中村主水
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三十歳を過ぎても子供ができず、懐妊の兆しもないことから、せんとりつからは「種無しかぼちゃ」と罵られている。子供が授からない理由ははっきりしないが、主水が子供の頃におたふく風邪に罹り、高熱を発したことが判明したときはせんとりつからはこれが原因ではないかと疑われていた[7]。『商売人』ではりつが懐妊するが、最終的には死産[注 7]という結末を迎えた。夫婦ともに性欲は旺盛で、りつが床入りを迫る場面があり、主水も時折、他の女性に浮気をしている。放送当時の社会を舞台にした2回のTVスペシャルにおいて主水、せん、りつの子孫が登場しているが主水の子孫とされた人物は名前も職業もそれぞれ違っている[注 8]

『必殺仕事人V・旋風編』 第11話「主水の隠し子現れる」で、お島(中村メイコ)が17年前に「主水と一度だけ過ちがあった」(不倫)と語っており、お島の娘のお小夜(三沢恵理)が主水の子供ではないかと問われた時は、お島は否定しなかった。お小夜は悪人によって殺害され、お島も死亡したため詳細は不明。

へそくりが趣味で、袖の下や裏の仕事などで得た金銭を家の様々な場所に隠している。それを必要な時に持ち出して様々な用途に用いているがせんとりつに見つかり、生活費や遊興費に当てられてしまうことが多い。

『仕留人』の段階では、せんには妙心尼(本名はたえ)、あや(妙心尼、あやはりつの妹)と娘がりつ以外に二人いて、妙心尼の情夫 村雨の大吉とあやの夫 糸井貢は主水に取っては仕留人グループとして、チームを組んだ仲間であった。
あやは『仕留人』劇中で死亡。妙心尼は後に『新・必殺仕置人』第14話にゲスト出演している[注 9]。妙心尼は大吉とは別の若い男を情夫としており、その様子を影から見ていた主水は「昔と同じで進歩がまるで無い」と憤慨しつつ呆れていた。
経歴

劇中では以下のような職務歴を経ている。基本的に時間の経過はシリーズの順序に沿い、時代設定はシリーズによって異なるが、江戸時代後期の設定となっている。具体的な時期については必ずしも時系列に沿っておらず、過去の作品の後日談が過去の作品よりも前の時代を舞台にしているという矛盾が発生していることがある。

主水シリーズの2作目『暗闇仕留人』は黒船来航(嘉永6年(1853年)6月3日)以降で、後期作品は桜田門外の変1860年)を扱ったスペシャルがある。寛政 - 天保期(1800年 前後)も多い。一方で『新春仕事人スペシャル 必殺忠臣蔵』の元禄期(1700年 前後)はそれ以前に遡った時代設定となっている。

それ以外に整合性が取れない事例として、主水が南町奉行所に転属になったのは鳥居耀蔵が南町奉行を既に務めていた時であったが(『仕置屋』)、後のスペシャル『春日野局の秘密』『仕事人vsオール江戸警察』は少なくとも鳥居が着任する前から、主水が南町にいたことになっている。これらの矛盾点の回答として、『必殺忠臣蔵』の冒頭で「どの時代にも、主水のような人物がいたと解釈してほしい」と藤田まことが視聴者に対して説明している。

『必殺シリーズ』は放送当時の現代を江戸時代に置き換えたパラレルワールドとして制作されている事をプロデューサーの山内久司は述べている[要出典]。

作品名役職備考
前史佐渡金山同心 見習い
必殺仕置人北町奉行所 定町廻り同心
助け人走る
暗闇仕留人
必殺仕置屋稼業南町奉行所 定町廻り同心北町奉行所からの組み替え
最終回で伝馬町牢屋敷に左遷
必殺仕業人伝馬町牢屋敷 牢屋見廻り同心
新・必殺仕置人南町奉行所 定町廻り同心
必殺商売人
八王子同心の指導係南町奉行所からの出向(左遷)
必殺仕事人南町奉行所 定町廻り同心[8]
新・必殺仕事人
必殺仕事人III
必殺仕事人IV
必殺仕事人V
仕事人V・激闘編最終回で、定町廻りの班長に昇格
仕事人V・旋風編石川島百軒長屋の番所勤め南町奉行所 配下
仕事人V・風雲竜虎編富岡八幡宮へ架かる橋の番所勤め
必殺剣劇人南町奉行所 定町廻り同心
TVスペシャル期間
必殺仕事人・激突!南町奉行所 定中役同心
必殺! 主水死す南町奉行所 定町廻り同心劇中で死亡(厳密には生死不明)
必殺仕事人2007南町奉行所 書庫番渡辺小五郎の赴任に伴う配置換え
必殺仕事人2009木挽町自身番勤め左遷 / 南町奉行所 配下
必殺仕事人2010西方へ赴任
必殺仕事人 (2018年)南町奉行所 配下?[注 10]

エピソード
中村主水の誕生

シリーズ第1作『必殺仕掛人』の放送後、プロデューサーの山内久司は次作『必殺仕置人』に同心を登場させるため、中村主水の基本設定を決めたという。山内は主水にサラリーマンの様な平凡さを求め、配役には「男前でもなければ、不細工でもない。体格も極めて平均的な日本人である、藤田まことしかないと思った」と述べている[9][10]。配役については藤田は『てなもんや三度笠』のイメージが強すぎるため、朝日放送の社内では反対する声が多かった[11]が、監督の深作欣二の推挙もあり、藤田に決まった。一方で「スタッフは他の有名俳優にも主水役を打診したが、家庭で嫁姑にいびられる情けない役どころを引き受ける人間が誰もおらず、最終的に自分のところに回ってきた。依頼から撮影まで、たった一週間だったのが合点がいった」と藤田は語っている。詳細は「必殺仕置人#概要」および「藤田まこと#てなもんや三度笠に出演」を参照「必殺仕掛人#制作背景」も参照

『仕置人』は念仏の鉄が主人公、棺桶の錠は準主役。主水は三番手であったが人気を博して、次作『助け人走る』にゲスト出演。『暗闇仕留人』ではレギュラー出演を果たし、『てなもんや』以降、不遇だった藤田をスターの座に返り咲かせることとなった。撮影を担当した石原興は「当初は藤田の演技は未熟だったが『仕置人』が終わるころには物になっており、主水は藤田以外にはいないと思った」と述懐している[12]。「中村主水というキャラクターが自分の中に確立できたのはいつ頃か?」という質問に対して、藤田は後年「『商売人』の頃だ」と答えている[13]。詳細は「てなもんや三度笠#番組の終了」および「藤田まこと#必殺シリーズに出演」を参照「江戸プロフェッショナル・必殺商売人#概要」も参照

中村主水の名前の由来に関しては諸説ある。主水の名前を会議で議論していた時に山内は「ジェームス・ボンドにしましょうか?」と冗談で発言した所、「“モンド”という名前は平凡やね、目立たん名前やね」と深作が返して決まったという[9][10]。他方で、それは制作陣による後付けのリップサービスで、実際は日本では一般的な中村という苗字に八木節に登場する怠け者の鈴木主水の名前を取って付けたという説がある[14]

トレードマークのマフラーは『仕業人』の撮影時、寒さを凌ぐために小道具係から借りて撮影に用いたものが定着したものである。藤田の死後に製作した『仕事人2010』からはそのマフラーを仕立て屋の匳が受け継ぎ、それ以降は渡辺小五郎が受け継ぎ、仕事を行う際に襟に巻いている。
最期

主水の最期について現時点では明確な描写は無く、それとなく匂わせるものに留まっている。

劇場版第6作『必殺! 主水死す』では権の四郎との死闘の末、その場に居合わせたかつての愛人 お千代に背後から刺され、その直後に爆発に巻き込まれた。この時の描写は主水の死を思わせるものだが、劇中では爆発後の現場に十手が落ちている描写があるものの死体は映っていないため、実際は生死不明である。『主水死す』公開の3年後に連載が始まった漫画『必殺仕置長屋』では「三年前から行方不明」と語られている。『必殺仕事人2007』では特に説明もなく登場しており、その経緯は説明されていない[注 11]

その後の藤田まことの急逝を受けての『必殺仕事人2010』では「西方へ赴任した」[注 12]とされ、主水、せん、りつのその後については言及されていなかったが、主水は2018年のテレビスペシャル『必殺仕事人』で江戸木挽町の自身番屋に戻っており[注 13]、小五郎の窮地を救い、主水が未だ健在であることが判明した[注 14]

これらが描かれる前に主水の末路について、藤田は「どぶ川に顔を突っ込む、みっともない死に方」。山内は「平穏無事に晩年を迎え、認知症となり、『俺は仕事人だ』と公言するも周りは誰も相手にしない[15]」と想定していた。


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