他、線路のメンテナンスにロボットを導入することなども検討中であるとしている[30]

これらの施策の結果、発足初年度の営業損益は288億円の赤字となったが、九州新幹線が部分開業した2004年度には、営業損益が黒字に転換した。2011年3月12日に全線開業した九州新幹線の営業収益は2017年3月時点でおよそ501億円となり、JR九州の鉄道事業全体の収益(同年1464億円)の3分の1以上を占めるに至るなど、事業の大きな柱となっている[10]。これを軸として、D&S列車と称する観光列車などで引き続き地域の活性化や鉄道事業の収益拡大を図りつつ、不動産などの沿線開発や事業の多角化を進め、鉄道事業と関連事業の相乗効果をもって利益を拡大する事業戦略を推進している[31]。2016年度から3カ年の中期経営計画では「総合的な街づくり企業グループを目指す」としている[32]

2016年の株式公開においては、投資家の間でも訪日観光客の強い伸びが安定した企業成長につながるといった見方があるとされている[33]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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