中衛府
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衣服令5条『令集解』所引2月23日格によると、養老6年(722年)2月、従三位であった房前は授刀寮の長官(授刀頭)であった[5]。このことは中衛府と藤原氏が密接な関係を持っていたことを示唆しており、とりわけ藤原仲麻呂は「中衛大将」として、その武力を自己の権勢の基盤としていた。

だが、藤原仲麻呂の乱後の天平神護元年(765年)の近衛府新設により中衛府の特権的地位は消失し、平城朝大同2年(807年)には近衛府が左近衛府に、中衛府が右近衛府に再編され、六衛府制の左右近衛府が成立したことで、中衛府そのものが消滅した。
沿革

神亀5年(728年)7月:中衛府設置(『類聚三代格』巻4「加減諸司官員并廃置事(雑任)」10、神亀五年七月廿一日『続日本紀』神亀5年8月甲午条)その職掌は後者によると「常に大内に在りて周衛(天皇近辺の警衛)に備ふ」とある。

天平勝宝8歳(756年)7月:(第二次)授刀舎人を中衛府預かりとする一方で、中衛舎人の上限を新設当初の300人から400人に増やす(『続日本紀』天平勝宝8歳7月17日条)。

天平宝字2年(758年)8月25日:藤原仲麻呂(恵美押勝)の官号改易により「鎮国衛」と改称され、それぞれ大将→大尉、少将→驍騎将軍、員外少将→次将と改められ、大尉を従四位上から正三位、驍騎将軍を正五位上から従四位上、次将を正五位下の官としている(『続日本紀』天平宝字2年8月25日条)。

天平神護元年(765年)2月3日:近衛府外衛府の官制制定により(『続日本紀』天平神護元年2月3日条)、中衛府の官制も大将1人(正三位)・中将1人(従四位下)・少将2人(正五位下)・将監4人(従六位下)、将曹4人(従七位下)・医師2人・府生6人・番長6人・舎人400人・使部30人・直丁2人のように改変される(『類聚三代格』巻4「加減諸司官員并廃置事(雑任)」10、神亀五年七月廿一日)。

延暦11年(792年)4月21日:近衛府と中衛府の大将は元は従四位上の官であったが、天平神護元年に改めて正三位の官としたので、今後は元にもどして従四位上の官とする、との勅が出される(『日本紀略』(『日本後紀』)延暦11年4月21日条)。

延暦18年(797年)4月:大将を正四位上の官とする。同時に五衛府の官位相当の位階の見直しが勅にて行われる(『日本後紀』延暦18年4月27日条)。

大同2年(807年)4月22日:中衛府を右近衛府とし、中将を復置(『日本紀略』(『日本後紀』)大同2年4月22日条、『類聚三代格』巻4「加減諸司官員并廃置事(雑任)」11、大同二年四月廿二日)なお、延喜式における四等官の人員・官位相当は、左近衛府に準えよとあり、大将1人(従三位)・少将2人(正五位下)・将監4人(従六位下)、将曹4人(従七位下)、そのほか、府生6人、医師1人、番長6人、近衞300人、駕輿丁100人の計425人となっている(『延喜式』巻12「中務省」74「時服」・巻28「兵部省」68「馬料」)。

脚注[脚注の使い方]^ 『類聚三代格』巻4「加減諸司官員并廃置事〈雑任〉」13より内匠寮設置記事より7月21日の出来事と推察される。『続日本紀』では、「巻第八、聖武天皇 神亀5年8月甲午条」となっているが、8月に甲午の日はなく、『類聚国史』・『日本紀略』ともに同様の誤りを犯しており、続紀本来のミスと思われる。
^ 吉川弘文館『国史大辞典』第9巻
^ 笹山晴生「中衛府設置に関する類聚三代格所載勅について」『日本古代衛府制度の研究』
^ 『万葉集』巻第五811番左注、812番題詞・左注
^ 笹山晴生「中衛府の研究」『日本古代衛府制度の研究』

参考文献

『角川第二版日本史辞典』p470、
高柳光寿竹内理三:編、角川書店、1966年

『岩波日本史辞典』p732、監修:永原慶二岩波書店、1999年

『国史大辞典』第九巻p467 - 468、吉川弘文館、文:笹山晴生、1988年

『続日本紀』2 新日本古典文学大系13岩波書店、1990年

『続日本紀』3 新日本古典文学大系14岩波書店、1992年

『続日本紀』4 新日本古典文学大系15岩波書店、1995年

宇治谷孟訳『続日本紀(上)・(中)』講談社学術文庫、1992年

森田悌訳『日本後紀(上)・(中)』講談社学術文庫、2006年

『萬葉集』(二)完訳日本の古典3、小学館、1984年

関連項目

帯刀舎人

近衛兵

皇宮護衛官


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