世界の記憶
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制度改革

審査は非公開で、国家間で見解が異なる係争中の資料を密室審議することへの批判もあり、ユネスコの中立性・政治的利用が懸念され[17]、このことはユネスコも認めた[18]。2016年には日本政府がユネスコ分担金約44億円の支払いを凍結するなど異議を申し立て、制度改革を進めるとされた[19]。2018年のユネスコ執行委員会(ユネスコ加盟58ヶ国で構成)で議題として扱われ、2019年には審査に新制度をあてるとし、2018年は新規の申請を受け付けないと発表した[20]。しかしながら韓国の反対で翌2019年の協議が進展しなかったことから、改革は2020年秋に持ち越され申請受付も再度中止となった[21]。2020年は新型コロナウイルスパンデミックにより協議を開催できず、制度改革は2021年まで再延期された[22]

制度改革案は日本国内でさまざまな意見が発せられており、例えば慰安婦や南京事件の検証を続ける秦郁彦19世紀以降の事象は除外することを提言している[23]

2021年4月15日にオンラインで開催された執行委員会において、日本・韓国・中国など32の国と地域で構成した制度改革作業部会が取りまとめた改革案が承認され、各国からの申請があるとその内容を公開し、異議がある他国は90日以内に不服申し立てを行い、ユネスコの事務局が仲裁役として当事国間の対話を促し、双方の合意が得られた場合にのみ選定されることとなった。この決定をうけ、長らく停止していた新規申請の受付を年内にも再開し、2022-23年サイクルとして新たな選定を行うことになった[24]

こうしたことを日本でも文部科学省内に「『世界の記憶』国内案件に関する審査委員会」を設置し、新制度に対応できる物件の選定にあたることになり、増上寺(東京都港区)が収蔵する仏教聖典「浄土宗大本山増上寺三大蔵」と、日本と中国の文化交流の歴史を伝える「智証大師円珍関係文書典籍―日本・中国のパスポート―」の2件を推薦することとした[25]
選定後の変更

「世界の記憶」は選定後に対象物の追加や一部削除を認めるが(実例なし)[6]、抹消は出来ないことを松浦晃一郎前ユネスコ事務局長は指摘した[26]。その後、制度改革が進められ、原本が失われた場合や、真正性が否定されることが確認できた場合には選定抹消も可能となった[7]

なお、2021年の制度改革で決定した異議申し立ては、既存選定対象物への遡っての適用は行えない。
これまでの国際諮問委員会総会(MoW選考委員会)

1993年9月:準備委員会、
ポーランド・プウトゥスク(ポーランド語版)

1995年5月:準備委員会、フランスパリ

1997年9月:ウズベキスタンタシケント

1999年6月:オーストリアウィーン

2001年6月:韓国慶州

2003年8月:ポーランドグダニスク

2005年6月:中国麗江

2007年6月:南アフリカプレトリア

2009年7月:バルバドスブリッジタウン

2011年5月:イギリスマンチェスター

2013年6月:韓国・光州

2015年10月:アラブ首長国連邦アブダビ

2017年10月:フランス・パリ

※上掲「制度改革」の項にあるように、2018年以降中断。

2023年5月:フランス・パリ[27]

登録物件

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させてください。反映後、このタグは除去してください。(2019年6月)
詳細は「世界の記憶の一覧」を参照第9回定期総会終了時の選定物件の国別分布図(2009年7月31日)[注 3]

世界各地に多数の選定物件があり、2005年6月18日時点で57ヶ国120点、2009年7月31日時点で193点(35点追加)[28]2011年5月25日時点(第10回定期総会終了時点)では75点を追加し268点となった。

なお、以下に記述する地域区分はユネスコの発表に準じたものであり、通常、日本で用いられる地理的区分とは大きく異なるので注意が必要。例えば、一方でトルコヨーロッパに含まれ、エジプトモロッコなどはアフリカではなくアラブ諸国に含まれる。サウジアラビアなどもアジアではなくアラブ諸国に含まれるが、他方、オセアニアはアジアと同じ区分として扱われる。
ヨーロッパおよび北アメリカ

ヨーロッパおよび北アメリカ地域では、現在、145点が選定されており[29]、特にドイツの選定数が多い。代表的な登録物件としては、子供と家庭の物語(グリム童話2005年選定)、バイユーのタペストリー(バイユー・タペストリー美術館所蔵、2007年選定)、ニーベルンゲンの歌2009年選定)、マグナ・カルタイギリス、2009年選定)、アンネの日記(文学作品[注 4]、2009年登録)[28]グーテンベルク聖書2001年選定)、ベートーヴェン交響曲第9番の自筆楽譜ベルリン国立図書館所蔵、2001年選定)、共産党宣言及び資本論初版第1部(2013年選定)[30]などが挙げられる。

ドイツ (13)、オーストリア (12)、ロシア (11)、ポーランド (10)、デンマーク (8)、フランス (8)、イギリス (8)、オランダ (7)、スウェーデン (6)、ハンガリー (5)、アメリカ合衆国 (5)、リトアニア (4)、ノルウェー (4)、ベルギー (3)、カナダ (3)、チェコ (3)、イタリア (3)、ポルトガル (3)、スロバキア (3)、トルコ (3)、クロアチア (2)、エストニア (2)、フィンランド (2)、ラトビア (2)、セルビア (2)、スペイン (2)、ウクライナ (2)、アルバニア (1)、アルメニア (1)、アゼルバイジャン (1)、ベラルーシ (1)、ブルガリア (1)、アイスランド (1)、アイルランド (1)、ルクセンブルク (1)、スロベニア (1) [29]


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