中東呼吸器症候群
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また脳炎、腎炎も発症したと言われる[注釈 2][14][15][16]
中東での流行

イギリス人4人・ドイツ人2人、フランス人2人が中東で感染した例がある[注釈 3]

家族内感染3人(ヒト-ヒト感染の疑い)と、状態良好で入院後2時間で死亡した11歳男児の事例がある。急速な病状の悪化だが、インフルエンザでは適切な投薬がない場合にこのような症例になることがある。

2013年5月14日現在、38人感染確認、20人死亡、死亡率53%[17][18][19]

2013年5月15日、WHOは、患者が入院したサウジアラビアの病院の2人(看護婦と医療関係者)への「ヒト-ヒト感染」が初めて確認されたと発表した[20]。合計で関係者21人(死者9人)が医療機関関係者の感染者となる。また、ヒト-ヒト感染は、イギリスで父子感染例がある。この時点で感染者40人、死者20人、死亡率50%になった。これは公式発表ではないが、パンデミック・フェーズ3に相当する。また複数の国家にまたがるのでフェーズ4に相当する可能性があるが、どこの国も旅行制限を出していない。新型インフルエンザの時に、パンデミック・フェーズにより対策を区別したことがあったが、フェーズの定義と実際の被害がかけ離れたために、WHOのチャン事務局長は「穏やかなパンデミック(mild pandemic)」と呼んだ[21][14]

2013年5月中旬に直接サウジアラビアで現地調査をしたWHOのフクダ事務局長補は、複数の国でまとまった感染例(クラスター)がありヒト-ヒト感染の可能性が高まっていると述べた。

2013年5月21日チュニジア政府は、66歳のチュニジア人がMERS-CoVで死亡し、2人の子どもの感染を発表した(父と姉妹一人が、1週間前まで5週間のあいだサウジアラビア(メッカなど)とカタールに旅行していたという)。これで感染者44人、死者22人になる。

2019年においてもサウジアラビアにおいて14人が感染し、そのうち5人が死亡した[9][22]

WHOによれば2019年11月までに診断確定患者は2494人、死者858人[10]
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この節の加筆が望まれています。

診断には下気道の検体を使うことが強く推奨されているほか、鼻咽頭と中咽頭の検体も使われており[23]、その検体を使ってPCR検査が行われる。国立感染研究所ではLAMP法も導入された[24]

米国CDCでは、血清を使ったウイルス抗体検査(ELISA法、IFA法、中和抗体測定法)も同時に行われている[25]
予防

石鹸による手洗い、マスクの装着、ドアノブやスイッチやハンドルなどの人の触る所の消毒などが予防となる。洗っていない手で、目や鼻や口などの粘膜に触らないようにする必要がある[26]。消毒は、消毒用エタノールイソプロパノール次亜塩素酸ナトリウムが推奨されている[27]

また、病人との接触は控えた方が良い[26]。航空機などではサーモグラフィーによる体表温度スクリーニングが行われているが、韓国でのMERSの例では、MERS初期の発熱で38度以上の体温となることはそれほど多くなく、37.5度以上の体温上昇すらも起こらない場合のあることが確認されており[28]、限界がある。家庭内でも密接接触による感染が起こりうるため、マスクをして2m以上距離を保つことが望ましい[29]

また、病人の排泄物からの感染に気をつける必要がある。フランスのMERS院内感染の例でも、排泄物等を経由した感染の可能性が報告されている[30]

感染者一人当たりの再生産数(感染させた人数)の平均を一人未満にしなければ流行は収束しないため、感染者に対する接触者追跡調査(コンタクトトレーシング)及び接触者の隔離が行われている。感染者に接触した可能性があり、MERS類似の症状が出た場合には、最寄りの保健所に電話相談する必要がある。なお、症状が無くともMERSに感染しているというケースも現れている[31]

2015年6月、京都府立大学大学院教授の塚本康浩らのグループが、MERSコロナウイルスに強く結合する抗体をダチョウの卵を使って大量精製することに成功[32]。共同で研究を進めているアメリカ陸軍感染症医学研究所が検証を進め2015年6月の段階で韓国、米国に配布、スプレー剤として大量生産を開始した[32]。抗体によって覆われたウイルスは人の細胞に侵入できなくなり、感染予防に大きな効果があり、抗体を使ったスプレー剤はマスクやドアノブ、手などに噴射すれば感染予防になると考えられている[32]
治療

治療法は確立していないため、対症療法となる。肺炎に対する抗炎症薬、下痢による脱水に対する補水、急性呼吸窮迫症候群 (ARDS) に対する人工呼吸敗血症性ショックに対する輸液及び昇圧剤などが中心となる。また、二次感染の防止のために、抗生物質の投与が行われている[33]

致死率の高さにサイトカインストーム高サイトカイン血症)の関与が疑われている[34][35]

動物実験において、リバビリン(抗ウイルス薬の一つ)とインターフェロンα2b(サイトカインの一種)の組み合わせが肺炎の発症を抑制するという報告がある[36]。しかし、既に急性呼吸窮迫症候群となっていたエジプトでの5人の重症患者では、これらの組み合わせの投与での治療に失敗している[37]。また、HIV薬のロピナビルや回復期患者の血漿、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体に効果がある可能性がある[38]。WHOでは、2013年にMERS治療の選択肢としての回復期血漿や高い中和抗体の使用を議論するための招集を行ったものの、未だに臨床試験に基づくエビデンスは出ていない[39]。WHO の Blood Regulators Network は、MERS治療のための血清・血漿の収集・使用の方針書を公開している[40]

セリンプロテアーゼ阻害剤の「カモスタット」が、培養細胞レベルで、コロナウイルスの活性化に使われるTMPRSS2を阻害し、MERSコロナウイルスの細胞内への侵入を防ぐことが見つかっている[41]


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