中世朝鮮語
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語幹の形態が非自動的に交替する体言は(1)2音節、(2)アクセントがともに平声、(3)語幹末音が?/?(一部に母音が変化して?/?となっているものもある)であるという特徴を持つ。この種の体言では、語尾が後接すると語幹末母音?/?が脱落し、語幹末に子音?、?、?が現れる。

?/???? mo/mu?mg交替:?? namo(木)―?? namgi(木が)

??/????? z@/zy?z'交替:??? 'az@(弟)―??? 'az'i(弟が)

??/???? r@/ry?r'交替:???? g@r@(粉)―???? g@r'i(粉が)

??/???? r@/ry?rr交替、????h@r@(一日)―???? h@rri(一日が)

曲用語尾

曲用語尾について特徴的なものを以下に挙げる。

語尾は母音調和による異形態を持ちうる。例:-???-?-?- -r@r?-ryr(…を)、-???-?-?- -n@n?-nyn(…は)

主格は-? -iのみである。? -gaは16世紀後半から17世紀にかけて現れる。

属格は現代朝鮮語の祖形である-?-?-??-? -@i?-yi?-i以外に-? -sがある。-?-?-??-? -@i?-yi?-iは主に有情物に付いて非尊敬を表し、-? -sは主に無情物に付くか有情物に付いて尊敬を表した。

処格は現代朝鮮語の祖形である-??-??-? -ai?-ei?-ieiの他に、属格と同形の-?-?-? -@i?-yiがある。ただし-?-?-? -@i?-yiは一部の単語に限られており生産的ではない。

共同格-??-? -goa?-oaは現代朝鮮語とは異なり、列挙される最後の単語にも付きえた。なお、?語幹体言には-? -'oaが後接するが、これは-? -goaの頭音? gが
弱化し[?]となったものであると推測される。

尊敬の呼格-? -haがある。

活用
用言語幹の交替

中期朝鮮語の活用体系は現代朝鮮語と基本的に同一である。違いは語根と語尾の間に挿入される媒介母音-?-が、中期朝鮮語では母音調和に従い-@-/-y-という異形態を取るくらいである。しかしながら、現代朝鮮語には見られない語幹の非自動的交替(変則活用)が見られる。自動的交替のうち、現代朝鮮語と異なる点は以下の通りである。

現代朝鮮語において非自動的交替である?変則は、中期朝鮮語においては? b?? vという自動的交替である。

現代朝鮮語において非自動的交替である?変則は、中期朝鮮語においては? s?? zという自動的交替である。

?語幹は尊敬接尾辞-?- -si-が後接するときに、語幹末の?が脱落しない。一方、? dで始まる語尾が後接するときに、語幹末の?が脱落する。なお、?語幹に? gで始まる語尾が後接するときに、語尾の頭音? gが脱落する。これは語尾の頭音? gが弱化し[?]となったものであると推測される。

非自動的交替は以下のようなものがある。

基本形において語幹が(1)2音節、(2)アクセントがともに平声、(3)語幹末音が?/?である用言は-?-/--?- -a-/-e-および-?-/-?- -o-/-u-が後接すると語幹末母音?/?が脱落し、語幹末に子音?、?、?が現れる。例:???- dar@-(異なる)―?? dar'a、??- simy-(植える)―?? simge、???- mor@-(知らない)―?? morra

??- h@-(する)は-?- -a-および-?- -o-が後接するとき??- h@i-で現れる。また、-?- -o-が後接した??? h@'io-は?- ho-という形でも現れる。例:???h@go(して)―???h@'ia(し)―?????~???h@'iod@i?hod@i(するが)。

?-'is-(ある・いる)は、-?-/-?--@-/-y-が後接する形において-??--'isi-で現れる(このとき-?--@-/-?--y-は後接しない)。また、-?--e-および-?-/-?-後接するときも同様に??'isi-で現れる。例:??-???-??-????'isgo(あって)―'isimien(あれば)―'isie(あり)―'isiod@i(あるが)。

指定詞-?-'i-および??-'ani-は、-?--a-および--?--o-後接するときに-?--'ir-および??-'anir-で現れる。例:-??? - ??? - ?????-'animien(…でなければ)―'anira(…でなく)―'anirod@i(…でないが)。

d?rの交替(?変則)がある。これは現代朝鮮語と同様である。

また、語幹に後接する語尾の音韻変化に以下のようなものがある。

指定詞-?-'i-および??-'ani-に?dで始まる語尾が後接するときに、語尾の頭音?dが?rに交替する。例:-??'ira(<*-??'ida)(…である)。

指定詞-?-'i-および??-'ani-に?gで始まる語尾が後接するときに、語尾の頭音?gが脱落する(gが弱化して[?]となったものと推測される)。また、iで終わる母音語幹用言の一部においても同様の現象が見られる。例:-??'i'o(<*??-'igo)(…であり)。

時制・相

中期朝鮮語は現代朝鮮語とは異なり、時制(テンス)・(アスペクト)(およびムード)が未分化であり、渾然一体とした体系をなしている。これらは時相接尾辞(韓国では先語末語尾、北朝鮮では?と称する)によって表される。なお、時相接尾辞は後述する敬語の諸接尾辞や語尾などと組み合わさり、終止形において複雑な形を作る。

-n@-:動作をアクチュアルに描写する際に用いられる。一般に動詞とよく結合し、形容詞とは結合しない。現代朝鮮語の終止形-??/-??、連体形-?などに現れる-?-、-?-といった要素は、この接尾辞が化石化したものである。

-de-:回想的に過去を描写する際に用いられる。現代朝鮮語の回想法に含まれる-?-は、この接尾辞が化石化したものである。

-ge-:河野六郎は「強勢を表す接尾辞」としているが、いかなる機能を担っていたのかいまだ明らかでない。概して過去に関する事がらを表すようである。

-a-/-e-:母音調和による異形態を持つ。接続形(いわゆる「連用形」)としても用いられる形であるが、語尾がさらに後接して接尾辞として用いられる場合には完了を表す。

-O-:時相接尾辞が何も付かない形は、テンス・アスペクト的に中立的な用法であり、アオリスト形と称されることもある。概して動詞の場合には過去を表し、形容詞の場合は現在を表す。

また、完了を表すものとして、接続形-a/-eに動詞'is-が続いた-a/-e 'is-という形がある。この形は融合して-ais-/-eis-としても現れ、さらにiが脱落した-as-/-es-という形でも現れる。「…している」といった意味を表すが、この形は現代朝鮮語の過去形-?-/-?-につながる形である。この変遷は日本語の過去形「タ」が「テアリ」から発達したのと同様である。
敬語

中期朝鮮語の敬語には尊敬・謙譲・丁寧の3種類がある。

尊敬は現代朝鮮語と同様に接尾辞-si-によって表される。

謙譲は接尾辞-s@v-によって表される。この接尾辞は
異形態を持ち、母音語幹・?語幹用言に付く場合には-z@v-、?語幹・?語幹用言に付く場合には-j@v-で現れる。この接尾辞は動詞-s@rv-(申す)から転じて作られたものと推測される。現代朝鮮語の謙譲接尾辞-??-の直接の祖形である。しかしながら、この接尾辞は現代朝鮮語に至る過程で徐々に謙譲の意味を失い、終止形の一部を形成することになる。現代朝鮮語の-???、-???などに現れる-?-、-?-といった要素は、その接尾辞が化石化したものである。

丁寧は接尾辞-qi-によって表される。この接尾辞は終止形にのみ表れる。-qi-は現代朝鮮語に至る過程で謙譲接尾辞や時相接尾辞と融合し、終止形の一部を形成することになる。例:-s@bn@qida(謙譲-s@v-+現在-n@-+丁寧-qi-+語尾-da)> -s@bn@ida > -sybnida ???。

疑問

現代朝鮮語の疑問形は-???、-??、-??など、形態の末音がaであるが、中期朝鮮語では末音がaであるものとoであるものとがあり、両者は文法的な役割を異としていた。すなわち、a系の疑問形は判断疑問文に用いられ、o系の疑問形は疑問詞疑問文に用いられた。例:h@sin@nga(なさるのか)―'esdiei h@sin@ngo(なぜなさるのか)。a系疑問形とo系疑問形の区別は、現代朝鮮語の東南方言に残っている。
いわゆる「意図法」

用言語幹に-o-/-u-が後接した形は、韓国でしばしば「意図法」と称される。主に終止形において1人称主語とともに用いられ、話し手の主観的な意図などを表す形とされる。ただし、連体形においては人称との関係が希薄であり、むしろ修飾用言と被修飾体言の文法的関係の違いによって-o-/-u-が現れるようであり、このようなことを総合すると「意図法」という名称は必ずしも適切ではないと思われる。

態の転換は接尾辞-gi-、-hi-、-i-によって表される。これらの接尾辞は現代朝鮮語と同様に、態の転換のみならず自動詞の他動詞化や形容詞の動詞化の際にも用いられる。例:'ormgi-(移す)< 'orm-(移る)、japi-(捉えられる)< jab-(捉える)、siei-(立てる)< sie-(立つ)。また、?語幹に付く態転換接尾辞に-@-/-y-がある。例:sar@-(生かす)< sar-(生きる)。
接続形

接続形(連結形)は現代朝鮮語と同じく非常に多様である。以下に中期朝鮮語に特徴的なものをいくつか例示する。

-o-/-u-(韓国で「意図法」と称される)を含む形式がある。これらの形に含まれる-o-/-u-は、現代語に至る過程で多くは-?-へ移行する。例:-o/-ud@i(…するに)、-o/-urie(…せんと)。

-ge-と-a-/-e-の対立を持つ形式がいくつか存在する。これらは未完了・完了の対立であると言われる。例:-genyr?-a/-enyr(…するが、…するので)、-gedyn?-a/-edyn(…したら)。

形式名詞を含んだ分析的形式が文法化して語尾化したと見られるものが多く見られる。例:-rss@i(…するので)< -r(連体形)+s@(形式名詞)+-@i(処格語尾)、-nd@r(…するとは)< -n(連体形)+d@(形式名詞)+-r(対格語尾)。

連体形

中期朝鮮語の連体形(冠形詞形)は現代朝鮮語と同様にn系とr系の2系列がある。n系・r系ともに「意図法」-o-/-u-を伴いえ、n系連体形はまた時相接尾辞-n@-、-de-、-ge-、-a-/-e-を伴いうる。また、中期朝鮮語の連体形は体言相当語句としても機能することができ、連体形に直接格語尾が付きえた。例:h@sin@ro(したことで)< h@sin+@ro。
動名詞形

名詞形あるいは体言形とも称される動名詞形は-om/-umによって表される。現代朝鮮語と同形の-@m/-ymは用言派生の体言を作り、両者の機能は異なる。また、一部の語彙には-am/-em形も見られるが、これは生産的なものではなく中期朝鮮語の段階ですでに化石化していたものと推測される。例:mudem(墓)< mud-(埋める)。現代朝鮮語において生産的な-giは、中期朝鮮語において散見されはするが生産的ではない。
造語
合成語

中期朝鮮語の合成語の特徴としては、用言語根に直接他の語根が付く合成語が広く見られることである。例:'or@n@ri-(昇り降りする)< 'or@-(登る)+ n@ri-(降りる)、birmeg-(物乞いする)< bir-(乞う)+ meg-(食う)。中には用言語根に体言語根が付いた例も見られる。例:bsusdor(砥石)< bsuc-(擦る)+ dor(石)。
造語接尾辞

造語に関与する接尾辞には、以下のようなものがある。

-i:用言から副詞を派生する。例:nopi(高く)< nop-(高い)。

-@i/-yi:形容詞から名詞を派生する。例:nop@i(高さ)< nop-(高い)。

-b@-/-by-:動詞から形容詞を派生する。例:gisby-(嬉しい)< gisg-(喜ぶ)。

-gav-/-gev-:動詞から形容詞を派生する。例:masgav-(相応しい)< maj-(合う)。

-d@v-?-r@v-:体言から形容詞を派生する。例:疑心d@v-(疑わしい)< 疑心(疑い)。

文献資料

訓民正音の創製後、ハングルによる書籍が盛んに刊行された。主なジャンルと代表的な文献は以下の通りである。

仏典:『
釈譜詳節』(1447年)、『月印釈譜』(1459年)、『楞厳経諺解』(1462年)、『法華経諺解』(1463年)など。刊経都監から多くの仏典が朝鮮語訳された。『釈譜詳節』は諺解に拠らない散文体であり、また銅活字により印刷されており、文学的・書誌学的にも資料価値が高い。

詩歌:『竜飛御天歌』(1447年)、『月印千江之曲』(1447年)、『分類杜工部詩諺解』(1481年)など。『竜飛御天歌』と『月印千江之曲』は現代の正書法に似た形態主義的な表記法を一部に採用しており興味深い。

民衆教化書:『三綱行実図諺解』(1481年頃)など。この書籍は李氏朝鮮の儒教擁護政策とあいまって、李朝を通してたびたび重刊本が刊行されており、中期朝鮮語から近世朝鮮語にかけての言語的変遷を見る上で重要な資料である。

関連項目

古代朝鮮語

近世朝鮮語

参考文献

???(1997) “??? ?? ???????”,???

金完鎭(1973;1982) “中世國語聲調?研究”,國語學叢書4,國語學會

??(1992) “?????”,???????

安秉禧(1992) “國語史資料研究”,文學?知性社

安秉禧・李b鎬(1990;1991) “中世國語文法論”,學研社


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