中国武術
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別の説として、1928年に南京中央国術館が開設され、当初は学科として、少林門と武当門が設けられた。武当門の中に武当拳、太極拳、形意拳八卦掌などが含まれていた。しかし後にこの学科の分類は誤解を生じさせるものとして改められた。
北派と南派八極拳

狭義では、北派少林拳と南派少林拳のことを指す。河南省嵩山少林寺とは別に、中国南部の福建省に南少林寺があり、嵩山少林寺を起源とする武術が北派少林拳、あるいは単に少林拳と呼び、南少林寺を起源とする武術を南派少林拳と呼ぶ。清代の反清復明運動(満州民族の王朝である清を倒して、失われた漢民族王朝である明を復興させようと言う秘密結社的活動)においてその拠点が南少林寺であり、その活動の中で発達した武術が南派少林拳であるという伝説がある。南少林寺はあくまで伝説上の存在とする説が有力であり(唐豪『少林拳術秘訣考証』)、近年まで南少林寺の存在自体が架空のものであるとされていたが、南少林寺に関するものと思われる嵩山少林寺で発見された古文書や福建省に南少林寺のものと思われる遺跡が発見されたとして、現代では実際に存在したのではないのかとする説も現れている。南少林寺の真実の解明については今後の研究が待たれる。なお現在、福建省泉州市に存在する「南少林寺」は新たに建立された寺院である。

一般的には北派と南派という名称は、広くは中国北部で主に行われる武術と、南部で主に行われている武術を指す(南北の境界は長江)。南北で技法や理念に大まかに違いがあり、南拳北腿と言われ、南派は拳、即ち手や腕を多く用い、北派は腿、即ち蹴りを多用すると言われている。北部は平原が多いために移動や跳躍や蹴りの多い武術が発達し、南部は川を船で移動することが多く狭い場所・揺れる場所でも練習できる武術が発達したという説があるが真偽は定かではない。確かに中国南部における武術には主に上半身を用いる武術が多く見られ、北部では少林拳、査拳など蹴りが多彩な武術が多いことは事実であるが、南部でも莫家拳の様に蹴りを得意とする武術があり、北部にも形意拳、八極拳翻子拳と言った蹴りの少ない武術があるので、必ずしも正確とは言えない。

長江以南では、広東省や福建省を中心として北部の武術とは異なり上半身を多く使い、下半身は安定させて移動は少なく力強い拳を打つといった南部特有の共通した風格を持つ武術が多く見られるために、現代でもこれらの武術は総称して南派と呼ばれる。ちなみに南拳という流派は存在せず、南派のいくつかの武術の総称である。長江以北の武術には太極拳も少林拳も含まれる。
門派

制定拳(中国が国家として制定した套路)の長拳、太極拳、南拳は、それぞれ、北派の外家拳、内家拳、および南派拳術から技を抜粋し競技スポーツ用に編集したものであると考えられる。

これ以外の古来の主な伝統武術を列挙すると下記のように分類することが出来る。

北派(外家拳)

少林拳査拳翻子拳八極拳蟷螂拳、鷹爪拳(鷹爪翻子拳)など


北派(内家拳)

太極拳八卦掌形意拳


南派武術(さらに広東南拳と福建南拳に分類できる)

洪家拳詠春拳蔡莫拳白鶴拳蔡李佛、白眉拳など

分類の正当性については異論があるがここでは便宜上、上記分類に従った順番で各武術を紹介する。

別の分類の例として、伝統武術の四大流派は、華拳、峨媚拳、武当拳、少林拳とする説があり、多くの門派はこれらから分かれたとされる。
北派(外家拳)
少林拳(しょうりんけん)
少林拳は中国
河南省嵩山に伝わる武術、もしくはその流れを汲む武術一般を含んでいる。その歴史は古いが、義和団事件後に消滅の危機に合う。元々は大きな影響を与えたことから「天下の武術少林より出ず」と謳われている。上海精武体育会では、潭腿を初級で学び、少林五戦拳(大戦、脱戦、短戦、十字戦、合戦)を正科とし、さらに羅漢拳を学んだ。現代の少林拳は、日本ではしばしば「少林寺拳法」と混同される。しかし、現在広く知られている少林寺拳法は古典的嵩山少林寺の拳術を学んだ日本人宗道臣が、日本に帰国した後で新たに創始した独自の技術を持つ日本の武道であり、中国少林寺に伝承される武術とは異なる流派である。理念的にも技法的にも全く違っている。しかし、日本国内においても現代中国少林拳の流れを汲む流派は多数存在する。
査拳(さけん)
査拳は中国山東省冠県がその発祥地と言われている[誰によって?](諸説あり)。古くからイスラム教徒(回族)の間で伝承されており、代表的な長拳類の一拳種である。動作は大きく、腿法を多用し、跳躍を含み、また一路査拳から十路査拳、いくつかのこれらを補う多くの拳術套路、器械套路を有している。現在ではいくつかの派に分かれ内外に広く伝承されている。
翻子拳(ほんしけん)
翻子拳は「双拳の密なること雨の如し、脆快なること一掛鞭の如し」と謳われるように両の拳を雨あられの様に連続して繰り出し、あたかも爆竹が炸裂する様な風格で非常にスピード感あふれる武術である。翻子拳は手技主体であるため、足技主体の戳脚(たくきゃく)と合わせて練習されることも多い。「戳脚翻子拳」として一流派として呼ばれることもある。
八極拳(はっきょくけん)
八極拳は中国河北省がその発祥地といわれ、古くからイスラム教徒(回族)の間で伝承されてきた。後に漢族に伝わり、それぞれ独自の発展を遂げている。その特徴は「崩」「撼」「突」「撃」に代表される重厚な風格を有しており、動作は比較的簡単に構成されている。八極拳は接近戦を得意としているため、ロングレンジでの攻防を得意とする劈掛拳と兼習されることも多い。孟村系、南京中央国術館系、西北系、東北系、武壇系など多くの派を生みだした。
蟷螂拳(とうろうけん)
蟷螂拳(螳螂拳)は王朗が獲物を捕るカマキリの動作に着想を得て創始したと伝えられる武術である。清朝の頃より中国山東省で伝えられ、現在では七星、梅花、太極、六合、八歩など多くの派に分かれ中国各地に分布している。武術としては「補漏」(すきあらば打つ、の意)を基本とする。手法が複雑で連関性に富み、「上下連貫」と呼ばれる手法と腿法のコンビネーションが巧みで、スピード感あふれる独特の風格を有している。伝承される套路や技法が非常に多いため「螳螂三百六十手」と称され、どんな技でも螳螂拳を探せば似たものが見つかると言われる[誰によって?]。
北派(内家拳)八卦掌

太極拳八卦掌形意拳などがある。
太極拳(たいきょくけん)
太極拳は、河南省陳家溝の陳一族に伝わる武術を元に広まり、現在では多くの門派がある。最も有名な五つの門派を五大太極拳ということがあり、それぞれ創始者の名を取って陳式、楊式、呉式、武式、孫式と呼ばれる。楊式は愛好者が最も多く、緩やかな動作を主とする。陳式は激しい動きを多く含み、少林拳に通じる技法も多い。他の太極門派に伝承されていない技法が数多く存在しているため、陳式を太極拳の源流とする説があるが、反論もある。いずれの門派も、静かな呼吸と緩やかな動きの架式(形)による修練方法が最大の特徴で、その動きが健康増進に効果が高いとされ、現在では武術としてよりも健康法として世界に広まっているが、有段者レベルだと推手と呼ばれる実戦的組み手練習も行われる。健康法として広く行われている簡化二十四式太極拳は、楊式太極拳に呉式のよりシンプルな動きを取り入れた制定拳と呼ばれる太極拳で、二十四の複合技(式)からなっている。楊無敵と言われた楊家太極拳の創始者楊露禅の太極拳は、現在において一〇八式や八十五式の套路と共に武当派などに、武道性(武当派ではタオの思想があるので「武道」と呼ぶ)を失わずに伝承されている[3]
八卦掌(はっけしょう)
八卦掌は、その名の如く殆ど拳を使わずに開いた掌(てのひら)を用いることと、また相手を中心とした円周に沿って滑らかな動作で移動する、走圏と呼ばれる歩法に特徴がある。非常に難度の高い武術であるとされる。代表的な套路には、老八掌、八大掌、連環掌、龍形掌、六十四掌などがある。
形意拳(けいいけん)
形意拳は太極拳や八卦掌と同じく、 北派、内家拳に分類される。陰陽五行説を技法として表現する五行拳(金行劈拳、木行?拳、水行鑚拳、火行炮拳、土行横拳)と呼ばれる五種の基本拳と、 その応用で十二形拳(龍形拳、虎形拳、猴形拳、馬形拳、鶏形拳、鷂形拳、燕形拳、?形拳、鷹形拳、熊形拳、蛇形拳、?形拳)と呼ばれる、十二種の動物の意を表した象形拳を基本としている。代表的な套路には、五行連環拳・雑式捶・四把捶・八字功などがあり、対練には五花砲対練・五行砲対練・安身砲対練(十二形大用対拳)などがある。また、三体式(三才式、三体勢、開勢)という姿勢を基本架式として用いること、歩法には主に跟歩を用いることが特徴的である。かつては河南省に伝わる近親門派である心意六合拳も河南派形意拳と称されたが、現代では混同を避ける為、山西省、河北省伝来のもののみを形意拳と分類している。
南派武術

長江以南で広く行われる武術の総称であるが、活発な地域として福建省、広東省があり、それぞれに特徴がある。広東系南派少林拳には洪家拳詠春拳蔡李佛などが、福建系南派少林拳には白鶴拳などがそれぞれ含まれる。広東系南派の詠春拳、白眉拳は短橋狭馬といわれる。橋は腕の使い方を示し、馬は歩形を表す。即ち狭い歩幅で立ち、腕を短く使うことが特徴である。南拳の元になったと言われる洪家拳は長橋大馬と言われ、歩幅を広く取り腕を長く使う。ブルース・リー
洪家拳(こうかけん)
洪家拳は、南派の代表的門派であり、南拳のイメージは即ち洪家拳のイメージにとなっている。歩幅を広く取り強く拳を振るう広東南派の一派といわれているが、実は南少林寺、至善禅師伝の長橋大馬の技術と、同じく南少林寺、五枚尼姑伝の短橋狭馬両方の技法が完備されている。古伝の洪家拳(老洪拳)から長短の技術が完備され、現在の形にまとめあげたのが有名な黄飛鴻であるが、彼をモデルとした映画が何本も撮影されており、特に、劉家輝主演で映画化された「ワンス・アポン・ア・タイム 英雄少林拳 武館激闘」が有名。
詠春拳(えいしゅんけん)
詠春拳は、広東系短橋狭馬の代表格で、二字拑羊馬と呼ばれる狭いスタンスで立ち、スピーディーな手技を用いる。ブルース・リーが学んだ一派として有名である。詠春拳はブルース・リーが初めて学んだ武術として紹介されることが多いが、正確にはブルース・リーが初めて学んだ武術は父から学んだ太極拳である。伝説では南少林寺の五枚尼姑伝の拳技とされ、香港の葉問派詠春拳が最も有名であるが、他にいくつかの系統も確認されている。技術的には洪家拳と基本功で共通点が多く、両拳が技術的に交流していた事が窺い知れる。代表的な拳套(型)として小念頭、尋橋、標指があり、詠春拳にこの三套路を定めたのが詠春拳王とよばれた梁贊(1826?1901)である。木人?(もくじんとう、木の人形)を使用した訓練でも有名である。技術的特徴は防御に重きが置かれ、詠春拳三大手と呼ばれる膀手・攤手・伏手とも全て防御技である。他に六點半棍と呼ばれる棍術と八斬刀という刀術が伝承されている。
蔡李佛(さいりぶつ)
蔡李佛の発祥は今から約170年前で、鴻勝舘蔡李佛、北勝舘蔡李佛、雄勝舘蔡李佛、洪聖舘蔡李佛の4派が有名である。比較的新しい拳術。蔡李佛百套といわれ、これは徒手や武器、対打などの型が実際に100種あるという意味ではなく、非常に多いという意味である。実際には100種を優に超える。徒手の型は”四十九套”と云われているが、その全てを教えているところはたぶん無く、系統にもよるが約10?20種ほどである。攻撃に重点が置かれ、基本は掛、哨、挿と呼ばれる代表的な3種類の攻撃技である。
白鶴拳(はっかくけん)
白鶴拳は、短橋狭馬を特徴する一派で、伝説では七娘が狐と鶴の闘う様子を見て、鶴の動きを取り入れたと言われる。狭いスタンス、短く早く使う手法は詠春拳に共通するが、技術的には根本的に別派である。[4]鶴の翼の動きから取り入れられた五形手(木形手、火形手、土形手、金形手、水形手)に特徴がある。


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