中台関係
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2012年10月には、総統選で馬英九の対立候補だった謝長廷が中国共産党とのパイプを民進党にも築きたいと表明[9]して中国を訪問、王毅主任や戴秉国国務委員と相次いで会談するなど、中台政治交流も徐々にレベルを上げて拡大した。
「三通」解禁と“中台FTA”締結

2008年12月には中台間の定期直航便が就航し、中国大陸住民の台湾観光や三通が解禁された。その後も、長年正統性を争ってきた北京故宮博物院と台湾国立故宮博物院の共同展示会、中国資本の台湾投資解禁、金融協力、メディア交流、軍事フォーラム、共産党地方幹部の訪台団派遣、中国の司法試験の台湾人受験者への開放など、各方面で中台交流が急速に進んだ。2009年5月には、中台双方に初めて準政府機関の常駐事務所として観光事務所が設置された[10]

中台関係は急速に緊密化し、いまや台湾の輸出額の4割が中国を占め、中国進出台湾企業は10万社、中国在住台湾人は上海アモイ広州など大都市を中心に100万人(台湾の全人口は約2300万人)、年間往来者数は年間500万人を超えるといわれるまでになった。台湾の国際結婚の配偶者も40万人のうち26万人が中国大陸人である。政治的な敵対関係とは裏腹に民間での結び付きの強さがうかがえる。

さらに、2010年6月29日、中国・重慶市における海基会・海協会ルートの中台トップ会談で、両岸経済協力枠組協議 (ECFA) を締結した。名称は分かりにくいが、中国側が539品目、台湾側が267品目(貿易額で合計約167億ドル)について2013年1月までにゼロ関税とするもので、実質的な中台自由貿易協定 (FTA) である。協定は台湾側にかなり有利な内容となっており、台湾は中台経済一体化が主権の危機をもたらすとの民進党などの批判をかわし、中国は「台湾に譲歩し過ぎ」との国内の批判を押え込んで締結にこぎ着けた。
中台軍事バランスの変化

中国と台湾の軍事バランスは、長年、アメリカの台湾関係法による武器供与もあって台湾側が圧倒的に有利とされてきたが、中国・人民解放軍の急速な近代化により台湾の優位性が後退、近い将来中国有利に逆転するとの懸念が出ている。台湾海峡をはさんだ軍拡競争に歯止めがかかる兆しはない。

中国は1990年代以降、台湾を射程に収めたミサイルを毎年50?100基ペースで増強してきたが、馬英九政権発足後は毎年数百基単位で増加させ、2010年末には2000基に達すると予測されている。さらに2010年内に台湾攻撃用の大型軍艦51隻、潜水艦43隻を配備するなど海軍力も増強し、空軍も台湾から約1100キロメートル以内の地域に戦闘機1900機を配備しているという[11]

他方、台湾は陳水扁政権時代、立法院で少数与党であったことやアメリカ・ジョージ・W・ブッシュ政権と関係が悪化したことなどから、アメリカの武器供与が滞り、中台軍事バランスの変化に拍車をかけていたが、アメリカが馬英九政権発足後の2008年10月、地対空ミサイル・パトリオット (PAC3)、攻撃型ヘリコプター、対艦ミサイルなど総額約65億ドル相当の武器供与を決定。さらにバラク・オバマ政権も2010年1月、総額64億ドル相当の武器供与を決定したが、猛反発する中国に配慮して新型戦闘機F16や潜水艦の供与が見送られた[12]
「胡六点」と台湾宥和政策

中国は中台経済交流の進展を受け、「中台統一」を見据えた政治対話を実現すべく、台湾懐柔策を矢継ぎ早に出した。まず、胡錦濤党総書記は2008年12月31日、「両岸は国家が統一されていない特殊な状況」と認め、「両岸の軍事問題についての相互信頼システムの確立」を呼び掛ける談話を発表した(胡六点)。

2009年5月、中国は、台湾のWHO総会 (WHA) オブザーバー参加を容認する方針に転換し、上海万博に台湾を正式招待するなど(台湾の万博招待は40年ぶり)、台湾側の歓心を買う動きを強めた。この頃、温家宝首相が公の場で「台湾に這ってでも行きたい」と発言したり、福建省で開催された中台政治関係者の対話「海峡フォーラム」の席で、王毅国務院台湾事務弁公室主任が中台交流モデル地区構想を披露したことも波紋を呼んだ。2009年8月の台湾南部の台風水害では、約50億台湾ドルの義援金も送った。

ただ、2011年5月、WHOが加盟国に「中国台湾省」の名称使用を求める内部通達を出していたことが発覚し、馬総統が「中共による圧力は明らか」と激怒し強く抗議した(WHO事務局長は香港人のマーガレット・チャン)。
チベット・ウイグル問題をめぐる摩擦

中台融和が急速に進む中、中国にとって最も敏感な問題であるチベット、ウイグル問題が新たな火種に浮上した。

2008年12月4日ダライ・ラマ14世の訪台を中国への配慮から拒否した馬英九中華民国総統に対し、王金平立法院長は「(ダライ ・ラマ14世の訪台を)宗教的な角度から見れば、台湾にとってよい事であると信じる。ダライ・ラマ14世は人々から信頼、尊敬される宗教指導者であることからも、台湾はこの問題を再考すべきだ」とダライ・ラマ14世の訪台の再検討を要望し、民主進歩党の邱議瑩(中国語版)立法委員は「馬英九が政権を握っている間はずっと、ダライ・ラマ14世訪台は『タイミング的に悪い』。なぜなら馬さんは中国の台湾区長に過ぎないからだ」などと馬英九中華民国総統を揶揄した[13]

2009年8月30日、ダライ・ラマ14世は、台風第8号の被災者を慰問するために訪台した[14]。その際、「(訪台は)極めて非政治的なもの」として、台湾の独立問題は「われわれは台湾の分離を求めているわけではないが、台湾の運命は2000万人以上の住民の手に掛かっている」「台湾は民主主義を享受しており、わたし自身も民主主義の推進に力を注ぎたい」と語った[14]。これに対して中国は断固反対の声明を繰り返し、南京市共産党トップや中国人民銀行副総裁の訪台延期などで対抗措置をとった。

2009年9月には高雄市などでラビア・カーディル世界ウイグル会議議長のドキュメンタリー映画が上映された。中国側は高雄市観光中止を指示し、ホテルの大量キャンセルで対抗した。ただ、その後、台湾政府は中台関係悪化を懸念し、ラビア・カーディル議長の台湾入国を拒否し続けている。

ダライ・ラマ14世はこれまで1997年2001年2009年の3度訪台しており、「大変楽しかった台湾の旅を忘れたことはない」と4度目の訪問に意欲を示しており[15]2019年8月に台湾の客家テレビ(中国語版)の取材に応じ、台湾に対する中国からの圧力が強まっていることを「くじけてはいけない。情熱を持ち続けなさい」「民主主義自由をもって最終的に全体主義に勝つことができる」などと述べた[15]

台湾の国会には、2016年に発足したチベット支援の議員連盟「台湾国会チベット連線」があり、議連の会長をフレディ・リムが務めており、その他にも民主進歩党中国国民党台湾基進時代力量の議員が多数加わっている[16]。「台湾国会チベット連線」は、ダライ・ラマ14世の訪台を目指しており、2020年7月8日の「台湾国会チベット連線」の記者会見で、民主進歩党の洪申翰(中国語版)立法委員は、近年、中国共産党チベット香港新疆への弾圧を強めており、台湾は圧迫される民族の側に立つと述べ、チベットが一日も早く自由を取り戻すことを願うと述べ、記者会見に招かれたチベット亡命政府の駐台代表は、威圧や脅しをかける中国に一丸となって立ち向かわなければならないと訴えた[16]

2020年7月6日ダライ・ラマ14世は85歳の誕生日を迎えるにあたり、台湾の支持者に宛てたビデオメッセージで「政治的状況の変化に伴い、再び台湾を訪問することができるかもしれない。何が起ころうとも、私の心はあなた方と共にある」と台湾訪問への意欲を示し、これに対して外交部は、ダライ・ラマ14世が台湾を訪問する場合は歓迎すると述べた[17]

2021年7月6日蔡英文中華民国総統は、ダライ・ラマ14世の86歳の誕生日にあたり、SNSを通じて誕生日を祝し「(新型コロナウイルス感染症の)大流行が続く中、互いに助け合うため活動することがなぜ重要かを教えてくれたことに感謝したい」と伝えた[18]


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