中華民国総統
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これ以降、国民大会は憲法上の総統再選制限の凍結や、総統に動員戡乱機構の設立権限を附与することなどを盛り込んだ臨時条款の改訂を4回行った[注 9][9][19][25][26][27][28]

1989年7月、国民大会は5回目となる臨時条款の改訂を決定した。しかし、この改訂内容は国民大会の権限を更に拡大させるものであったがために、立法院や民間の世論に不満を抱かせるものであった[29][30][31][32]。1990年3月、国立台湾大学などの学生らが野百合学生運動を起こし、「臨時条款の廃止」や「国是会議の召集」などの要求を掲げた[33][34]。1990年5月、第8代総統就任直後の李登輝(国民党所属)は就任記者会見で「国是会議を召集し、1年以内に動員戡乱時期を終了させ、臨時条款を廃止して正常な憲政体制に戻す」とした民主化プロセスを公表し、1991年4月、第1期国民大会第2回臨時会議が台北で召集され、臨時条款の廃止提案が可決[9][35]、李が国民大会の表決結果に基づいて1991年5月1日に臨時条款を正式に廃止したことで、動員戡乱時期は終結した[9][36][37][38]

臨時条款の廃止以外にも、李登輝は総統在任中に、本来の憲法構造を変えないとする原則の下、一部の憲法の条文の改正や凍結を行う中華民国憲法増修条文(以下「憲法増修条文」という)の制定を主導した。1991年の第1期国民大会第2回臨時会議で初の憲法改正が行われて以来、7回の憲法改正が行われた[9][39]。改正後、総統選挙と副総統選挙は別々の選挙から統一され、選挙方法は国民大会による間接選挙から人民による直接選挙に変更され、任期は元来の6年から4年に変更され、同時に総統には緊急命令を発する権限が与えられ、立法院の同意無しに行政院長の任命が可能となった[注 10][9][42][43][44]

1996年、李登輝は同党所属の連戦をパートナーである副総統候補として、第9期総統選挙に於いて、民主進歩党(以下「民進党」という)所属の彭明敏(副総統候補は同党所属の謝長廷)、国民党を離れて出馬した林洋港(中国語版)(副総統候補は無所属?柏村)、陳履安(中国語版)(副総統候補は王清峰(中国語版))を破り、初の全民直接選挙による総統に当選した[45][46][47]

2000年に行われた第10期総統選挙では、民進党推薦の陳水扁(副総統候補は同党所属の呂秀蓮)が、国民党推薦の連戦(副総統候補は同党所属の蕭万長)、国民党を離脱して出馬した前台湾省長の宋楚瑜(副総統候補は無所属の張昭雄(中国語版))、新党推薦の李敖(副総統候補は同党所属の馮滬祥(中国語版))、民進党を離脱して出馬した許信良(副総統候補は新党所属の朱恵良(中国語版))を破って総統に当選し、1948年以来の国民党による長期政権が終わり、中華民国の憲法施行以来初の政権交代が実現した[48][49][50]。その後、2008年には国民党、2016年には民進党所属の候補者が総統に当選し、政権交代を果たしている。

中華民国では憲法施行以後、これまでに3回の政権交代が行われている[51][52]
職位の更迭
選挙詳細は「中華民国総統選挙」を参照

憲法、憲法増修条文及び総統副総統選挙罷免法の定めるところにより、中華民国総統は、中華民国自由地区選挙区として、満20歳に達し、後見宣告を受けておらず[注 11]、中華民国自由地区に6か月以上継続して現在居住している、或いはかつて居住していた自由地区の人民による普通、平等、直接及び秘密投票の選挙によって選出される。中華民国の国籍に戻った者や帰化によって国籍を取得した者を除き、戸籍の作成から15年以上経過し、且つ、満40歳に達した者は、中華民国総統の候補者として登録することができる[注 13]。選挙参加の登録を行う場合は、総統候補者は副総統候補者と連名で登録し、且つ、政党が推薦し、又は連署者が連署する[注 14]

中華民国総統選挙の管轄機関は中央選挙委員会(略称「中選会」)であり、総統候補者の選挙活動期間は28日間である[注 15]。中華民国総統選挙は相対的多数決であり、候補者の中で最も多くの票を獲得した候補者の1組が当選し、同数の場合は投票日から30日以内に再選挙が行われる。1組しか候補者が登録されていない場合(即ち「等額選挙(中国語版)」)は、選挙人総数の20%以上の得票を以て当選し、獲得できなければ投票日から3か月以内に再選挙が行われる[注 16]

直近の中華民国総統選挙は2024年1月13日に行われ、前総統の蔡英文の路線を継承することを強調した頼清徳が勝利した[59]
就任第14期中華民国総統に就任する際、当時の立法院長であった蘇嘉全から中華民国の国璽を受け取る蔡英文(左)

憲法第48条の定めるところにより、中華民国総統は就任に際し、以下の就任宣誓を行う[注 17][60][54]

「余は謹んで至誠を以て全国人民に対し宣誓する。余は必ず憲法を遵守し、職務を忠実に行い、人民の福利を増進し、国家を防衛して国民の付託に決して背かない。もし誓言に相違することがあれば、国家の最も厳しい制裁を甘んじて受けるものである。ここに謹んで誓う。

余謹以至誠,向全國人民宣誓,余必遵守憲法,盡忠職務,攝i人民福利,保衛國家,無負國民付託。如違誓言,願受國家嚴飼V制裁。謹誓。」

この後、立法院長が印信条例の定めるところにより、中華民国の国璽と栄典の璽を授与し、国家権力の象徴と政権の承継を示す[注 18][60]

直近の中華民国総統就任式典(中国語版)は2024年5月20日に行われた[62]
罷免と弾劾「中華民国の罷免制度(中国語版)」および「中華民国の弾劾制度(中国語版)」も参照

中華民国総統は、自らの辞任のみならず、罷免又は弾劾の2種によって解任されることがある。

憲法増修条文及び総統副総統選挙罷免法の定めるところにより、中華民国総統の罷免案には、全立法院の4分の1以上の立法委員による提議と、3分の2以上の立法委員の同意での提出による成立を必要とする。立法院は、罷免案の宣言成立から10日以内に、罷免理由書と罷免された者の弁明書を添えて、罷免案を中央選挙委員会に移送し、委員会は立法院が移送した罷免理由書と弁明書の受領翌日から20日以内に公告し、60日以内に国民投票を実施する。この際の罷免投票者の資格は選挙人の資格と同一である。罷免の国民投票も同様に絶対多数決で行われ、有効票の過半数以上が罷免に同意すれば罷免案は可決され、罷免された総統は中央選挙委員会での選挙結果の公告後に即時解任されなければならず、その後4年間は総統候補者として登録することができず、罷免案が可決されなければ、総統の任期中は、罷免案が再提出されることはない[注 15][63]


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