世界
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言い換えれば、世界観とは各時代の各地に住む人びとの生活体験や伝統的な観念を基礎とし、知的体系としての世界像とむすびついて、各人の生き方や行動の指針となる考え方という意味である。

人間界の個人や集団が所属ないし活動する、物理的・社会的・心理的な領域を指して用いられることが多いが、人間以外の生物のそれ、あるいは非生物や抽象的事象の領域等に対して用いられることもある。本稿においては、主に人間界のそれについて述べる。
語の由来と歴史

日本語の「世界」は、インドから中国を経て漢語として日本に伝来した来歴を有している。

源流となっているサンスクリットはローカダートゥ(loka-dhaatu)である。"loka "は、「空間」や「(林の中の)木の無い場所」「空き地」のようなものを意味していた。"dhaatu "は界を意味する。"loka-dhaatu "は仏教用語として用いられた歴史があり、「命あるものが生存し輪廻する空間で、そこにおいて一仏が教えを広める空間」を意味する。

このサンスクリットが漢語訳されたとき「世界」となった。「世」には時間の観念に重きをおいた字であり、「界」は空間に重きをおいた字であり、「世界」とは、時間と空間の両方に配慮した訳語である。ある経典では、東西南北上下が界であり、過去・現在・未来の三世が世である、といった主旨のことが述べられている。

中国においては、当初は仏教用語であった「世界」であったが、詩歌の分野において(特に唐詩において)次第に「世の中」や「世間」といった意味で使用されるようになった。これらの歴史が積み重なった状態で日本にももたらされ、『竹取物語』などでも「世の中」「世間」の意味で「世界」の語が用いられている。

西洋に目を向けてみると、古代ギリシア語では「kosmos」コスモス という言葉が用いられ[3]、この語は《世界》を意味しつつ、《美しい飾り》や《秩序》という意味も備えていた[3]。つまり、《カオス》という概念と対比されつつ、《美しい秩序をそなえた世界》を意味していた[3]。このようにギリシア?西洋においては、世界の概念は、秩序と関連づけられる面がことさら重視されたらしい[3]。『ヨハネによる福音書』においても、「言葉は世(コスモス)にあった。世は言葉によって成ったが、世は言葉を認めなかった」とある[3]。最初の二つの「世」(コスモス)は、神によって創造され神的秩序をそなえた世のことを指しており[3]、3番目の「世」は人間によって秩序を与えられた世間を指している、という[3]。そしてアウグスティヌスはこのくだりに基づいて、mundus(ラテン語で「世界」)を、被造物の全体としての世界と、世俗的な世間としての世界を区別して考えたという[3]『世界図屏風』のもととなったマテオ・リッチの『坤輿万国全図

江戸時代になって、当時の世界地図をもとにした『世界図屏風』[注釈 1]が広く流布したが、ここにおける「世界」は今日の用例と同じ、「地球」「万国」の意味である。1867年慶応2年)初版のジェームス・カーティス・ヘボンの『和英語林集成』では、これを踏襲して、地球、万国の意としての「世界」の語がみえる。また、井上哲次郎らの編集による『哲学字彙』(1912)には、world、cosmosの訳語として、「宇宙」とともに「世界」をもあてている。

堺屋太一は、チンギス・ハーンによって「世界」がはじめて意識されるようになったとしている。堺屋によれば、チンギス・ハーン自身が「東洋と西洋は1つ」という世界観をもっており、大量報復思想、信仰の自由とともに「ジンギスカンの三大発明」と呼んでいる[4]

なお、世界にかかわりの深い用語である「国際化(Internationalization)」は、17世紀ヨーロッパで成立し、その後世界的に拡大した主権国家体制の存在を前提にしている。それに対し、「グローバル化(Globalization)」は政治や文化、経済上の国境にとらわれない動きである。すなわち、前者では国境の役割は依然大きく、たとえば文物が国境を通過することは監視すべきものとされるが、後者ではそもそも監視すべきではなく、秘匿性が重要な価値観のひとつとして考慮されている。国際化あるいはグローバル化の進展によって、各領域、各分野においてトランスナショナルな関係も広がっている。現代においては、経済におけるグローバル化の進展とともに、とくに政治領域における地域化(Regionalization)の進展も顕著である。なお、歴史的には、地域相互の間の関係を称するのに「域際(Interregional)」の語も多用されてきた。17世紀のオランダは域際貿易や域際交流において重要な役割を果たしてきたといわれる。
世界の諸地域「大陸」、「大州」、「六大州」、および「地球の半球」も参照


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