DSM-5とICSD-3では不眠症を原発性と二次性で分類するのをやめた。不眠症状が生じた原因の内容を問わず臨床症状から不眠症を診断する。不眠と精神疾患とが併存する場合、治療はその双方を標的にする必要がある。このため不眠症に並存疾患がある場合、2つの状態の因果関係を明らかにする必要はない[17]。
睡眠の問題を抱える人にしばしば睡眠薬が用いられ、たまに使用されれば役立つが、定期的に長期的に用いた場合、薬物依存症や乱用につながることがある[18]。英国国民保健サービスにおいては睡眠薬の処方は最終手段であり、かつ数日-数週間の限定でなければならないとしている[19][20]。豪州ガイドラインでは最大4週間である[21]。日本ガイドラインでは、睡眠薬は現在の主流であり成人の20人に1人が服用しているが、ベンゾジアゼピン系のリスクベネフィット比の悪さと、エビデンスが乏しいまま抗精神病薬が適応外使用されている現状を危惧している[22]。一部の不眠症患者では睡眠薬の長期服用する治療選択肢も許容されるが、「しかしながら難治性・治療抵抗性であることは無期限、無制限の処?を正当化するものではない[23]」とし、可能な限り断薬を目指すべきであるとしている[24]。認知行動療法には、医薬品と同様の有効性があり、また医薬品と異なり持続的な効果が判明している[25]。日本では、不眠症に対する認知行動療法は保険適応外となっている[26]。認知行動療法は自分で行うセルフヘルプも可能である(「不眠症#認知行動療法」を参照) 不眠の性質からは以下に分類され、不眠症患者の多くはこれらを複数訴えることが多い[10]。
分類
不眠症の症状[27]
入眠の困難さは、快適に眠る姿勢を見つけることが困難であることを含む。
夜間中に覚醒し、睡眠に戻ることができない。
起床時にすっきりしない感じ。
日中の眠気、易刺激性あるいは不安。
不眠の性質
入眠障害(Sleep onset insomnia)
夜になってベッドに入っても、いつまでも睡眠が訪れてこない状態である[10]。しばしば不安の症状がある。日照時間にまで睡眠時間帯が遅れていることが原因の睡眠相後退症候群は不眠症と誤診される[28]。
睡眠維持障害(Sleep maintenance insomnia)
中途覚醒。寝付くことができても、真夜中に目が覚めて再び入眠できない状態である。この情態から睡眠に戻るのが難しいという入眠困難であることもよくある。これらの人々の3分の2は夜間の半ばに目覚め、半数以上は睡眠に戻れない[29]。
早朝覚醒(Sleep offset insomnia)
寝付くことができても、朝早く目が覚めてしまい、再び入眠できない状態である。合計睡眠時間が6.5時間に達する前に、覚醒が(30分以上)早く起こり、睡眠に戻ることができなくなる。しばしばうつ病に特徴的である[30]。
熟眠障害(nonrestorative sleep)
睡眠時間はとれているはずなのに、十分に眠れたような気がしない状態である[10]。