同年起こった辛亥革命によってこの動きは一時中断したものの、新たに成立した中華民国政府は中国語の統一を重視し、國語統一の動きは引き続き進められた[20]。中華民国における「國語」制定においてはまず発音の統一が重視されたが、この発音については北京方言を用いるか、各地の方言を折衷した新しい発音を用いるかの論争が起こり、最終的に1924年に北京方言を主に用いることと定められた[21]。
1917年には、陳独秀の発行する雑誌『新青年』誌上において、胡適を中心として書き言葉を「文語体」(文言文) から「口語体」へ変えようとする動き(白話運動)が広がり、文学革命が起こった[22]。魯迅の『阿Q正伝』などがこの運動の中で生み出された。1919年(民国8年)、北京大学教授の銭玄同は、雑誌に寄稿して文字改革を訴えて漢字の廃止を主張し、新文化運動の中心人物となった。
第二次世界大戦後、1949年に中国大陸に成立した中国共産党による中華人民共和国においても、標準語の制定と言語統一は引き続き追求された。ただし発音的には「國語」がすでに確立され、中華民国統治期にすでに全国に普及していたため、基本的にこれを踏襲する姿勢を取った。ただし「國語」は日本語からの借用語であったため、「普通話」と名を改めることとした[23]。これに対し、台湾へと逃れた中華民国政府は引き続き「國語」という用語を使用し続けた[24]。
清朝末期から中華民国期にかけて、語法面で英語の影響を受けて出現した新たな中国語の言い回しも数多くあり、これは「欧化語法現象」と呼ばれている。
中華人民共和国政府は発音の面では中華民国政府の政策を踏襲したが、文字の面では大規模な改革に踏み切り、正書法として従来の漢字を簡略化した簡体字が1956年に採用された。また、言語の統制機関として1954年に中国文字改革委員会が設置され、1985年には国家語言文字工作委員会と改称された[25]。
標準語詳細は「標準中国語」を参照
中国では文章語は古代より統一されていたが、口語は各地方ごとに異なり、同じく漢字の発音も各方言ごとに異なっていた。この状況の解消を目指し、20世紀初頭から中盤にかけて北方語の発音・語彙と近代口語小説の文法を基に「普通話」(p?t?nghua)が作られた。日本では「標準語」に当てはまる。人民の意思疎通を容易にするため、中国では中央政府の標準語政策により積極的に普通話の使用が推進され、教育や放送で取り入れられ、標準語・共通語とされている。一般的に、全人口の8割程度が普通話を理解するといわれ、方言話者の若い世代は普通話とのバイリンガルとなっていることが多い。2017年には、中国国民のおよそ80%が普通話を使用することができ[26]、2000年の53%から大幅に増加したことが報じられた[27]。
台湾においても、日本の敗戦後に施政権を握った中華民国政府が「国語」(guoy?)(「普通話」とほぼ同一で相互理解は可能だが音声と語彙に差異がある)による義務教育を行っている[28]。
シンガポールやマレーシアなどの東南アジアの地域では、普通話や中華民国国語に似ている標準中国語が一般的に「華語」(huay?)と呼ぶ。
方言中国語方言の分布
2012年における中国で話される言語別の人口割合[29](下位にさらに細かい方言がある) 官話(北京官話、東北官話、冀魯官話、膠遼官話、中原官話、蘭銀官話、西南官話、江淮官話) (66.2%) ?語 (6.2%) 呉語 (6.1%) 晋語 (5.2%) 粤語 (4.9%) ?語 (4.0%) 客家語 (3.5%) 湘語 (3.0%) 徽語 (0.3%) 広西平話, その他 (0.6%)
中国には多くの方言がある。例えば、北京語(北方語の一つ)と広州語(広東語・粤語の一つ)と上海語(東部に分布する呉語の一つ)では発音、語彙ともに大きく異なるだけでなく、文法にも違いがあり、普通話しか話せない者は、広東語などの方言を聞いてもほとんど理解できないため、別の言語とする見方もある。しかし、文章語は共通しており書かれた文の読解は容易であるため、中国ではテレビで放送されるドラマや映画、アニメなどに字幕を付けることが多い[30]。また各地方語はあくまでも中国語群には属していて対応関係が明確であるため、普通話を標準語として上位に置き、各地方語は方言と呼ばれることが一般的である[31][注釈 1]。
方言区分は議論のあるところであり、いくつに分けるか学者によって異なっている。2分類では、湖南省以東では長江が南北の等語線とほぼ等しく(南通、鎮江などは例外)、これより北と西の内陸部が「北方語」(および晋語)、これより南が南方諸方言地域に分類することができる (Encyclopadia Britannica, Inc., 2004)。
諸方言は中国祖語をもとに、タイ諸語などの南方諸語やモンゴル語、満洲語など北のアルタイ諸語の発音、語彙、文法など特徴を取り込みながら分化したと考えられている。特徴として、声調を持ち、孤立語で、単音節言語であることが挙げられる (Columbia University Press, 2004) が、現代北方語(普通話を含む)は元代以降、かなりの程度アルタイ化したため必ずしも孤立語的、単音節的ではない。 以下の方言は独立した大方言区とすべきとの議論がある。オーストラリア人文アカデミーと中国社会科学院がまとめた『中国言語地図集』はこの立場で編纂されている。
七大方言
北方語(官話方言)
華北東北方言(北京官話 、東北官話、冀魯官話、膠遼官話)- 北京・天津・黒竜江省・吉林省・遼寧省・河北省・河南省・山東省と内蒙古の一部。
西北方言(中原官話、蘭銀官話) - 陝西省・甘粛省・山西省の全域と青海省・寧夏・内蒙古の一部、及び中央アジアのドンガン人居住区。
西南方言(西南官話) - 四川省・雲南省・貴州省、湖北省の大部分、広西省西北部、湖南省西北部。
江淮方言(江淮官話、南京官話) - 安徽省・江蘇省の長江以北の地域(ただし、徐州・蚌埠は除く)、江蘇省の鎮江以西から江西省九江以東にいたるまでの長江南岸地域。
呉語(上海語、蘇州語など。)
粤語(広東語)
?語(南昌語など。客家語と近い。)
湘語(長沙語など)
?語
?北語
?東語
?南語(台湾語)
?中語
?仙語
客家語
十大方言