世界金融危機_(2007年-)
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当時は「大きすぎて潰せない」という言葉が象徴するように大手金融機関の救済が優先されており、住宅ローンの債務者の救済が不十分だった[12]
原因・対策の研究

金融危機の原因や、対策の評価についての研究が続いている。危機の発生や拡大には、住宅ローンの証券化、低金利政策、シャドー・バンキング・システムなどが関わっていた。最大の原因は住宅投資の減少であり、そのもとをたどると住宅ローンに投資した人々の債務増加にいたる。特にサブプライム・ローンでは、返済能力を無視した貸付が以前から問題となっており、貸し倒れが増えたことで債務損失が増幅し、バブルが崩壊した[13][14]。金融危機の当初は、経済学者や政策立案者は債務者よりも銀行の救済を優先していたが、その後の研究では家計債務(特に住宅ローン債務)を減免した方が金融危機の回避に役立ったというデータが集まっている[12]
背景
証券化上段よりNASDAQ[15]ダウ平均株価[16]ローソク足(月足)、フェデラル・ファンド金利誘導目標[17][18](赤)、米国債10年物利回り[17](青)、JPY/USD[17](黄緑)、EUR/USD[17](紫)の月末値推移(1999年1月?2003年12月)

1970年代のアメリカから、住宅ローンの証券化が始まった。これは地域金融の弱点である各地域のリスクを補うために考えられ、国策会社である政府支援機関(GSE)によって進められた。地方銀行は地域のリスクから守るために住宅ローンを証券化してGSEに売った。GSEは証券化された住宅ローンを買うために、プールした住宅ローンを担保にして債券を売った。これが不動産担保証券(MBS)であり、GSEに多大な利益をもたらした。GSEの発行ではないプライベート・ラベルのMBSも1990年代に急増し、質の低いローンを証券化する方法としてトランチング(英語版)が考案された。トランチングとは、住宅ローンを細分化し、リスクが異なる債券に分けてローンに対する優先順位を定める方法を指す[注釈 1][20]。トランチングが繰り返されて大量のMBSが作られ、安全な証券として投資家に販売された。投資家はリスクが低いと考え、格付け機関も保証していたが、実際には質が低くリスクの高い住宅ローンから作られていた[21]
低金利政策

2000年にインターネット・バブルが崩壊し、IT・情報技術関連企業の上場が多いNASDAQ市場は暴落して、2001年第2四半期からアメリカのGDPが3四半期連続のマイナス成長となった[15]。失業率も増加を続けてアメリカの財政赤字は拡大した。FRBは2000年末から利下げを繰り返し、ジョージ・W・ブッシュ政権は大規模な所得減税を行った[注釈 2]。この結果、アメリカ金融史上で最も低金利の時代となったが、当時のFRB議長だったアラン・グリーンスパンは低金利政策が誤りだったと後に認めている[注釈 3][22][17]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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