中古日本語
[Wikipedia|▼Menu]
判定詞(断定の助動詞)の「ナリ」は、低く終わる単語につくときは「ナ」が高い低起の動詞として活用し、高く終わる単語につくときはナは低いまま低起として活用する。また、完了の助動詞「ヌ」は、高起の単語の次では低起として活用し、低起の単語の次では高起として活用する。完了の助動詞「リ」は歴史的に「アリ」がついたものに由来するため、基底にある連用形末の下げ核によって語尾の下がったものとして記録される場合があるが、音調上の振る舞いは低起の助動詞あるいは補助動詞である。
その他の接辞

一覧にする。

接続助動詞活用の種類・決まった高さ備考
連用形きL
けり高起
けむ高起
つ高起
つつHH
てH
たり低起
な?そ○?L「ナ」の高さは語声調に依存する。
ながらHHH
終止形らし低起
らむ低起
なり高起
なL禁止
ともLL
已然形ばL
どもLL
どL

助詞

特に名詞につく助詞や接辞のアクセントを一覧にする。[4]

語アクセント備考
ごとLH
ともHH
がH
をH
にH
でH古くは「にて」
はH
とH並列
かH並列
かH疑問
えH終助詞
もF
へF
とL ~ H引用
やH並列
からHH
ほどHL
こそHL
さへHH
よりFL
なんどLHL
ばかりLHL

文法
動詞

中古日本語は上代日本語から8つのすべての活用を引き継いだ上、新たに下一段活用が加わった。
動詞の活用

棒線部は語幹である。空欄部分は該当が無い場合。二重になっているものは複数または代替のもの。ひらがなは伝統的な活用表である。特に断らない限りカ行で示した。

動詞の分類未然形連用形終止形連体形已然形命令形
四段活用?か (-a)?き (-i)?く (-u)-く (-u)?け (-e)?け (-e)
上一段活用?き (-)?き (-)?きる (-ru)?きる (-ru)?きれ (-re)?きよ (-[yo])
上二段活用?き (-i)?き (-i)?く (-u)?くる (-uru)?くれ (-ure)?きよ (-i[yo])
下一段活用?け (-)?け (-)?ける (-ru)?ける (-ru)?けれ (-re)?けよ (-[yo])
下二段活用?け (-e)?け (-e)?く (-u)?くる (-uru)?くれ (-ure)?けよ (-e[yo])
カ行変格活用?こ (-o)?き (-i)?く (-u)?くる (-uru)?くれ (-ure)?こ (-o)
サ行変格活用?せ (-e)?し (-i)?す (-u)?する (-uru)?すれ (-ure)?せよ (-e[yo])
ナ行変格活用?な (-a)?に (-i)?ぬ (-u)?ぬる (-uru)?ぬれ (-ure)?ね (-e)
ラ行変格活用?ら (-a)?り (-i)?り (-i)?る (-u)?れ (-e)?れ (-e)



形容詞の活用

形容詞の分類未然形連用形終止形連体形已然形命令形
ク活用 ?く (-ku)?し (-si)?き (-ki)?けれ (-kere) 
?から (-kara)?かり (-kari) ?かる (-karu) ?かれ (-kare)
シク活用 ?しく (-siku)?し (-si)?しき (-siki)?しけれ (-sikere) 
?しから (-sikara)?しかり (-sikari) ?しかる (-sikaru) ?しかれ (-sikare)

形容動詞の活用

形容動詞の分類未然形連用形終止形連体形已然形命令形
タリ活用?たら (-tara)?たり (-tari)?たり (-tari)?たる (-taru)?たれ (-tare)-たれ (-tare)
 -と (-to)    
ナリ活用?なら (-nara)?なり (-nari)?なり (-nari)?なる (-naru)?なれ (-nare)-なれ (-nare)
 ?に (-ni)    

付属語「助詞#文語文法」および「助動詞 (国文法)#文語」を参照
語法

この節の加筆が望まれています。

係り結びが確立するようになる。また、敬語が発達した姿を見せるようになる。

音便が用いられるようになり、特に院政期の散文では動詞・形容詞における現代語と同様の音便が一般的になる(和歌では用いられない)。例えばk音の脱落による「高き」→「高い」(イ音便)、「高く」→「高う」(ウ音便)、「書きて」→「書いて」(イ音便)など。
文字・書記形式

中古日本語の文字体系は3通りある。まず漢字であり、後に表音文字であるひらがなカタカナが生み出された。漢字を表音的に用いたものは万葉仮名と呼ばれる。平仮名は万葉仮名の草書体である草仮名から、片仮名は漢字の一部分を省略した形から採られている。

書記形式としては、初め漢文を日本的に変形した変体漢文がある。古記録によく用いられるので「記録体」とも呼ばれる。変体漢文には多少の万葉仮名を交じえることがある。次に、ひらがなに多少の漢字を交えた「平仮名漢字交じり文」があり、和歌や物語の多くはこの書記形式で書かれた。カタカナは漢文訓読の記号として用いられたり、或いは私的な文書や落書きにおいて「片仮名文」として用いられることもあった。「漢字片仮名交じり文」としては9世紀の『東大寺諷誦文稿』が早いものであるが、文学作品にも盛んに用いられるようになるのは12世紀の院政期以降である。
語彙・文体

日本語の語彙には、その出自によって和語漢語の違いがあるが、和語の中にも用いる文章によって偏りが見られる。「和文特有語」「漢文訓読特有語」、それから記録体(変体漢文)特有の語彙も指摘されている。例えば和文で「とく(疾く)」と言うところで漢文訓読では「スミヤカニ」と言い、記録体では「早」(ハヤク)と言う。このように「和文体」「漢文訓読文体」「記録体」という3つの文体によって用いる語彙が少しずつ異なり、用途によって文章を書き分けていた。
脚注[脚注の使い方]^ ?no, Susumu, 1919-2008.; 大野晋, 1919-2008. (2000). Nihongo no keisei. T?ky?: Iwanami Shoten. .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 4-00-001758-6. OCLC 45342979. https://www.worldcat.org/oclc/45342979 
^ 屋名池誠 (2004), 「平安時代京都方言のアクセント活用」,『音声研究』。
^ バによる仮定形はのぞく
^ 木部暢子(1983)「付属語のアクセントについて」,『国語学』第134集,pp.23?42.

参考文献

山口明穂、坂梨隆三、鈴木英夫、月本雅幸『《日本語の歴史》』東京大学出版会、1997年、242頁頁。
ISBN 4-13-082004-4。 

近藤泰弘、月本雅幸、杉浦克己『《日本語の歴史》』放送大学教育振興会、2005年、219頁頁。ISBN 4-595-30547-8。 

佐藤武義『《概説日本語の歴史》』朝倉書店、1995年、251頁頁。ISBN 4-254-51019-5。 

大野晋『《日本語の形成》』岩波書店、2000年、767頁頁。ISBN 4-00-001758-6。 

Martin, Samuel E. (1987年) (英語). 《The Japanese Language Through Time》. Yale University. ISBN 0-300-03729-5 

Shibatani, Masayoshi (1990年) (英語). 《The languages of Japan》. Cambridge University Press. pp. 427頁. ISBN 0-521-36918-5 

Katsuki-Pestemer, Noriko (2009年) (英語). 《A Grammar of Classical Japanese》. Munchen: LINCOM. ISBN 978-3929075-687 

Frellesvig, Bjarke (1995年) (英語). 《A Case Study in Diachronic Phonology: The Japanese Onbin Sound Changes》. Aarhus University Press. pp. 160頁. ISBN 87-7288-489-4 

関連項目

日本の中古文学史

中古 (時代区分)










日本語


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:44 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef