世界遺産
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このため、実質的には過去の物件に新基準を遡及して適用することが可能であり、現在の世界遺産センターの情報では、旧基準で登録された物件の登録基準も新基準で示している[104][注釈 18]

基準が統一されたあとも文化遺産と自然遺産の区分は存在し続けており、新基準 (1) - (6) の適用された物件が文化遺産、新基準 (7) - (10) の適用された物件が自然遺産、(1) - (6) のうち1つ以上と (7) - (10) のうち1つ以上の基準がそれぞれ適用された物件が複合遺産となっている[105]

登録基準(評価基準)[注釈 19]の内容は以下の通りである(「作業指針」第77段落[106])(以下は世界遺産センター公式サイトに掲載された基準[107]を翻訳のうえ、引用したものである)。基準(1)のみによって登録された『傑作』タージ・マハルロベン島。その登録は基準適用のあり方に議論を招いた。ビャウォヴィエジャの森は、野生絶滅に至ったヨーロッパバイソンの再導入地などとして重要である[108]

基準詳細
(1)『人類の創造的才能を表現する傑作。』この基準は、ユネスコが公刊しているマニュアルでは、天才に帰せられる基準ではなく、作者不明の考古遺跡などであっても適用できることが明記されている[109]。また、かつては芸術的要素を持つことが盛り込まれていたが、現在の基準にはそれはなく[110]、機能美を備えた産業遺産への適用も可能になっている[109]
(2) 『ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。』この基準のかつてのキーワードは一方向の伝播を想起させる「影響」だったが、「交流」に置き換えられている[111]。また、建築や記念工作物を対象としていた当初の文言に、文化的景観のために「景観デザイン」が、産業遺産のために「技術」がそれぞれ追加されるなど、対象が拡大してきた[112]
(3) 『現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。』この基準はもともと消滅した文明の証拠、すなわち考古遺跡をおもな対象とする基準だった[113]。しかし、文化的景観が導入された1990年代に順次改定され、「文化的伝統」や「現存する」といった文言が追加された[111]
(4) 『人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。』この基準はもともと建築に重点が置かれた基準だったが、文化的景観のために「景観」が、産業遺産のために「技術の集積」が追加された[114]
(5) 『ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。』この基準はもともと伝統的な集落や建築様式を主な対象とするものだったが、文化的景観の導入を反映して「土地利用」に関する文言が追加され[115]、のちには陸上だけでなく海上についても明記された[116]
(6) 『顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの。』この基準はもともと「出来事、思想、信仰」との関連しか書かれていなかったが、文化的景観の導入にともない「現存する伝統」「芸術的、文学的作品」が追加された[117]。たとえば、ザルツブルク市街の歴史地区にこの基準が適用されている理由には、音楽家モーツァルトを輩出した都市であることなどが挙げられている[118]。その一方、いわゆる負の世界遺産には、この基準 (6) が単独適用されたものが多いとされる[119]。しかし、この基準は原爆ドームの登録をめぐって紛糾した結果、単独適用が禁じられ[120][注釈 20]、「ただし、極めて例外的な場合で、かつ他の基準と関連している場合のみ適用」[121]という厳しい条件がついた時期があった。その厳しい文言は、3年後のロベン島の審議の際にかえって議論の紛糾を招き[注釈 21]、上記のような緩和された条件に変更された。
(7) 『ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。』「美しさ」は客観的な判定が難しいため、後述の基準 (10) が変更された1992年以降、諮問機関はこの基準単独での登録勧告をあまりしなくなっているとされる[122]。また、ビャウォヴィエジャの森(ベラルーシ / ポーランド)のような例もある。それは1979年の登録以来、基準 (7) のみで登録されていたが、2014年の拡大にともない、 (7) を外して基準 (9)・(10) へと差し替えられたのである[123]。日本では、富士山の推薦に当たって、適用が検討された[124]。結局、文化遺産の基準ではないとして推薦には盛り込まれなかったが、むしろ「美しさ」という基準を文化遺産の基準として捉える視点があってもよいはずだとする意見もある[125]。そもそも、本来この条項は手付かずの自然のみを対象とする基準ではなく、文化的景観が導入される1992年までは、文化と自然の相互作用に触れたくだりが存在していた[126]
(8)『地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。この基準に言う「生物の記録」とは化石のことで、カンブリア紀の化石産地である澄江の化石産地(中国)などが含まれるが、南アフリカの人類化石遺跡群などの化石人類関連の遺跡はこの基準ではなく、基準 (3) の対象となる[127]


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