乗法
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例えば、 2 × 3 = 6 {\displaystyle 2\times 3=6}  (2かける3は6、2かける3いこーる6、にさんがろく、等と読む) 3 × 4 = 12 {\displaystyle 3\times 4=12} 2 × 3 × 5 = 6 × 5 = 30 {\displaystyle 2\times 3\times 5=6\times 5=30} 2 × 2 × 2 × 2 × 2 = 32 {\displaystyle 2\times 2\times 2\times 2\times 2=32}

この記号は Unicode で U+00D7 × '"`UNIQ--templatestyles-00000014-QINU`"'multiplication sign (HTML: × ×) でエンコードされている。乗法には他の数学的表記(英語版)もある。

乗法はドット記号によっても表される。通常位置は真ん中であるが、ピリオドとすることもある。
5 ⋅ 2 or 5 . 2 {\displaystyle 5\cdot 2\quad {\text{or}}\quad 5\,.\,2} ミドルドットの記法は、Unicode では U+22C5 ⋅ dot operator としてエンコードされていて、日本やアメリカイギリスでは標準的であり、ピリオドが小数点として用いられるその他の国々でも標準的である。ドット演算子の文字が利用可能でない時は、中黒 (・) が用いられる。小数点としてコンマを用いるフランス等の国々では、ピリオドもミドルドットも乗法に用いられる[要出典]。

代数学において、変数を含む乗法はしばしば並置として書かれる(例えば、x 掛ける y の意味で xy や、5 掛ける x の意味で 5x など)。この表記はかっこで囲まれた量に対して用いることもできる(例えば、5 掛ける 2 の意味で、5(2) あるいは (5)(2) など)。乗法の記号を省略することは、その部分の変数が他の変数の名前と一致してしまうときや、かっこの前の変数名が関数名と混同されるとき、あるいは演算の優先順位の正しい決定において、曖昧さを引き起こすことがある。


行列の乗法[疑問点ノート]においては、クロス記号とドット記号の間には明確な違いがある。クロス記号は一般に2つのベクトルクロス積を表し、その演算結果はベクトルであるが、ドット記号は、2つのベクトルのドット積を表し、演算結果はスカラーである。

コンピュータープログラミングにおいては、(5*2 のように)アスタリスクを用いて書くのが最も一般的である。これは歴史的事情によるもので、多くのコンピュータは(ASCIIEBCDIC のように)文字集合が小さく制限されていて(? や × のような)乗法記号を持っておらず、しかしアスタリスクはすべてのキーボードに存在した。この使用法の起源はFORTRANプログラミング言語である。

(有限あるいは無限)数列の積は、ギリシャ文字パイの大文字Πを用いて書かれる。詳細は総乗を参照。
性質

n と m が自然数であるとき、n を m 個加えたものと m を n 個加えたものは同じ数である。すなわち

交換法則: n × m = m × n

が成り立つ。また、回帰的に複数回の乗法を行ったものは積をとる順序によらない。すなわち

結合法則: (n × m) × l = n × (m × l)

が成り立つ。3 つの数の積はn × m × l := (n × m) × l = n × (m × l)

とする(4 つ以上の数の積も同様である)。ただし無限個の数の積についてはこの限りではない(詳細は総乗の項を参照されたい)。

積と和の間には次の法則が成り立つ:

分配法則: n × (m + l) = n × m + n × l

この性質は、乗法の一般化において重要な手がかりとなる。
乗法の一般化
分数

掛け算は割り算を統合する。すなわち、「q で割る」という除法の計算を「q の逆数 1/q を掛ける」という操作とみなす。x × (p / q) := (x × p) ÷ q. p q × r s := p × r q × s {\displaystyle {\frac {p}{q}}\times {\frac {r}{s}}:={\frac {p\times r}{q\times s}}}

この定義は、割合の計算を考えることにより意味づけすることができる。
多項式

分配法則が成り立つものとして多項式同士の積が定義できる。
アーベル群

自然数や整数における上記の積の定義を再考すれば、加えられる対象である m は自然数や整数に限らずともよいことがわかる。実際、x として有理数や実数など和が定義できるものを考えれば、x を繰り返し加えることとして自然数を掛けることができる。また整数を掛けるためには、数 x は加法的逆元(マイナスの数)が定義できるものであれば何でも良い。すなわち x をあるアーベル群の元とするとき、n が整数であれば n x = { x + x + ⋯ + x ⏞ n   t i m e s n > 0 0 n = 0 ( − x ) + ( − x ) + ⋯ + ( − x ) ⏟ 。 n 。   t i m e s n < 0 {\displaystyle nx={\begin{cases}\overbrace {x+x+\cdots +x} ^{n{\rm {\ times}}}&n>0\\0&n=0\\\underbrace {(-x)+(-x)+\cdots +(-x)} _{|n|{\rm {\ times}}}&n<0\end{cases}}}

として n を掛ける操作を定義できる。このことを「整数全体の集合はアーベル群に自然に作用する」と言い表す。
乗算アルゴリズム
アバカス詳細は「アバカス」および「そろばん」を参照

紀元前2700年から紀元前2300年にかけてのシュメールアバカスが使われ、楔形文字で記された粘土板の乗算表が発見されている。紀元前2世紀には算盤が中国に伝えられた。算盤には乗法を素早く計算する技法が発達していた。

日本の記録では『日本風土記』(1570年代)に「そおはん」という呼称で出てくるのが初出である。珠算における乗法では、古くは頭乗法、尾乗法、中乗法などの方法が使われ、現在の標準的な方法は新頭乗法と両落としとなっている。
エジプト数学詳細は「w:Ancient Egyptian multiplication」を参照
日本の算術詳細は「算木」および「w:Rod calculus」を参照「九章算術」、「九九」、「算道」、「天元術」、および「和算」も参照
対数詳細は「対数」および「ネイピアの骨」を参照

ジョン・ネイピアは、科学で必要な計算を簡単にするべく計算技術として対数の概念を導入し、対数表(英語版)(1598年)を発表した。古くから A B = e log ⁡ A + log ⁡ B {\displaystyle AB=\mathrm {e} ^{\log {}A+\log {}B}} という等式を利用する乗算の方法が知られており、対数表によって積の計算を和の計算に置き換えて近似値を求めることが出来るようになった。対数の導入によって、ヨハネス・ケプラーの天体軌道計算などの科学計算が可能となり、科学の急激な発展をもたらした。エドマンド・ガンターが対数尺(1620年)を、ウィリアム・オートレッドが2つの対数尺を組み合わせた計算尺1632年)を発明し、電卓が普及する1980年代まで使用された。
機械式計算機詳細は「機械式計算機」、「チャールズ・バベッジ」、「階差機関」、「解析機関」、および「エイダ・ラブレス」を参照


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