両生類の減少
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赤足病(原因菌 Aeromonas hydrophila)、ラナウイルス感染症(Iridiviridae科)、Anuraperkinsus 属による感染症、カエルツボカビ症などである。

なぜ複数の疾病が急に両生類の個体数に影響するようになったのかははっきりと判っていないが、いくつかの証拠[12]が示唆するところでは、これらの病気は人間によって拡散したのかも知れないし、また他の環境要因と結びついてより毒性を増したのかもしれない。

ストレスの増加は疾病に対する抵抗力を下げるため、環境破壊・汚染・気候変動などが間接的に疾病の増加をもたらしているかもしれない[11]
吸虫

扁形動物の寄生性吸虫(ジストマ)が、いくつかの地域での両生類の異常発育と生息数減少に関係しているという考慮すべき証拠がある[13]。Ribeiroia 属であるこれらの吸虫は、3種の宿主をもつ複雑な生活環を有する。最初の宿主は水生巻貝の多数の種を含む。吸虫は幼生期の初期に水生オタマジャクシへ移動し、そこではメタケルカリア幼生は手足芽が発生する際に包嚢に包まれる。包嚢に包まれた生活段階は、変態後の過剰肢や欠損肢を含む発育異常を引き起こす[14]。これらの奇形によりカエルが吸虫の最終宿主である水鳥に捕食される確率が高まる。
カエルツボカビ症

1998年、オーストラリアと中央アメリカでのカエルの大量死について研究チームは同じ結論に到達した。かつて記載されていなかった種の病原菌、Batrachochytrium dendrobatidis である。いまやオーストラリアとアメリカでの最近の両生類の大量絶滅がこの菌と関連していることは明らかである。この菌類は一般的には病原性でないツボカビとしてしられる Saprobes 科に属する。

Batrachochytrium dendrobatidis によって引き起こされる疾病はカエルツボカビ症 (chytridiomycosis) と呼ばれる。この病気に感染したカエルは皮膚の損傷と角質化を引き起こし、皮膚を通じた呼吸を不可能にして死に至らしめると考えられている。感染から死までの期間は、実験によって1?2週間であると判っている。

それに続く研究により、この菌はオーストラリアでは遅くとも1978年、北米では1970年代に出現したと確証された。最初に感染が記録されているカエルはアフリカツメガエル (Xenopus laevis) である。 ツメガエルは世界中のペットショップで売られ、研究室で使われているため、ツボカビがアフリカから移出されたというのはありうることである。
ラナウイルス

2008年11月14日朝日新聞の記事によると 麻布大・宇根有美准教授らが海外の論文を調べ、漁業に被害をもたらしているラナウイルスがカエルにも感染し、死因の多くを占めていると発表したという[15]

また、2009年6月11日読売では、前年9月にウシガエルの大量死が確認されラナウイルスの感染が確認されたとの記事が掲載され、更に同年11月アサヒ・ドットコムの記事では、2008年初夏にカスミサンショウウオへの感染と集団死が発見されており、ウシガエルの件発生地とは35キロ圏内とされていた。
気候変動

熱帯雨林のような生態系は驚異的な比率で破壊されており、利用可能な生息地を減少させている。また汚染物質はオゾン層を破壊し、カエルの敏感な皮膚に太陽光による損害をもたらし、さらに免疫系にも影響を与えている。

中南米では、エルニーニョによる乾燥が問題視されている。1988年から1990年にかけての乾燥が、オレンジヒキガエルなどの繁殖に悪影響を与えた可能性がある[11]
紫外線の増加

多くのほかの生物と同じく両生類も成層圏のオゾン層破壊による紫外線 (UVB) の増加に害を被っている。

損害の規模は生命段階、種、他の環境要因によって異なる。したがっていくつかの種には紫外線は卵や幼生のような初期の段階で害を与え、他の種では成体時により有害(たとえば眼の損傷)である。紫外線照射はある種や生命段階を殺さないかもしれないが、亜致死障害を引き起こすかもしれない。紫外線は気候変動・汚染物質・疾病と共同的に作用するかもしれない。

両生類は外温性であり、熱帯以外では体温を上げるために日光浴をする。このため、内温性動物より紫外線の影響を強く受ける。特に高山性のカエルは多くの紫外線を受けることになる[16]

両生類に対する紫外線の影響についてのほとんどの論文に関する最近の総説によると、自然なレベルの紫外線に晒された幼生には重大な致死性は見られなかったことがわかっている。さらに紫外線照射後の死亡率増加を報告する少数の研究は、種の生活史を考慮すると非現実的な実験条件で行われていた。例えば、通常倒木や石の下に産卵尾するサンショウウオの一種の卵は浅い水の中で直接日光に晒された。泳ぐことも隠れ家を見つけることも出来るオタマジャクシは避難場所を見つける可能性もないまま長期間紫外線を照射された。全体として、両生類は自然のレベルの紫外線からはいくつかの要因によって保護されている。すなわち卵の中の光回復酵素(フォトリアーゼ)、卵と幼生のメラニン色素、卵と発生段階の幼生を包むゼリーコートなどである。特に有効なのは、両生類が産卵するために使う湖や池の水の上層数センチメートルに含まれ、水をにごらせ紫外線を減する有機物である。

何百万年もの間、両生類は紫外線の害に対する効果的な防御を進化させてきた。自然な状況下での紫外線による死や変異は1種の両生類でさえも報告されていない。大気のオゾン減少による紫外線のいくらかの増加にもかかわらず、紫外線を両生類減少の要因とする証拠は極めて弱い[17]
騒音

無尾類の発声は高度に発達しており、彼らの繁殖行動は多くの場合音声を使用する。このことは人類の活動による騒音レベルの増大が減少に関連しているかもしれないことを示唆している。タイでの研究では、環境の騒音レベルの増加はいくつかの種では減少、他の種では増加に繋がることが示された。しかし広範囲の減少の原因であることを示してはいない[18]
参考文献^ a b Stuart, S. N.; Chanson, J. S.; Cox, N. A.; Young, B. E.; Rodrigues, A. S. L.; Fischman, D. L.; Waller, R. W. (2004). "Status and trends of amphibian declines and extinctions worldwide". Science 306: 1783?1786.
^ Blaustein, A. R.; Wake, D. B. (1990). "Declining amphibian populations: a global phenomenon?" Trends in Ecology and Evolution 5: 203?204.
^ Crump, M. L.; Hensley, F. R.; Clark, K. I. (1992). "Apparent decline of the golden toad: Underground or extinct?" Copeia 1992: 413?420.
^ Pechmann, J. H. K.; Scott, D. E.; Semlitsch, R. D.; Caldwell, J. P.; Vitt, L. J.; Gibbons, J. W. (1991). "Declining amphibian populations: the problem of separating human impacts from natural fluctuations". Science 253: 892?895.
^ Houlahan, J. E.; Findlay, C. S.; Schmidt, B. R.; Meyer, A. H.; Kuzmin, S. L. (2000). "Quantitative evidence for global amphibian population declines". Nature 404: 752?758.


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