中学校
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

夜間の授業を受けている人には、外国籍、戦後の混乱期に勉強の機会を得られなかった高齢者、不登校など、ほとんど文字の読み書きができない成年の生徒も多く[11]、そういった学齢超過者は、日本の現在の受け入れ態勢の下では小学校に入学することが困難であるため、中学校における夜間の授業は、日本語教室日本語学校識字教室、小学校の代替としての役割も果たすともいわれている。また、授業時間は、昼間の授業よりも少ない場合が多く、授業は「中学校学習指導要領」(文部科学省告示)を完全に履修する事は難しい。そのため、国語数学のように、日常生活の基本となる教科が重視され、それ以外の教科や実技教科(保健体育など)に割り当てられる時間数は少ない。生まれて初めて鉛筆を持つ人から、中学校に途中まで在学した人までの幅広い生徒が在籍し、生徒間の学力の差が大きいため、習熟度別授業を行っている事が多い[12][13]。また、制服はない場合が多い。夜間の授業を受ける場合は、年間を通して随時入学できる。
歴史

元々、中学校における夜間の授業は、第二次世界大戦降伏後の混乱期の中で、生活困窮などの理由から昼間に就労または家事手伝いなどを余儀なくされた学齢者が多くいたことから、それらの人に教育の機会を提供する事を目的として中学校で行われたものである。当時は、「夕間学級」などとも呼ばれた。高等学校の「定時制の課程」とは異なり、夜間に授業を行うための特別の「課程」の制度はない。

なお、旧制中学校にも夜間の課程は存在していたが、これは現在の夜間中学とは系統が異なり、新制高校の定時制課程の起源として見られることが多い。戦前の旧制学校のうち、現在の中学夜間学級に近い例としては、板橋区に存在した板橋尋常夜学校等の夜間小学校や夜間に授業を行った日本各地の実業補習学校が挙げられる。

1947年学制改革の直後、大阪市生野区で長期欠席生徒向けの夕方の補習授業「夕間学級」が開始された。また東京都の戦後初めての夜間学級は、1951年足立区立第四中学校で開設されたものである。同校の伊藤泰治校長らは、足立区周辺に広がるスラム街のうち、学校に近い所を回って夜間学級を宣伝し、当初はわずかな人数しか集まらなかったものの、やがて300人程度の生徒を抱えるようになった。

未就学児を学校に行かせる事は、その家庭にとっての労働力を失う等、スラム街の貧困状況を物語る背景が大きくあった。当時の文部省は夜間中学設立に対して阻止の圧力をかけるなど、夜間中学設立に関しては伊藤泰治校長らの相当な苦労と熱意が無ければ成しえなかったであろう。

夜間学級の設置校のピークは1954年の87校であり、生徒数のピークは1955年の5208人である。大阪では1969年に最初の夜間学級が大阪市立天王寺中学校に開設された。

そのあと一時期は、「夜間の授業はあくまで臨時の措置であり、学校教育法そのものが想定しているものではない」「学齢超過者は学校教育ではなく社会教育で学ぶべきである」という趣旨で、教育行政において縮小・廃止の検討がされ、1968年には校数21校・生徒数416人に減少した。これに対し夜間中学卒業生の高野雅夫などの教育活動家が、廃止反対・設置要求の運動や、証言映画の上映をするなどの熱心な支援をしたため、夜間中学校は息を吹き返し、現在までも存続している。近年は、日本国籍を有していない生徒や、元不登校の生徒も増えてきている。
第二次世界大戦降伏後しばらく、特に1955年から10年間ほどは、学齢期の生徒も多く通学していたが、学齢期のこどもの不正な労働の防止[注釈 3]を目的として、現在では、学齢超過者のみに通学が制限されている。
設置状況(2024年4月現在)

日本全国の夜間中学校設置状況は以下の通り。
北海道
北海道
札幌市立星友館中学校[14]
東北
宮城県
仙台市立南小泉中学校夜間学級[15]福島市立福島第四中学校天神スクール[16][17]
関東
茨城県
常総市立水海道中学校
[18]
群馬県
群馬県立みらい共創中学校[19][20]
埼玉県
川口市立芝西中学校陽春分校[21]
千葉県
千葉市立真砂中学校かがやき分校[22]市川市立大洲中学校[23]松戸市立第一中学校みらい分校[24]
東京都
墨田区立文花中学校[25]大田区立糀谷中学校[26]世田谷区立三宿中学校[27]荒川区立第九中学校[28]足立区立第四中学校[29]葛飾区立双葉中学校[30]江戸川区立小松川第二中学校[31]八王子市立第五中学校[32]
神奈川県
横浜市立蒔田中学校[33]川崎市立西中原中学校[34]相模原市立大野南中学校分校[35]
静岡県
静岡県立ふじのくに中学校[36]
関西
京都府
京都市立洛友中学校[37]
大阪府
大阪市立心和中学校[38]大阪市立天満中学校[39]大阪市立東生野中学校[40]堺市立殿馬場中学校[41]岸和田市立岸城中学校[42]豊中市立第四中学校[43]守口市立さつき学園[44]八尾市立八尾中学校[45]東大阪市立布施中学校[46]東大阪市立意岐部中学校[47]泉佐野市立佐野中学校夜間学級[48]
兵庫県
神戸市立丸山中学校西野分校[49]神戸市立兵庫中学校北分校[50]尼崎市立成良中学校琴城分校[51]姫路市立あかつき中学校[52]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:93 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef