中村主水
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中村 主水(なかむら もんど)は必殺シリーズに登場する登場人物で、藤田まことが演じた架空の人物。小説などの原作を持たない テレビ番組オリジナルのキャラクターである。

第2作『必殺仕置人』の初登場以来、第31作『必殺仕事人2009』まで、シリーズの半分を超える16作に登場した。『助け人走る』(第12話)『必殺剣劇人』(第8話)にゲスト出演。「必殺の顔」と公式に称され、シリーズを通して活躍した。
概要・キャラクター
表稼業

南町奉行所[注 1]定町廻り同心。典型的な昼行灯で職務怠慢が目立つが、自分の担当地域の商家に袖の下(賄賂)を要求したり、軽犯罪の場合は金で見逃すという、現代でいう所の悪徳警官である。史実として同心(役人)に付け届けをすることは頻繁にあったが、当時の時代劇では主人公の同心が小悪党という設定は珍しいことであった。

普段は無気力だが、旗本や大名などの巨悪が絡む事件については上役の命令を無視してまで捜査をしようとするなど、元の性格が現れることがある。『必殺仕置人』最終話、『新・必殺仕事人』第47話のように自身の得にならないことでも黙って見過ごせない状況について意見することがあった[注 2]

シリーズ中盤までは他の同心と同じく黒の羽織を着ていたが後期からは紫から茶色へと羽織の色が変わった。

上役の多くは主水のことを軽んじるか蔑ろにして、時には疫病神と呼んだが中には主水の素質と性格を見抜き、報償金で上手く操縦する者もいた。同僚たちからも馬鹿にされているが十年以上に渡って宴会の幹事を務め、宴の仕切りに関しては同僚たちから信頼されていた。賭け事では胴元を務めることが多く、その際は普段は口煩い上司を上手く丸め込んだ。キャリアについて正確な描写は少ないが、後期の作品[1]で勤続20年の表彰を受ける描写がある。『必殺仕事人2007』の時点ではせんが『奉行所勤めが三十年』と述べている[注 3]

好物は甘い食べ物と目刺。旧仕置人の頃は饅頭や柏餅を頬張る描写が多かった。酒は仕置人までは下戸であったが仕業人から飲むようになる[注 4]。仕事人では甘い物の好物で和菓子屋に借金が貯まっている事が示唆された。

劇中では異動や出張が多く、シリーズによって勤務地や職務が変わっている(#経歴参照)。
裏稼業

晴らせぬ恨みを金銭で晴らす殺し屋。同心(警察)の立場を利用して、標的の経歴や身分を調べ上げる「密偵」の役割と「殺し」の役割を両方担う。敵は主水が犯罪を取り締まる役人である為、殺し屋だと疑う事が殆ど無く、油断して殺される描写が大半を占める。仲間たちが殺し屋の疑いが掛からないように、捜査中に証拠を隠滅する重要な役割を担う。『必殺仕置人』で棺桶の錠が持ち掛けて来た娘の父親の仇討ちを請け負ったのをきっかけに、裏稼業に足を踏み入れた。以降は「仕置人」「仕留人」「仕置屋」「仕業人」「商売人」「仕事人」を名乗り、長きに渡って裏稼業を続けた。

当初は仕置人グループの参謀役として登場。殺しを行った仲間たちの撤収や侵入が困難な大名屋敷の潜入の手配を主に行った。『仕置人』はその傾向が特に強く、実際に殺しを行うのは鉄と錠だけでサポートにすら関わっていないエピソードが存在する。その後は主に実働隊の一員、リーダーとして活躍。参謀として計画を立案することがある。殺し技は剣術#剣術参照)。

必殺シリーズは剣術の殺し屋は浪人が大半を占めるが、主水のような公務に就いている殺し屋は珍しい例であった。山田朝右衛門、渡辺小五郎と公務に付く殺し屋は後に登場する。

『必殺仕置人』では日々の鬱憤を悪人にぶつけるように積極的に仕置に関わっていたが、『暗闇仕留人』で糸井貢が仕留人としての生き方に苦悩して命を落としてからは感情を極力面に表わさず、佐渡金山以来の顔馴染みだった念仏の鉄や中村家の端唄の師匠である三味線屋の勇次、奉行所の同僚である渡辺小五郎などを除き、裏稼業以外では仲間と会う機会があっても知らない者同士を装い、馴れ合いを避けて必要以上に親しく接することはなかった。

仲間が私生活のトラブルで捕まった時は特に敏感となり「お前に何かがあって捕まったら俺たち全員が獄門晒し首になる」と注意する事が多い。

仕置の狙いを定めた獲物に情けを掛けることはないが、ごく稀に弱気になることがあった[2]。仲間内では冷静で、念仏の鉄が頭の血がのぼって喧嘩沙汰になりかけた時は仲裁に回り、なだめる事が多かった。一方で、仲間が甘さや未熟さを時折見せた場合は叱咤して感情が先走りがちだった飾り職人の秀、子供じみた正義感を振りかざす西順之助に対して鉄拳を振るったことがある。旧友が仕置きの対象となり、主水を利用して暗殺を止めた鋳掛屋の巳代松に至っては特にこっぴどく鉄拳制裁を振るっていた。チームが危機に瀕した場合はその原因となったメンバーを容赦なく斬ると宣言したが仲間が危機に陥った場合は死地に自ら飛び込む場面も多く、実際に仲間を粛清したり裏切ったことはない。

がめつい性格ではあるが仕置する悪人が主水を買収しようとしても拒み、悪人の金には手を着けない。損得勘定で動くため、仕置料が安かったり相手が旗本や幕府関係者の場合は割に合わないと断る場合があるが、最終的には正義感や義侠心から引き受ける。

仲間からは主に「八丁堀」と呼ばれ(町役人たちも自称する)、苗字や名前で呼ばれる機会は少ない。

『必殺仕事人2007』以降は渡辺小五郎に主役の座を譲り、若手のサポート役に廻るようになるが血気盛んな仕事人たちを叱責したり諭すことを忘れなかった。

『新・仕置人』での重要な伏線として、前期シリーズの主水は裏稼業の世界では知られておらず、主水も自分の正体を隠していた。特定の斡旋人(元締)に就かず、自身もそのような人物や組織については「人殺しの集団」「信用できない」と発言した。シリーズを通して、寅の会や闇の会などに間接的に関わった例を除き、特定の元締から仕事を請け負ったのは『必殺仕事人』と『必殺仕事人・激突!』の時だけである[注 5]。主水の名が仲間以外の裏稼業の人間に知られるようになるのは『江戸プロフェッショナル・必殺商売人』第22話以降である。

一方、後期シリーズ(仕事人シリーズ)では裏の社会に主水の名が知れ渡り、様々な同業者たちと面識があった。その中には有力な元締がいて、仕事を斡旋されたこともあるが特定の元締の下で働くことは稀である。後期エピソードの中には悪党が闇の世界を牛耳るために主水を懐柔しようとする回が多数ある(『必殺仕事人V・激闘編』第24話、最終回。『必殺仕事人V・風雲竜虎編』第1話など)。『仕事人』第82話のように主水のことを知らない裏稼業の殺し屋が登場した。
剣術

殺し技は手持ちの刀を用いた剣術である。親しげに話し掛けて、相手の油断を誘う不意討ちや騙し打ちを主に行う。その腕前は一流で劇中の描写や設定によると奥山神影流、御嶽新影流、小野派一刀流、一刀無心流の免許皆伝で、心形刀流の心得もある。寺子屋では一番の腕前であったとも語られ、奉行所内では五本の指に入ると言われている。

仕掛人の西村左内とは異なり、状況に応じて様々な剣技を披露、単に斬り掛かるだけでは無く、相手を挑発させて先に剣を抜かせて返り討ちに合わせる事や助太刀に見せかけて敵に斬り掛かる技も披露する、稀に多勢を相手に刀を抜く事がある。

『仕事人V』『仕事人V・激闘編』は刀の仕込み打刀のような刃を仕込み、それを様々な形で使用する事が多くなる。基本は目釘を外した柄を鞘のように抜いて相手を暗殺する事もあるが、刀の長さを利用して仕込みの刀の刃先を槍のように用いて刺し殺したり、出会い頭に茎を抜いて刀を握らずに接近して刺し殺す等、暗殺の手段が増えて行く。

奉行所では昼行燈を装い、剣の腕前を周囲に隠している。奉行所での剣術の稽古や試合ではわざと負けたり、実力がないように見せるために竹光を腰に差すことがあった。

必殺シリーズは剣豪の殺し屋を西村左内、畷左門等の浪人が担当する事が多かったが主水の活躍が次第に増えた事で、剣豪の殺し技は主水が一任することとなった。
家族など「中村せん・りつ」も参照

妻のりつ、姑のせんと三人で、八丁堀の組屋敷に暮らしている。下総の筆頭同心 北大路家の次男である主水が、わずかな伝手を頼って、中村家に婿入りしたのがなれそめである。中村家の出自は清和源氏義光流[3]家紋(及び紋所)は「丸に唐花」。宗派は不明だが、恐らく法華宗であると思われる[4]

『必殺仕事人W』第43話で、自らを「中村主水之介 玉五郎」と上司の筆頭同心 田中の前で名乗る場面がある[注 6]

年齢は『必殺仕置屋稼業』第10話の時点で四十二歳[5][6]、身長は五尺三寸[7]、体重は十六貫五百匁。黒羽織は仕置人?仕置屋、新仕置人?仕事人III 第3話まで、アヘン戦争へ行くと剣劇人で着用、茶色羽織は仕業人と仕事人1話の冒頭、仕事人III4話以降?仕事人IVは茶色羽織と煤けた黒羽織を、薄い茶色羽織は仕事人V?風雲竜虎編12話まで着ている。

恐妻家で世渡りが下手な上、やる気の無さゆえに奉行所での出世の見込みがないこと、主水自身の怠惰な生活態度から家では二人から疎まれ、陰に日向にいびられ続けている。主水もそのような態度で接する二人、特にせんに対しては相当に嫌気が差している様子が窺える。尤も表に出さないだけで深い愛情で結ばれており、それを示唆するエピソードも劇中に数多く見られた。

三十歳を過ぎても子供ができず、懐妊の兆しもないことから、せんとりつからは「種無しかぼちゃ」と罵られている。子供が授からない理由ははっきりしないが、主水が子供の頃におたふく風邪に罹り、高熱を発したことが判明したときはせんとりつからはこれが原因ではないかと疑われていた[7]。『商売人』ではりつが懐妊するが、最終的には死産[注 7]という結末を迎えた。夫婦ともに性欲は旺盛で、りつが床入りを迫る場面があり、主水も時折、他の女性に浮気をしている。放送当時の社会を舞台にした2回のTVスペシャルにおいて主水、せん、りつの子孫が登場しているが主水の子孫とされた人物は名前も職業もそれぞれ違っている[注 8]


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