主系列星
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ただし後年になって、一様ではない組成を持つ恒星の場合はこの定理が幾分か破れることが判明している[9]

恒星のスペクトル分類の改定されたスキームはウィリアム・ウィルソン・モーガンと Philip Childs Keenan によって1943年に発表され[10]、これは両者のイニシャルを取って「MK分類」[11]と呼ばれている。MK分類では、それぞれの恒星に対してハーバード型に基づくスペクトル型と、光度階級を割り当てる。ハーバード型の分類では、スペクトルと温度の関係が知られるより前に、水素のスペクトル線の強度に基づいて異なる文字が割り当てられていた。これを恒星の温度順に並べ替え、さらに重複した型を除いた結果、温度が高い青から赤の順番は、O、B、A、F、G、K、M となった。またMK型での光度階級は明るい順にローマ数字で I から V までが割り振られた。光度階級で V に属するものが主系列に属する恒星である[12]
形成と進化詳細は「星形成」、「原始星」、「前主系列星」、および「恒星進化論」を参照

局所的な星間物質中の巨大分子雲崩壊によって原始星が形成される際、初期の組成は全体で一様であり、含まれている物質は質量比でおよそ 70% が水素、28% がヘリウム、その他の元素は残りの微量を占めている[13]。恒星の初期質量は、分子雲中の局所的な条件に依存する。新しく形成される恒星の質量分布は、初期質量関数によって経験的に記述される[14]。初期の分子雲の崩壊の最中、この前主系列星は重力収縮によってエネルギーを解放する。星の中心部が適切な密度に達すると、水素をヘリウムに変換する核融合反応によって核でのエネルギー生成が始まる[12]

水素核融合が主要なエネルギー生成過程となり、重力収縮によって解放されるエネルギーの超過がなくなると[15]、星はHR図上で主系列と呼ばれる曲線の上に来る。天文学者はこの段階の事をしばしば「零年齢主系列」[16]や「零歳主系列」[17] (: zero age main sequence, ZAMS) と呼び[18][19]、ZAMS 上にある恒星は「零年齢主系列星」や「零歳主系列星」と呼ばれる[16][17]。ZAMS は、恒星の核での水素核融合反応と放射によるエネルギーの収支が初めて釣り合った段階に相当する[16]。HR図上での ZAMS の曲線は、水素核融合が始まった段階での恒星の特性の数値モデルを用いて計算することができる。この時点から、恒星の明るさと表面温度は典型的には年齢が増加するに連れて上昇する[20]

恒星は水素核融合により核にある水素の大部分を使い果たすまでは、HR図上で主系列の初期位置付近に留まり、その後より明るい恒星へと進化する。HR図上では、進化する恒星は主系列の右上方向に移動する。従って、主系列は恒星の寿命のうち主要な水素燃焼の段階を表していることになる[12]
特徴

典型的なHR図上にある恒星の大多数は、主系列の曲線に沿った位置にある。恒星のスペクトル分類光度は、核で水素核融合を起こしている限りは、少なくとも第ゼロ近似的にはその恒星の質量のみに依存する。またその状態はほとんど全ての恒星がその「活発な」活動を行う期間で継続する。そのため、HR図上では主系列の曲線は顕著なものとなる[21]

恒星の温度は、恒星の光球でのプラズマの物理的特徴への効果を介してスペクトル型を決定する。波長の関数としての恒星のエネルギー放射は、温度と組成の両方に影響される。このエネルギー分布の重要な指標となるのは色指数の B-V であり、これは青いフィルター (B) と緑?黄色のフィルター (V) を通して測定された恒星の等級の差分から計算される。この等級における違いから恒星の温度が測定される。
矮星という用語

主系列星は矮星と呼ばれるが[22][23]、この用語には歴史的な側面があり、またいくらか紛らわしいものである。赤色矮星橙色矮星黄色矮星といったより低温な恒星は、たしかにこれらの色を持つ他の恒星よりも小さく暗い。しかし、より高温な青色や白色の恒星では、いわゆる「矮星」と呼ばれる主系列にある恒星と、「巨星」と呼ばれる主系列から外れた恒星との間にあるサイズや明るさの違いは小さいものになる。最も高温な部類の恒星ではこの違いは直接的には観測できないものとなる。このような恒星の場合、矮星か巨星かの判断は、恒星が主系列にあるかどうかを示すスペクトル線の違いから判断される。このように非常に高温な主系列星は同程度の温度を持つ「巨星」と同程度のサイズと明るさを持ってはいるものの、しばしば「矮星」と称される[24]

主系列星を指して「矮星」という用語を用いることは別種の紛らわしさも含んでいる。なぜなら、主系列に位置していない矮星も存在するからである。例えば白色矮星は恒星がその外層を放出した後に残される核の残骸であり、大きさはおおよそ地球程度で、主系列星よりもずっと小さい。白色矮星は多くの主系列星の進化の最終段階である[25]
パラメータ各スペクトル分類の主系列星の比較。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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