両生類
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また、皮膚呼吸への依存が大きいため体循環側でもガス交換が行われているほか、無尾類では肺循環側(肺皮動脈)からも体表側に通じる血管が存在しており、成体になると鰓に行く血管(腹大動脈から分岐)が退化する代わりに肺皮動脈から皮下動脈が分岐し、心臓から直接こちらに血液が送られるように成って皮膚呼吸の効率を高めている[6]

生息域は一般に、川、沼、湖などの淡水およびその周辺であることから、海水魚からではなく、淡水魚から派生して誕生した動物群であると考えられている。実際に、両生類の体は塩分に対する耐性が低く、海産の種も確認されていない。(汽水域に生息する種はいる:カニクイガエル)ただし化石種には海に住むものも存在した。

現生種・化石種を含め、完全な植物食の種は知られていない[7]

アミノ酸の代謝などによって生ずるアンモニアは、両生類にとっても有害な物質である。このアンモニアの排泄を行う方法も生育環境で大きく異なり、無尾目同士でも普通のカエルの場合は幼生(オタマジャクシ)の時は鰓からアンモニアのまま大半を排出する[8]が、変態後はアンモニアを尿素に変えて腎臓から排出する[8]方が主流となるのだが、生涯を水中ですごす種類の場合は幼生・成体共にアンモニア排出のままになる。これも、水を潤沢に利用できる[注釈 3]のか、そうではないのかが関係しているものと見られている。

普通のカエルと生涯水棲のゼノパス(ツメガエル)の窒素排出物の構成比の違い[注釈 4][9]種類アンモニア尿素
カエル(幼生)7510
カエル(成体)3.291.4
ゼノパス(幼生)7822
ゼノパス(成体)7525

生活史

現存する無尾目、有尾目、無足目の3目はいずれもかなり生態に差異があり、同じ目内でも例外が多い。

卵生のものが多く、基本的には水中に産卵する。有尾目と無足目では
卵胎生の種も多い。受精方法も体外受精体内受精の双方があり、体外受精は無尾目の大半やサンショウウオ上科など一部の有尾目に見られる。一方、体内受精は精包を受け渡す形(有尾目の多く)で行うものから、外部生殖器を持ち交尾するもの(無足目の大半と、無尾目の例外的なオガエル [10]など)が存在する。

卵は殻を持たず、ゼラチン質で包まれ、水中に生み付けられる。しかし、ヤドクガエル科プレソドン科など陸上で産卵する種類も珍しくはない。幼生や変態の終わった幼体を直接産む種類もいる。

成長過程で、変態を行い大きく形が変わるものが多く、特に無尾類の幼体は親とは別にオタマジャクシと言う。幼体は四肢が無く尾鰭があるなど魚類に似ているが、無尾類の幼体はかなりずんぐりしており、有尾類の場合は発達した外鰓を持つ(無尾類は孵化直後にはあるがすぐに隠れる)など、一般の魚類[注釈 5]とは異なる所も多い。

成体は基本的に四肢が生え(無足類やサイレン科は例外)、陸上生活を営めるものも多いが四肢があっても生涯を水中で生息する種類もいる。

呼吸に関しては全種、幼体・成体を問わず皮膚呼吸が発達しており、特に有尾目では皮膚呼吸のみで肺呼吸をしない種類(ハコネサンショウウオ属アメリカサンショウウオ科)が過半数(全425種類中の275種類)を占める[注釈 6]が、幼体時から肺呼吸をするメキシコサンショウウオもいるなど呼吸方法の多様性が強い、無足目も詳細不明なものが多いが同じように多様性が強いと考えられている[11]。逆に無尾目では孵化時点から機能はせずとも肺があり、幼生期(時期は足が生え始める前から変態直前まで色々)からこれが発達して肺呼吸をする方が多くの科に見られ[注釈 7]、例外的にヒキガエルの仲間やナガレガエルの仲間は変態完了まで肺が機能せず肺呼吸をしない[12]。また更なる例外として前述のオガエルは成体でも肺が退化している[13]

有尾目の一部の種では、変態をしないで幼生の形態のままの成体になる幼形成熟ネオテニー)が知られる。また変態が途中で終了する種も存在する。例えばアメリカ合衆国に分布するヘルベンダー(アメリカオオサンショウウオ)は鰓孔が最後まで消えないためそういった考え方も出来る。逆に変態を終えた姿で生まれる種も多い。

絶滅の危惧

カエルツボカビ症による両生類の絶滅が危惧されている。致死率は90%にも上る。

飼育上の注意点として、麻布大学の宇根有美准教授(獣医病理学)は、「飼っている両生類に異変があれば、すぐに獣医師などに相談してほしい。水の管理が最も重要で、水槽の水を排水溝や野外に流さないでほしい」としている。
分類

下位分類体系の一例を以下に示す。

迷歯亜綱 †Labyrinthodontia - 絶滅した分類群

イクチオステガ目 †Ichthyostegalia

分椎目 †Temnospondyli

炭竜目 †Anthracosauria


空椎亜綱 †Lepospondyli - 絶滅した分類群

欠脚目 †Aistopoda

ネクトリド目 †Nectridea

細竜目 †Microsauria

リソロフィス目 †Lysorophia


平滑両生亜綱 Lissamphibia - 現生の両生類

無尾目 Anura - カエルのなかま

有尾目 Caudata / Urodela - サンショウウオイモリなどのなかま

無足目(アシナシイモリ目) Gymnophiona


系統関係現在確認された中で史上最大の両生類とされている古生代ペルム紀後期のプリオノスクス

四肢動物デボン紀後期の約3億6000万年前に肉鰭綱から進化した。ハイギョ類とシーラカンス類のどちらに近いかは未だ決着がついていない。デボン紀後期になり、両生類が初めて陸上に適応した脊椎動物として現れた[14]

肺呼吸獲得については「板皮類の肺が食道の変化で先に完成し、それが現生魚類の浮袋に変化した。」という肺先行説と、「硬骨魚類の浮袋が先に完成し、それが肺に変化した。」という浮袋先行説があり、無尾目の胚の発生で最初から肺への動脈に鰓弓動脈の一部が伸びて呼吸器として使う前提の形になっている事は肺先行説に有利な証拠とされている[15]

最初期の四肢動物であるアカントステガイクチオステガは曲がりくねった大河川に住んでいたと思われるが、やや時代が下ったチュレルペトンのように海生と思われる種もいた。この時期の四肢動物は、まだ少なくとも一部はに覆われた魚類のような皮膚と、6本以上の指を持つ水を掻くのに適した四肢を持つ、ほとんどを水中ですごす動物であったらしい。

石炭紀になるとペデルペスのように陸上生活に適応した四肢を獲得し、二次的に水中に戻った種も含め多様な種が生まれた。石炭紀後期にはすでに有羊膜類が枝分かれして行き、これら迷歯亜綱に分類される動物たちは徐々に水中生活にウエイトを戻していく。これら古いタイプの両生類は、中生代になっても三畳紀には世界中の淡水系に数mにも及ぶ巨大な種が繁栄していたが、三畳紀末の大絶滅以降急激に衰えて、一部地域に遺存種を残すのみとなり、白亜紀前期に絶滅した。

現生両生類である平滑両生亜綱に属する無尾目・有尾目・無足目の起源と関係は未だはっきりとわからないが、すでに約2億9000万年前のペルム紀前期に無尾目・有尾目・迷歯亜綱分椎目の特徴をモザイク状に有するゲロバトラクスが存在した。

三畳紀のマダガスカルには現生のカエルにある程度近い姿のトリアドバトラクスが生息し、ジュラ紀になると今と外見上は変わらないカエルが世界中に分布を広げていた。

現在発見されている有尾目とされる最古の種は三畳紀後期のキルギスタンに生息していたトリアスルスTriassurus sixtelaeである[16]。ジュラ紀中期にはキルギスタンから Kokartus、イギリスからネオテニー的な水生種 Marmorerpeton の化石が発見されている。これらはもっと後の種の解剖学的特徴のいくつかを持たなかったが、ジュラ紀後期には現在のトラフサンショウウオに似たカラウルスオオサンショウウオ科チュネルペトンが生息していた。

無足目はジュラ紀初期のまだ四肢が残っているエオカエキリアの化石が見つかっている。また三畳紀の分椎目キンレステゴピスはエオカエキリアといくつかの特徴を共有しており、類縁関係があるのではないかという説がある[17]


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