久保田万太郎
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谷崎潤一郎春琴抄」、泉鏡花「歌行燈」などの小説の劇化も多く行った。谷崎潤一郎原作、久保田万太郎脚本の芝居『鵙屋春琴』舞台写真。花柳章太郎の鵙屋春琴、小堀誠の温井佐助。1935年(昭和10年)

翌年に妻が睡眠薬を飲んで死ぬという事件に見舞われる。1936年(昭和11年)に鉄道省・東京日日新聞主催「東西日本国立公園早廻り競争」に参加して北海道青森をまわる。1940年(昭和15年)に秋田石坂洋次郎にあう。1937年(昭和12年)、岸田国士岩田豊雄らと劇団文学座[8] を結成。以後新派、新劇文学座の演出を数多く手がける。明治座有楽座、国民新劇場で「ゆく年」、「釣堀にて」、「蛍」、「雨空」などを上演。他にも里見クと親交を結び、脚色演出を行う。1942年(昭和17年)に日本文学普及会より菊池寛賞を受領。4月から内閣情報局の斡旋にて満州国に滞在。日本文学報国会劇文学部幹事長となり、日比谷公会堂における日本文学報国会の発会式に劇文学部会長として宣誓を朗読。翌年に『日本演劇』『演劇界』を発行する日本演劇社社長となり、上海に赴く。『東京新聞』に長篇小説「樹蔭」を発表。

1945年(昭和20年)5月の空襲で被災し、家財・蔵書のほとんどすべてを失った。
戦後

1946年(昭和21年)、安住敦らの要望により俳句誌『春燈』を創刊し主宰。1947年(昭和22年)帝国芸術院(その後日本芸術院)会員、のち第二部(文学)部長、芸術祭執行委員。慶應義塾評議員となり、國學院大學講師、読売新聞社文化賞選定委員に就任。翌年、親友であった里見ク三男結婚の媒酌をし、9月に帝国芸術院会員として宮中に招かれ、昭和天皇と御陪食。1949年(昭和24年)毎日新聞演劇賞選定委員、日本放送協会理事、郵政審議会専門委員、文化勲章選定委員会委員、文化財保護専門審議会委員に就任。以来、日本全国各地を旅して紀行を執筆する。

1951年(昭和26年)NHK放送文化賞を受章。4月、日本演劇協会会長。国際演劇協会(I・T・I)の第4回世界大会出席のためオスロへ赴く。翌年、日本文芸家協会名誉会員。8月ユネスコ国内委員、10月、功労年金選定委員会委員に就任。1954年(昭和29年)に共立女子大学の講師。1956年(昭和31年)中央更生保護審査会委員に就任し、毎週一回法務省へ通う。11月に日本文芸家協会の文学代表者として中華人民共和国に赴く。翌年には日本演劇代表として再び中華人民共和国を訪問している。1957年(昭和32年)に文化勲章受章、同時に文化功労者。前年発表の『三の酉』により読売文学賞受賞。その後、死去まで三越で出版記念会を行ったり、佐渡桑名箱根伊豆などで静養した。

1963年(昭和38年)5月6日夕方、新宿区市谷加賀町梅原龍三郎邸にて設けられた宴席で赤貝にぎり寿司を勧められた。弟子たちが声を揃えるのは美食家であった久保田は日頃より噛みにくい赤貝は口にしなかった点である。気を遣い断らずに赤貝を口に入れた久保田は誤嚥性による窒息となり、母校でもある慶應義塾大学病院に午後6時過ぎに搬送されたが、既に心肺停止状態で午後6時25分に死亡と診断された。喉につまらせた際、失礼にならないよう席を離れてトイレに向かう途中で倒れたという[9]

死没に際して従三位に叙せられ、勲一等瑞宝章を贈られた[10]築地本願寺で葬儀を行い、法名は顕功院殿緑窓傘雨大居士。墓所は曹洞宗喜福寺」(東京都文京区本郷5丁目29-2、東大赤門前)
句作

神田川祭の中をながれけり

竹馬やいろはにほへとちりぢりに

さびしさは木をつむあそびつもる雪

あきかぜのふきぬけゆくや人の中

水中花咲かせしまひし淋しさよ

時計屋の時計春の夜どれがほんと

あきくさをごつたにつかね供へけり

叱られて目をつぶる猫春隣

湯豆腐やいのちのはてのうすあかり

などの句が知られる。江戸情緒の残る下町の暮らしを、平明な言葉によって余情ふかく詠む句風で、芥川龍之介はその句風を「東京の生んだ<嘆かひ>の句」と評し、万太郎自身は自分の句を「家常生活に根ざした叙情的な即興詩」とみなしていた[11][12]

万太郎は終生、自身の俳句を余技として位置づけていたが、俳壇の中心的な位置からはずれながらもその俳句に対する世評は高く[13]、歳時記への収録も非常に多い作家である[12]山本健吉は、「彼は俳句を余技と言っているが、それは彼の俳句が年季のはいった立派なものであるということと矛盾するものではない。ただ専門俳人との間に創作態度の違いが存在するのであって、彼にとっての俳句は全面的な人間表現の場所でもないし、絶体絶命の一筋の道ではないということだ。言わば彼の不断着の文学であり、チェホフの『手帖』やルナールの『日記』に類する役割を彼においては果たしているのだ」と評している[14]。また小澤實は、万太郎は一段劣るものという意味で「余技」と言っていたのではなく、「余技」であることこそが俳句の本道であると考えていたのではないか、と書いている[15]

上掲の句のうち、「竹馬や」の句は特に代表的な句として知られているものである。安住敦によれば、この句は明治時代の広瀬武夫作の軍歌「今なるぞ節」の「いろはにほへとちりぢりに打ち破らむは今なるぞ」という歌詞の本歌取りで作られたものというが、現在では軍歌のほうは忘れられている[16]。「あきくさを」の句は「友田恭助七回忌」の前書きがある追悼句で、万太郎の慶弔句の中でも代表的なもの。万太郎は挨拶句の名手であり、前述の山本健吉は虚子と双璧をなすと書いている[17]。「湯豆腐や」の句は夫人を失ったのちの最晩年の句である[12]

句碑

桑名「獺に燈をぬすまれて明易き」

浅草神社「竹馬やいろはにほへとちりぢりに」

駒形どぜうの庭「みこしまつまのどぜう汁すすりけり」

慶應義塾大学構内「しぐるるや大講堂の赤煉瓦」

人物・逸話.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

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