中国大陸
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法令上の用例としては、1989年に大陸工作会報が公布した「台湾地区と大陸地区の民衆の間接通話開放を実施する方法」[8]において「大陸地区」が事実上「中華人民共和国の実効支配地域」を意味する語として用いられ、1991年中華民国憲法増修条文が公布されると「大陸地区」が憲法上の用語となった。この時点では「大陸地区」の範囲が法令上は明文化されていなかった。

1992年に制定された「台湾地区と大陸地区の人民関係条例」[2]第2条第2項で「大陸地区」は「台湾地区以外の中華民国の領土」であり、かつ同条例の施行細則第三条[9]で「本条第二条第二項の執行区域は、中国共産党の支配下にある地区を指す[注 4]」と法的に規定された。

範囲
中国中華人民共和国における中国大陸
上段:アジア大陸部(中国大陸)と海南島
中段:中国大陸と香港澳門の位置関係
下段:中国大陸と台澎金馬(台湾地区)の位置関係

中華人民共和国(中国)における「中国大陸」ないし「祖国大陸」は、中国政府領有権を主張している領域の内から特定の地域を除外した範囲を指す(領有権を主張する範囲については、中華人民共和国#地理及び中華人民共和国#領土問題を参照のこと)。ただし除外される範囲は、中国政府の用例を見ると1980年代以前と1990年代以降とで差異が見られるため注意が必要である。
1980年代以前の用例

1980年代以前の中国政府による用例では、1. 中華民国実効支配を続ける台湾地区(自由地区)、及び2. 民間の定住者がいない南海諸島以外で中国政府が領有権を主張する領域を「中国大陸」としていた。

具体的用例としては、1958年9月に全国人民代表大会常務委員会が承認した『中華人民共和国政府の領海に関する声明』の第一条[10]において、領海を12海里とする「規定が及ぶ範囲」を「中華人民共和国の一切の領土」とし、具体的範囲として「中国大陸及びその沿岸島嶼」、「台湾及びその周囲各島、澎湖列島東沙群島西沙群島中沙群島南沙群島」と記載している。また、1987年10月に中華人民共和国国務院が公表した『探親旅行[注 5]で祖国大陸に来た台湾同胞の受け入れに関する中華人民共和国国務院弁公庁の通知』[11]において、中華人民共和国が実効支配している地域を「祖国大陸」または「大陸」、中華民国が実効支配している地域を「台湾」と記載している[注 6]
1990年代以降の用例

1990年代以降の中国政府による用例では、1. 主権が外国(植民地)から中国に移管された香港及びマカオ、及び2. 中華民国が実効支配を続ける台湾以外で中国政府が領有権を主張する領域を「中国大陸」としている。

この用法は、マカオ返還直前の1999年10月に採択された『《中華人民共和国マカオ特別行政区基本法》第百四十五条を根拠とする従前からマカオにある法の処理に関する全国人民代表大会常務委員会の決定』の附件四-6[12]でも踏襲された上、香港では『釈義及び通則条例』第2A(3)条[13]、マカオでは『回帰法』附件四-六[14]において法的に明文化されている。

なお、中国政府が主権移管後の香港及びマカオを中国大陸と別個に扱っているのは、一国二制度により特別行政区とされた両地域が植民統治終了後も中国のその他地域とは異なる政治・法律体系を引き続き採っており、中央政府の直接支配が及んでいないからである。実際、同じ国内でありながら、香港・マカオと中国大陸とでは相互に出入国管理にあたる出入境管理を行っている(詳細は香港の査証政策及びマカオの査証政策を参照のこと)。
台湾『第一屆國民大會第六次會議實?』付属の『中華民國全圖』(1979年5月)
1978年中華民国総統選挙の実施に際し、名目上国民大会が代表している国家の範囲を示している。中華民国の行政機関である内政部[15]外交部[16][17][18]の資料に基づく実務上の定義
  台湾地区  大陸地区

中華民国(台湾)における「中国大陸」ないし「大陸地区」は、教育部編纂の国語標準中国語辞典である『教育部重編國語辭典修訂本』において「台湾地区[注 7]以外の中華民国の領土」[19]と説明されている。ただし1949年中央政府遷台[注 8]から2006年までの期間、該当する範囲は行政府の公告資料と法令及び司法府・行政府が用いる実務上の定義との間で整合性が取れていなかった。
行政院の公告資料

台湾地区以外の中華民国の領土は、2006年まで行政院新聞局編纂の『中華民國年鑑』で公告されていた。

2006年刊行の『中華民國九十四年[注 9]年鑑』[4]では、中華民国の国土(「土地」)を「台湾地区」(第一篇第二章第一節)[20]と「大陸地区」(第一篇第二章第二節)[21]とに分けて記載し、「大陸地区」の項にて中国大陸の範囲を解説している(詳細は中華民国#地理及び中華民国#行政区分、または中華民国の領域(中国語版)を参照のこと)。

具体的な範囲は@1727年[注 10]から1941年までの間に清朝または中華民国が諸外国と条約で確定させた国境線内のアジア大陸地域、及びA南海諸島のうち中央政府遷台後に中華民国が実効支配していない島々であり、中華人民共和国実効支配する領域の他に、モンゴル[注 11]パミール高原蔵南地区、及び江心坡等の中華人民共和国以外の国が実効支配する領域がある。

大陸地区の領域は、国民大会立法院選挙区、及び監察院公署の区割りに反映され、第一回国民大会代表選挙(中国語版)と第一回監察委員選挙(中国語版)(1947年)、及び第一回中華民国立法委員選挙(中国語版)(1948年)は大陸地区と台湾地区の双方で実施された。大陸地区も内包した中華民国の領域は中央政府遷台以降も万年国会が存在している間は名目上使用され続けてきたが、1990年代に組織変革で万年国会が消滅すると『中華民國年鑑』等の政府公告資料でのみ確認できる存在となった。

2006年11月1日発行の『中華民國年鑑(民国94年・2005年版)』(行政院新聞局編)を最後に、2021年3月現在に至るまで中華民国政府は政府刊行物で大陸地区の領域に関する情報を公告していない。


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