中国残留日本人
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書類が揃っていれば、確認もろくにしないで自動的に許可していたのでしょう」と語った[16]

残留邦人の親族を偽り不法滞在して10年以上にわたり生活保護を不正受給する事件で、初めに残留邦人を偽り入国していた中国人は、本物の残留邦人の存在が判明したのちに帰国した[17][18][19][20]
偽残留日本人と斡旋ブローカーの問題

無関係の中国人を残留日本人やその親族として大量に入国させるブローカーが存在する。ブローカーは数百万円の手数料を受け取り、孤児の家族に謝礼を渡し、中国で戸籍・パスポートを偽造し、中国人を残留日本人であると偽り入国させる[21]

2005年9月に、中国陝西省に住む残留日本人女性が、同姓同名で同戸籍を持つ中国人がすでに日本に入国しているため、日本への帰国が認められないという件があった。この事例では、95年に残留日本人を騙る中国人女性と親族らが入国、その後女性は帰国したが、親族が生活保護を受給しつづけるなどして2007年に逮捕された[17][18]。この中国人女性の長男が、日本に入国するため中国人である母親に残留日本人を名乗らせ入国させたという[19]。逮捕されたブローカーはこの事例だけで57人の中国人を親族として入国させる計画だったという[20]

残留日本人と血縁関係があるとして来日したが、血縁関係を証明できず、両親が収容されその後国外退去になる事態も起きている。例として、妻が残留日本人の子を名乗って入国した奈良県在住の夫婦が、血縁関係を証明できず、大阪入国管理局が収容し、国外退去処分を言い渡し、両親は中国に強制送還された。日本に残された夫婦の子の2人の姉妹が在留特別許可を求め、2009年10月9日千葉景子法相が1年間の在留特別許可を認めた[22][23]

残留孤児の総計は2700人で、そのうち2476人が、及び残留婦人等の3775人が日本に帰国しているが、残留孤児の中国人の親族約19000人が日本の援助で来日し、更にその数倍の人間が自費帰国したといわれる。1人の孤児に数十人の中国人の「親族」がついてくる事も珍しくはない。

2005年には法務省により、残留孤児・婦人の親族呼び寄せ範囲が養子や継子にも拡大された。その結果、1人の残留婦人について中国人夫の連れ子7人と実子8人をはじめひ孫まで総数91人の「親族」が入国した例がある。このケースでは、夫の連れ子3人の親族が、過去に別の孤児の親族として相次いで偽装入国し強制送還されていた[24]
給付金訴訟

2004年福岡県で、残留孤児32人が、戦後に帰国の機会を奪われ帰国後も国が十分な支援をしなかったとして1人あたり3300万円(総額10億5600万円)の国家賠償を求め訴訟を起こした。孤児らは中国にいたので国民年金に加入しておらず、ほとんどが生活保護を受給していた。福岡の原告32人のうち75%が生活保護だった[25]

同様の訴訟は全国で行われ、2006年に永住帰国した孤児の約8割にあたる2201人が原告となり、全国15地裁、1高裁で係争する集団訴訟となった。原告団代表によると、残留孤児の七割以上が生活保護を受給していた[26]が、原告らは生活保護とは別の賠償を要求した。

2005年大阪地方裁判所は請求を棄却したが、2006年に神戸地方裁判所は、原告65人中61人について国の責任を認め、4億6860万円を支払うよう国に命じた。判決文では「拉致事件被害者への手厚い保護及び支援に比べて差別的である」と判断が示された[27]。2007年1月30日の東京訴訟では裁判所が請求を棄却、2007年3月23日、徳島地方裁判所も原告らの請求を棄却した。

当時の安倍晋三首相は、原告団と面会し、柳澤伯夫厚生労働大臣(当時)に新たな支援策の検討を指示、厚生労働省は基礎年金満額支給と生活保護に代わる特別給付金制度を提案した。

これに対して、生活保護世帯を対象とする給付金が生活保護と同一水準支給とされるため、 原告団は「衣を変えた生活保護に過ぎない」などと反発、全国原告代表団副代表の宇都宮孝良は、「厚労省の案はとうてい受け入れられず、生活保護とは独立した補償制度が必要」と中国語で訴えた[28]。2007年5月残留孤児ら500人は厚労省の特別給付金制度案に抗議し座り込みを行った。厚労省の有識者会議も同日開かれ、委員からは、「生活に制約のある生活保護の形態では抵抗が大きい。できるだけ自由に使える形で検討すべきではないか」などの意見が出た[28]
改正中国残留邦人等支援法による給付制度

2007年11月28日、与野党合意の議員立法により「改正中国残留邦人支援法」が成立。(2007年12月5日公布、2008年1月1日施行(一部を除く))この法律で、中国残留邦人の生活の安定のため、@老齢基礎年金等の満額支給(約66,000円(2007年現在の水準))や、A公的年金制度によっても生活の安定を図ることができない場合には生活支援給付(約80,000円。この他に、医療や介護等、必要に応じて無償で支給。)等を定めた。またこれに伴い、予算措置として、B中国残留邦人が地域社会の中で暮らせるよう、身近な地域での日本語教室や地域との交流事業等も適宜実施されている。

2007年12月、永住帰国者約2200人が行ってきた日本政府への損害賠償請求の集団訴訟は、上記の法成立を受けて、各々訴訟を取り下げた。法成立後も訴訟を継続した2訴訟については、2009年2月、最高裁判所が上告を棄却、すべての訴訟が終了した。
2世・3世のマフィア化「怒羅権」も参照

近年、中国残留孤児の2世、3世が、マフィア化するケースもみられる。中国残留孤児が中心となった中国人マフィアが、東京で同胞の中国人が経営する店にみかじめ料を要求するケースが増えている。中国残留孤児の2世、3世は日本国籍や一般永住者であるため、被害者は報復を恐れ警察に通報しない傾向があるという[29]

みかじめ料を断った人間を暴行したり、無関係の通行人を暴行殺害するなど、中国残留孤児マフィアの勢力は拡大・凶悪化している。拳銃を所持して暴力団とも抗争し、中国残留孤児マフィアの1つ、怒羅権は2002年9月に歌舞伎町住吉会幹部を射殺している。

東京では、過去に福建省上海出身の中国人マフィアが活動していたが、警察の努力により次々と逮捕強制送還され、マフィア組織は縮小・壊滅していた。しかし、中国残留孤児マフィアは逮捕されても強制送還できないケースが多く、勢力を拡大している。現在では、大陸の中国マフィアを日本に手引きしたり、不良日本人や中国人留学生を手下として使う場合もある。
その他の問題

外務省職員が中国残留孤児二世の男性(民間人。国籍は日本)に中華人民共和国での諜報活動を依頼し、中華人民共和国当局に逮捕されるという事件が発生している。また、2005年の衆議院総選挙に於いて、選挙権を有しているのに日本語を解せず選挙権を行使できないのは人権侵害であるとして、中国語での公示を求める訴えを起こした。
関連作品
小説

大地の子山崎豊子

不夜城馳星周、1996年) - 佐藤夏美と呉富春が残留孤児二世。

カルテット大沢在昌) - 登場人物の一人が中国残留孤児三世。

闇に香る嘘下村敦史、2014年)

ノンフィクション

中田慶雄『瑞雪ー大陸にかける橋』青年出版社、1993年。.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 978-4881000731


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