フリードマンは多国籍企業の本社部門の所在それ自体を重くみる世界都市論を展開していたが、サッセンは「1960年代、1970年代に比べて都市の経済力を測定する尺度としては十分なものではなくなっている」と述べ、今や金融、高次法人サービスなどの活動こそが国際都市ヒエラルキーを左右し、世界都市を形成する要因として重要性をもつものと説明した[5]。経済活動の地球的な規模での分散が同時に地球規模の統合、コントロール機能の形成を促しており、こうしたセンター機能が集積する少数の都市(ロンドン、ニューヨーク、東京など)こそグローバル都市だとした[6]。
2017年、アメリカのシンクタンクであり、世界都市研究に深く関与し続けてきたシカゴ国際問題評議会(英語版)は、「何がグローバル都市を作るのか?」(英: What Makes a Global City?)という題名でグローバル都市の定義や傾向を定めた[7]。主な内容な以下の通りである。
世界経済をリードしている。
都市規模が大きい傾向にあるが、それだけでは十分ではない。
国内の若者なども含む、世界の人々を惹きつける魅力がある。
大学など高等教育が発展しており、子供や労働者にも充実した教育環境を提供している。
外国人の人口が多い。移民を惹きつける仕事があり、その情熱、気迫が都市のバイタリティーを高めている。
文化的な中心地である。博物館、劇場、レストラン、スポーツ、ナイトライフなどが充実している。
デスティネーション、いわば目的地であり、観光客にとって魅力的である。
政治的影響力があることは有利な条件である。首都ではないグローバル都市も領事館、シンクタンク、国際会議場などを有する。
国際的なハブであり、グローバルな連結性が高い。都市圏にメジャーな国際空港がある。
グローバル都市に必要な先見の明のある指導者がいる。
生活の質が高い。公共交通機関、クリーンな生活環境、治安のよさ、ヘルスケア、地方政府の効率性などが発展している。
オープンである。移民、デジタルコミュニケーション、トレードの制限などが少ない。報道の自由度が高い。
特徴
経済的特徴ニューヨーク証券取引所
ビジネス活動が盛んであり、都市の経済規模が大きい(東京は都市の経済規模が世界最大であり、2位のニューヨークも巨大な経済圏を形成している [8])。
国際的に活動している法人本社部門とその活動を支える金融・保険・通信・証券・不動産・法務・会計・広告・コンサルティングなどの高次法人サービス、それにレストラン・出版・印刷、運輸・倉庫・専門店・ファッション・ホテル・観光・教育・芸術・医療・福祉・娯楽などの補助サービスが集積している。
多国籍企業の本社など、世界経済に影響を及ぼす組織の中枢が所在する(2016年時点で世界の500大企業の中でもっとも本社数が多い都市は北京であり、2位は東京である[9])。
証券取引所、銀行、保険会社などが集積し、高度に発達した金融センターを形成している(世界を代表する金融センターとしてロンドン、ニューヨーク、シンガポール、香港、東京が挙げられる[10])。
労働人口における高学歴者の割合が高く、企業や市場にサービスを提供する専門サービス業や知的産業が発展している。
学術研究やビジネス、文化人など各分野における著名人が拠点を置いており、実績ある人材が集積している。
政治的特徴ホワイトハウス
中央政府など行政機関が所在し、グローバルな政治的影響力がある(主要国の首都であるワシントンD.C.、北京、東京、ロンドン、パリ、ベルリン、ローマ、モスクワなどが代表的である)。
大使館や領事館が所在しており、外交の舞台となり得る。
主要なシンクタンクがある(ニューヨークの外交問題評議会、ロンドンの王立国際問題研究所、北京の中国社会科学院など)。
国際機関や地域統合体の本部が所在する(たとえば、ニューヨークには国連本部があり、ブリュッセルには欧州連合の主要機関が置かれている)。
行政区画の人口が通常数百万人規模の大都市であり、さらに都市圏の中枢として機能している場合が多い。
都市が世界的な影響力を持つことから、通常世界政治ではあまり注目されない地方首長も各国から注目される場合が多い(たとえば、ニューヨーク市長や東京都知事、ロンドン市長といった上位世界都市の選挙の場合は、世界的なニュースとなる)。
文化的特徴大英博物館
都市の世界的な認知度が高い(たとえば、パリは「フランスのパリ」と国名を補足しなくてもそれが何かが自明であり、エッフェル塔や凱旋門など有名なランドマークがある)。
外国人の訪問者数が多い(2016年の統計によると、世界でもっとも外国人の訪問者数が多いのはバンコクであり、2位はロンドンである[11])。
世界的に有名な学府や文化施設を擁する(ロンドンのロンドン大学や大英博物館、ニューヨークのコロンビア大学やメトロポリタン美術館など)。
世界的に有名で世界情勢に多大な影響力をもつ通信社やマスメディアが本拠を置く(ニューヨークのAP通信やニューヨーク・タイムズ、ロンドンのロイター通信やBBC、パリのフランス通信など)。
チャイナタウンなど、都市の内部に複数の移民コミュニティーや異文化圏が存在することが多い。また、国際都市として大規模なビジネスを引きつけることから、その土地本来の文化とは別に異邦人文化も形成される傾向もある。
アートシーンをリードするさまざまな媒体や受け皿となる施設がある(ニューヨークのブロードウェイ(演劇・ミュージカル)、リンカーンセンター(オペラ、バレエ、音楽)、ソーホー(美術館)、七番街(ファッション)、マディソン街(広告)など)。
幅広いスポーツコミュニティが存在し、メジャースポーツチームが本拠を置く(ニューヨークのヤンキースやメッツ(プロ野球チーム)、東京のジャイアンツ(プロ野球チーム)、ロンドンのチェルシーやアーセナル(プロサッカーチーム)など)。また、オリンピック、ワールドカップなどの国際スポーツイベントを開催可能な、あるいは過去に開催した実績のある施設が存在する。
社会基盤の特徴ドバイ国際空港
公共交通機関や高速道路網が整備され、多種多様な交通手段をもつ。
複数の航空会社がハブ空港としている大規模な国際空港がある(2015年において国際線の利用者数が世界でもっとも多い空港はドバイ国際空港である[12])。
多国籍企業の運営には不可欠な、先端技術を用いた高速通信の都市基盤設備が整備されている(光ファイバーケーブル網、セリュラーネットワーク、インターネットアクセスなど)。
住居コストが高い(2016年の調査報告によると、シンガポールが世界でもっとも生活コストのかかる都市である[13])。
コミュニティの崩壊、ホームレスの増大、交通渋滞、外国人労働者の大量流入などの社会問題も抱える傾向にある[14](たとえば、ドバイの人口の83%は外国出身者で占められている[15])。
富豪、富裕層が多く、社会格差が大きい(2016年時点で、個人資産10億ドル以上の富裕層がもっとも多い都市はニューヨークであり、2位は香港である[16])。
対照的な概念詳細は「メガシティ」を参照