主語
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Chemehuevi 語タイプオジブワ語ブラックフット語ポーランド語ムンダリ語など
Longgu 語タイプイボ語グルジア語コサ語ソマリ語ハウサ語フィジー語など
日本語タイプグーグ・イミディル語官話中国語)、朝鮮語ハワイ語ビルマ語マラヤーラム語モンゴル語ハルハ方言、レズギ語など



例文一覧^ 英語の例。代名詞主語を省略した (b) のような文は通常許容されない。

a.I was singing.
b.* Was singing.

^ イタリア語の例。動詞によって主語が一人称単数(私)であることが明示されている。

Nonvolev-omangiare
否定欲する.半過去-主語食べる.不定詞
私は食べたくなかった (cf. I didn't want to eat.)

^ ユト・アステカ語族 Chemehuevi 語の例。(b) では文頭の語に後接する接語で主語が一人称単数(私)であることが示されている。

a.Annwaha-kt?mpipunikai-v?
アン二つ-目的語石見る-過去
アンは石を二つ見た
b.puusi-a=nmaga-v?
猫-目的語=主語与える.過去
私は猫を(誰かに)あげた

^ 大洋州諸語 Longgu 語の例。動詞によって主語が一人称単数(私)であることが明示されている。

a.mwela-genievusiangi
子供-女ほとんど泣く
少女はほとんど泣いている
b.ezudu
座る
彼/彼女は座っている

^ 日本語の例。(b) のような主語の省略が普通である。動詞には主語の人称や数を表す標識が無い。

a.私は歌っていました。
b.歌っていました。


主語優勢・主題優勢

主語(動作主)が語順や名詞の形などで(主格として)明示される言語を主語優勢言語といい、一方、主題が明示される言語を主題優勢言語という。日本語も主題優勢言語であるとされる。

日本語では、主題も動作主主語もそれぞれ「は」「が」で明示され、またどちらも文の必須要素ではないが、「は」のつく名詞は統語論上特別な地位にある[5]
各言語における主語

主語は言語ごとに性質が大きく異なる。
日本語

いわゆる学校文法的には、次のように説明される。「が」「は」などの助詞を伴った文節が主語である。主語がない場合や、主語が省略されることも多い。

しかし、専門的には日本語の主語について統一した見解は今のところなく、日本語学・言語学においては日本語の主語をめぐる議論が今も続いている[6]

原因のひとつには、言語学で(国際的に)言う「主語」は、典型的には「主語優勢言語」である英語のそれのような(上述の #文法的主語 の節で説明している)、動詞との呼応などといった性質を持つものであり、英文で天気について言及する時の「It」のような、形式的にであっても文を成り立たせるために必要なものを指す、ということが挙げられる。それに対し、一般に日本語を母語とする話者が前述のように意識する「主語」は、言語学では「主題」とされるものであることがあり、日本語は「主題優勢言語」とされているように、言語学的な「主語」とのズレがあることがある(さらに、たとえば主題優勢言語という考え方が唱えられたのは1970年代であるが、前述のように統一した見解になっていないことなどから、学校文法にあまり反映されていない、という事情もある)。[注釈 1]

たとえば、次のような議論が想起できる。「太郎には 才能が ある。」という文について、

形態を重視する立場:「が」を伴った文節が主語であるから「才能が」が主語である。

統語・意味を重視する立場:「才能が ある」「太郎には ある」ではひとつの文として完結しない。したがって、「太郎には」が主語であり、「才能が ある」は、連語述語と考えることができる。(鈴木重幸高橋太郎ら、言語学研究会の主張。)

機能を重視する立場:「太郎に」は主題を示す「は」を伴っており、これは主題である。また、「才能が」は主格補語である。

ここでは(ウィキペディア日本語版であるため)日本語の場合について特に取り上げたが、これに関し世界の言語のうち、日本語がことさら特殊というわけではなく、たとえば、主語優勢言語に比べ主題優勢言語が珍しい、などといった事実が言語学的に存在したりはしない。
その他の言語

英語フランス語では名詞及び代名詞が単独で主語になることができ、it / il のように特に何も対象のない形式主語もある。形式主語は、「雨が降る」 “It rains” “Il pleut” のように天候・気温などを表す場合などに用いる。

スペイン語イタリア語などでは省略されることが多い。ただし、これらの言語における主語の省略は日本語における主語の省略と性質を異にする。すなわち、日本語において主語は形態的には何らの人称性の痕跡も残さずに省略されるが、これらの言語では動詞の形態が主語の人称(性・数)と対応しているため、見かけ上は主語が省略されていても、実質的には動詞が人称区分された主語を標示していることになる。

ラテン語もCogito, ergo sum.「我思う故に我あり」というように主語が省略されることがある(これは、格により、省略されても主語は明確だからだ、とされている)。また主語のない言語(Pro-drop language)(Null-subject language)もある。
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 以上のようなすれ違いを解説するのではなく、すれ違いを利用した「主語はいらない・なかった」といったような煽動的な題名と内容の啓蒙書等もある。

出典^ a b 松本克己 (1991). “主語について”. 言語研究 100 (1991): 1-41. 
^ Seuren, P.A.M. (1998). Western Linguistics: An Historical Introduction. Oxford: Blackwell.
^ Dryer 2011.
^ 文法の項目を参照
^ Shibatani, Masayoshi (1990). The languages of Japan. Cambridge: Cambridge University Press.
^ 庵功雄『新しい日本語学入門—ことばのしくみを考える』スリーエーネットワーク、2001年。

参考文献

Comrie, Bernard. 1981. Language universals and linguistic typology. Oxford: Basil Blackwell.

Dane?, Franti?ek. 1966. A three-level approach to syntax. Travaux lingustiques de Prague, Vol. 1: 225-240.

Dixon, R. M. W. 1994. Ergativity. Cambridge: Cambridge University Press.


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