まず、申請者はユネスコ本部内の一般情報事業局に申込書を提出して書類審査を受けるが、申請は1国で2件までであり、日本の例では3件以上の申し込みがあれば日本ユネスコ国内委員会が2件に絞り込むよう調整が行われる[8]。
審査はユネスコ事務局長が任命する委員14名によって構成された「国際諮問委員会 (IAC)」を通じて1997年から2年毎に「MoW選考委員会 (Register Committee)」の場で選定を行っている[6][リンク切れ]。国際諮問委員会の委員は、ユネスコの「公共図書館宣言」[9]の公文書館[注 2]やワールド・デジタル・ライブラリーへ参加する図書館の司書などが多い。委員に求められる資質は、国連出版物の編纂や国際的な図書普及啓蒙活動に関与した実績、典籍研究が広く評価されていることなどとされ、国際図書館連盟 (IFLA) や国際文書館評議会 (ICA) からの推挙もある[6][12]。
ただし最終決定権はユネスコ事務局長に委ねられ、2015年審査分にパレスチナが申請したアーカイブ「Palestine Poster Project Archives」はあまりにも反ユダヤ主義的で文化摩擦を招きかねないとして、イリナ・ボコヴァ事務局長(当時)の判断により除外された例もある[13]。なお、この権限も制度改革で改められ、最終的な選定合否はユネスコ大使などによる「世界の記憶執行委員会」が行うことになった。 選定における基準は以下のとおりである。 対象となる歴史資料は、世界遺産同様に真正性
選定基準
1次的基準
1. 影響力2. 時間3. 場所4. 人物5. 対象主題6. 形態及びスタイル7. 社会的価値8. ほか
2次的基準
1. 元の状態での保存2. 希少性3. ほか
選定指針
また、近現代史資料に関しては記録の客観性も評価の対象となる傾向がある。2013年に審査されたシンガポール申請の録音テープ媒体「日本占領下の証言集 (Japanese occupation of Singapore oral history collection)」は戦後かなり経ってからの回顧録で、客観性に欠けるとの理由から不登録となった[14]。 ユネスコが定義する記録物とは、1978年に採択した「可動文化財の保護のための勧告」[15]で、以下の各項に該当するものである。 世界遺産と無形文化遺産は申請国の法的保護根拠を必要とするが、「世界の記憶」にはそうした条件が求められない。 また、歴史が浅くても構わず、例えば韓国の「光州事件の民主化運動に関する記録」は1980年、フィリピンの「ピープルパワー革命(エドゥサ革命)時のラジオ放送」は1986年、東ティモールの「ターニングポイント:国家誕生の時」は1999年 - 2002年にわたる出来事の資料が選定されている。 世界遺産同様にトランスバウンダリー(国境を越えた複数国による共同申請)も推奨されており、2013年(平成25年)に選定された日本の『慶長遣欧使節関係資料』はスペインと共同で申請し、2017年(平成29年)には民間と地方自治体主導で日韓共同による『朝鮮通信使関係資料』が選定された[16]。 審査は非公開で、国家間で見解が異なる係争中の資料を密室審議することへの批判もあり、ユネスコの中立性・政治的利用が懸念され[17]、このことはユネスコも認めた[18]。2016年には日本政府がユネスコ分担金約44億円の支払いを凍結するなど異議を申し立て、制度改革を進めるとされた[19]。
歴史資料の定義
(vi) 美術的に重要な物件:独創的創作手段としてのポスターおよび写真、あらゆる材料の独創的美術的なアセンブラージュおよびモンタージュ。
(vii) 肉筆および初期の活版印刷による古書・写本・書籍・文書または出版物。
(ix) 原文記録、地図その他の製図上の資料を含む文書・写真・映画フィルム・録音物および機械によって解読できる記録。
特徴
制度改革
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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