両界曼荼羅
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各如来の東・南・西・北には四親近菩薩(ししんごんぼさつ)という、それぞれの如来と関係の深い菩薩が配されている。[注釈 6]

三昧耶会、微細会、供養会は中央の成身会とほぼ同様の構成をもっており、四印会はそれをやや簡略化したもの、一印会は他の諸仏を省いて大日如来一尊で表したものと考えて大過ない。

曼荼羅画面向かって右に位置する三会の曼荼羅はこれとはやや構成が異なる。理趣会は金剛薩?を中尊として、欲望を擬人化した菩薩がこれを取り囲む。これは、欲望を単に煩悩として否定するのではなく悟りを求める心に昇華すべきだという『理趣経』の理念を図示したものである。降三世会は仏菩薩が憤怒の姿を現したものとされ、代表して金剛薩?が恐ろしい形相をした降三世明王の姿で描かれている。降三世三昧耶会は降三世会を三昧耶形で描いたものである。これらの諸尊もすべては大日如来の悟りが形を変えて現われたものであり、すべては大日如来一尊に由来するということを表現したものと思われる。金剛界八十一尊曼荼羅

なお、天台宗では、上記の九会のものだけでなく、金剛界八十一尊曼荼羅とよばれる一会のものも用いられる。その構成は九会金剛界曼荼羅の成身会にほぼ同じであるが、三昧耶会、微細会、供養会にあらわれる「賢劫十六尊」という菩薩を追加し、四隅に降三世会、降三世三昧耶会にあらわれる明王を描いている。いわば一会をもって九会を代表する構成といえる。

胎蔵曼荼羅が真理を実践的な側面、現象世界のものとして捉えるのに対し、金剛界曼荼羅では真理を論理的な側面、精神世界のものとして捉えていると考えられる。
脚注
注釈^ 「だいまんだら」と呼称する。
^ 「ほうまんだら」と呼称する。
^ 「さまやまんだら」と呼称する。
^ 「地曼荼羅」ともいう場合がある。日本では曼荼羅を絵画として描き、掛軸状に装丁したものを台座の上に載せて灌頂の儀式の際に用いるもので、それを「敷曼荼羅」(しきまんだら)と呼ぶ。
^ 「かつままんだら」と呼称する。
^ 大日如来の四方を囲む菩薩、および各如来の四方を囲む四親近菩薩は以下の通りである。(東方=下、南方=左、西方=上、北方=右)(各菩薩には異称が多々存在する)

大日如来(中央)の輪の中

金剛波羅蜜菩薩(東方)

宝波羅蜜菩薩(南方)

法波羅蜜菩薩(西方)

羯磨波羅蜜菩薩(北方)


阿?如来(東方)の輪の中

金剛薩?(西方)

金剛王菩薩(北方)

金剛愛菩薩(南方)

金剛喜菩薩(東方)


宝生如来(南方)の輪の中

金剛宝菩薩(北方)

金剛光菩薩(東方)

金剛幢菩薩(西方)

金剛笑菩薩(南方)


阿弥陀如来(西方)の輪の中

金剛法菩薩(東方)

金剛利菩薩(南方)

金剛因菩薩(北方)

金剛語菩薩(西方)


不空成就如来(北方)の輪の中

金剛業菩薩(南方)

金剛護菩薩(西方)

金剛牙菩薩(東方)

金剛拳菩薩(北方)



出典^ 『岩波 仏教辞典』 第1刷 (岩波書店)「胎蔵(界)(670頁)」。
^ なお、通常日本に取り入れられた曼荼羅の呼称について胎蔵界曼荼羅・胎蔵曼荼羅の2つが併用されているが、密教学者・頼富本宏は『曼荼羅の美術 東寺の曼荼羅を中心として』において「曼荼羅の典拠となった『大日経』と『金剛頂経』のいわゆる両部の大経を意識したものであり、空海もこの用語(注:両部曼荼羅)のみを用いている」「即ち『金剛頂経』には、明確に金剛界曼荼羅を説くのに対して、『大日経』では大悲胎蔵曼荼羅もしくは胎蔵生曼荼羅を説くのにかかわらず、胎蔵界曼荼羅と言う表現は見られないからである」と書いている。また頼富本宏は、円仁・円珍・安然など天台密教(台密)が興隆すると、修法のテキストにあたる次第類の中に「胎蔵界」と言う表現が用いられるようになり、両界曼荼羅・胎蔵界曼荼羅の語が使われるようになったとする。
^ 田中,1987,p.93

参考文献

石田尚豊『曼荼羅の研究』全2巻、東京美術、1975年。

田中公明『曼荼羅イコノロジー』平河出版社、1987年。ISBN 4-89203-122-4










密教 (金剛乗仏教)
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