台湾の論争が覚めやらぬまま九二共識肯定派の連戦国民党主席が2005年4月29日、胡錦涛共産党総書記との国共トップ会談を行い、両党の合意事項として初めて九二共識の文言が明記された（ただし一中各表は盛り込まれなかった）。民進党政権下の大陸委員会は、九二共識は存在しないとの公式見解を発表したが[2]、国民党は当時の双方のやりとりの中に合意が存在したことがうかがえる資料が存在するなどと主張して九二共識を党の政治綱領に盛り込んだ[3]。
さらに、2008年総統選を経て政権を奪回した国民党の馬英九総統が九二共識を基礎に中台関係を促進すると方針を決定した。しかし後任の蔡英文は九二共識の拒否を明確に打ち出している[4]。 台湾側の公式見解はあくまで九二共識と一中各表は同じというものであり、九二共識を基礎するとした馬英九総統も中国が一中各表を承認しなければ会談の席に着かないと明言していた[5]。 一方、中国側は九二共識とは一中原則（一つの中国）であるとの立場であり、一中各表を公式に承認したことは一度もない。2010年8月11日、中国側の海峡両岸関係協会の李亜飛・副会長が台北での講演で、改めて九二共識は「一つの中国」原則の共通認識であるとの立場を表明したのに対し、台湾の総統府報道官は九二共識は一中各表と等しいと即座に反論している[6]。 2012年総統選に出馬した民進党主席・蔡英文は、九二共識の存在を認めないとする従来の党見解を継承し、これに代わる「台湾共識」の国内法制化を目指すと表明した[7]。馬英九は「台湾共識の中身が明らかでない」「九二共識を基礎としてきた協議は進められなくなり、両岸関係は再び不安定になる」などと批判している。蔡は2016年総統選の選挙戦で九二共識は唯一の選択肢ではないと主張[8]、当選を果たしている。 2011年9月、台湾の対中国窓口機関海峡交流基金会は、中国側の海峡両岸関係協会から送られてきた1992年11月16日付書簡の現物を公表した。同書簡によれば「それぞれが『一つの中国』の原則を堅持することを口頭で表明する」ことで一致しているが、「『一つの中国』の意味は各自で異なることを認める」との台湾側の留保に対して「『一つの中国』の政治的意味には触れない」と記述しているという[9]。 大陸委員会の2011年9月実施の世論調査によると、「九二共識」の「一つ中国は中華民国を意味する」という馬政権の公式見解について賛同49.4％、不賛同34.7％、「九二共識、一中各表」を両岸関係協議の基礎とすることについて賛同48.4％、不賛同32.9％、「九二共識」は国民党と共産党のコンセンサスであるとの見方に賛同25.1％、不賛同51.7％、「不統（統一しない）、不独（独立しない）、不武（武力行使しない）」の原則を支持74.8％、不支持16.6％という結果が出ている[10]。
論争状況
台湾世論の反応
脚注^ “辜振甫元海基会理事長、回想録で『九二共識は存在しない』”
^ “台湾政府の「９２年のコンセンサス」問題に関する立場の説明”. 行政院大陸委員会. (2007年11月2日). ⇒オリジナルの2012年9月11日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/1DPx
^ ⇒中国国民党政治綱領
^ “「92共識」拒否、蔡総統が呼び掛け”. 威志企管顧問股?有限公司. (2019年1月7日). https://www.ys-consulting.com.tw/news/81326.html 2020年5月24日閲覧。
^ ⇒http://www.kuomintangnews.org/client/jpn/NewsArtical.php?REFDOCID=00as9wvdsxarx4bf&TYPIDJump=00air17gdql55u7h
^ 台湾国際放送2010年8月12日
^ “「台湾コンセンサス」は台湾人による開かれた決定”. フォーカス台湾. (2011年9月19日). https://web.archive.org/web/20160314033735/http://japan.cna.com.tw/news/aall/201109190003.aspx
^ ⇒“対中政策で激論＝総統候補ＴＶ討論会?台湾”. AFPBB News (フランス通信社). (2015年12月27日). ⇒http://www.afpbb.com/articles/-/3071583 2016年1月17日閲覧。
^ . 毎日新聞. (2011年10月2日). ⇒http://mainichi.jp/select/world/news/20111002k0000e030013000c.html
^ ⇒行政院大陸委員会2011年09月25日発表の世論調査結果
関連項目
台湾共識
一つの中国・二つの中国
台湾問題
海峡交流基金会
海峡両岸関係協会