不老不死
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平家物語』は秦皇と不死の薬を言い及ぼすことがある[11]。無論それらを探し出せなかった徐福は始皇帝の怒りを恐れて、そのまま日本に「亡命」したと伝説は語っている[8]

この世で強大な権力を手に入れた始皇帝は死を恐れ、不老不死を手に入れようと部下達に無理難題を押し付けた。始皇帝によって不老不死の薬を作ろうとする試み練丹術が始まったが、無謀な命令を受けた彼らが作りだしたのは「辰砂(しんしゃ)」、すなわち水銀などを原料とした丸薬であり、それを飲んだ始皇帝は猛毒によって死亡した。熱い砂漠を移動する中、始皇帝の死体はすぐに腐臭を放ち始めたが、皇帝の死を隠すために、皇帝の馬車の前後に腐った魚を乗せたとか、側近が皇帝の死体を腐った魚が入った箱の中に入れたなどという話が残っている[5]

『史記』の他の項では、不老不死の薬が得られなかった代わりに「延年益寿」の薬の名が登場する[12]

他にも漢の武帝の時代に、「3000年に一度だけ実る西王母の仙桃を食べた」という東方朔の伝説が残っている[6]。また、李白白居易も「不老不死の薬」を作ろうと努力したと伝えられる。大形徹の『不老不死』という書籍では、中国で仙人伝説が生まれた状況や、その仙人の謎に包まれた生活様式や修行の内容、また不老不死の仙薬《金丹》がどのように描写されていたかが解説されている[13]
日本

日本の『竹取物語』では、月の国に由来するという不老不死の薬が物語の最後に登場した。かぐや姫は月の国へ戻る時、帝(天皇)のために不老不死の薬を残したが、帝はかぐや姫のいなくなったこの世で不老不死の薬など何の意味もないとして、薬を焼却処分してしまった。

古事記』にはイクメイリビコが登場する。食べれば不死になるとされるトキジクノカクという木の実を探すために、タジマモリ常世国に遣わす。タジマモリは苦難の末にそれを手にいれ、木の実を縄に通したものと串に刺したもの八つを作り帰還したが、その時既に天皇は死んでいた。半分を太后に渡し、残りをイクメイリビコの陵墓に捧げるとそのままの姿で息を引き取った、という話が記されている。ここには中国の神仙思想の影響が窺えるという[6]
生物学・医学

生物学的な文脈では不老不死と記載されていても、一般的な意味での「不死身(どのような状態でも死なない)」の概念は含まれていないことに注意を払う必要がある。詳細は「生物学における不老不死」を参照

まず、ヒトにおける「不死」の定義は、精神と肉体の死が分かれているため、サイエンス・フィクションが盛んな現代においては定まっていないという点に注意する必要がある。すなわち、死の三徴候(呼吸停止、心臓停止、脳停止)の永続回避であるか、不老が継続することによる老衰死の回避であるか、宇宙空間などの極限環境でも生命活動が停止しない状態であるか、脳などの重要器官が外的損傷や切断された後からの回復が可能な状態のことであるか、肉体が消滅してもその瞬間と完全に同じ状態を再現した肉体に精神を移植させることであるか、など不死の定義は様々に分かれているのである。

生物学的な見地では、個体の精神的個性を発生させる器官(ヒトにおいては脳)が不可逆的に停止したときが死である。単細胞生物多細胞生物も一定期間で細胞分裂を行い、子孫となる細胞を作るという方式で種としての生命を繋ぐ。単細胞生物は老衰による自然死は発生しないが、真核生物に属する場合はDNAに損傷を受けるとミトコンドリアによるアポトーシスが誘発されるため細胞機能停止による自然死を迎えうる。多細胞生物の細胞は細胞分裂を重ねるにつれてヘイフリック限界に達して老化を開始し、あるいは前述のように外的要因によるアポトーシスが行われ、この老化現象や細胞死が代謝が遅く代替の効かない心臓などの内臓器官に及ぶと不可逆的に停止して(寿命を迎えて)絶対死に至る[注釈 2]。このため細胞老化を司りヘイフリック限界を延長するテロメアテロメラーゼを活用して細胞死を回避し間接的な不老不死を発生させる研究が行われているが、いまだ動物における成功例はなくその大部分が細胞の癌化によって失敗に終わっている。
不老、不死の例

いったん個体が老化したのちに若返りができる動物(ベニクラゲなど)も存在するが、きわめて例外的でありまた「常に若いまま」という不老不死の定義にも反する。また一部のがん化細胞が不死株として培養され続けている例があるが、がん細胞は増殖能を持ち他の細胞を侵害する上栄養供給が断たれれば宿主とともに死ぬため、がん化が直接に不死をもたらすものではない。

現代の医学においても老化の防止は重要な課題である(抗老化医学)が、いわゆる若返りはおろかプログラム細胞死の回避すら困難なものであり、現代医学において長年にわたって老化を押しとどめるものではない。不老症は確認されていないものの、赤ん坊の姿のまま成長が止まっている16歳の女子ブルック・グリーンバーグの一事例が報告されている[14][15]。ただし彼女は2013年に亡くなり、”単に成長が止まっている”のか”能動的に老いを回避している”のかは不明のままである[16]

生物としては多くのカメ[17][18][19]ハダカデバネズミ[20][21]アホウドリ[22][23]などは、ほとんど老化せず年をとっても死亡率が上がらない。
人体冷凍保存
近年、人体冷凍保存(クライオニクス)という技術が注目を集めている。海外では、有名メジャーリーガーのテッド・ウィリアムズが自身の死後、遺体を保存している。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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