不眠
[Wikipedia|▼Menu]
日本では、不眠症に対する認知行動療法は保険適応外となっている[26]。認知行動療法は自分で行うセルフヘルプも可能である(「不眠症#認知行動療法」を参照)
分類
不眠症の症状
[27]


入眠の困難さは、快適に眠る姿勢を見つけることが困難であることを含む。

夜間中に覚醒し、睡眠に戻ることができない。

起床時にすっきりしない感じ。

日中の眠気、易刺激性あるいは不安

不眠の性質

不眠の性質からは以下に分類され、不眠症患者の多くはこれらを複数訴えることが多い[10]
入眠障害(Sleep onset insomnia)
夜になってベッドに入っても、いつまでも睡眠が訪れてこない状態である[10]。しばしば不安の症状がある。日照時間にまで睡眠時間帯が遅れていることが原因の睡眠相後退症候群は不眠症と誤診される[28]
睡眠維持障害(Sleep maintenance insomnia)
中途覚醒。寝付くことができても、真夜中に目が覚めて再び入眠できない状態である。この情態から睡眠に戻るのが難しいという入眠困難であることもよくある。これらの人々の3分の2は夜間の半ばに目覚め、半数以上は睡眠に戻れない[29]
早朝覚醒(Sleep offset insomnia)
寝付くことができても、朝早く目が覚めてしまい、再び入眠できない状態である。合計睡眠時間が6.5時間に達する前に、覚醒が(30分以上)早く起こり、睡眠に戻ることができなくなる。しばしばうつ病に特徴的である[30]
熟眠障害(nonrestorative sleep)
睡眠時間はとれているはずなのに、十分に眠れたような気がしない状態である[10]
不眠の種類

種類からは、一過性、短期または慢性として分類することができる[10]
一過性不眠症(transient) - 一日から数日間持続する[10]

短期不眠症(short-term) - 数日から3週間持続する[10]

長期・慢性不眠症(long-term, chronic)- 1カ月よりも長く持続する[10]

低い睡眠の質

低い睡眠の質は、むずむず脚症候群睡眠時無呼吸症候群うつ病によって起こることもある。低い睡眠の質は、回復の性質があるステージ3や、デルタ睡眠に達することができないことが原因である。

うつ病は視床下部-下垂体-副腎系(HPA軸)の機能を変化させ、コルチゾールが過剰に放出されることで低い睡眠の質につながることがある。

夜間の多尿症(英語版)は、睡眠をかき乱す[31]
主観的な不眠症

一部の不眠症は、実は不眠症ではない。睡眠状態の誤解(英語版)は、正常な時間帯で寝ているのに入眠にかかる時間を過剰に見積もる。そのため、実際には8時間ぐっすり寝たのに、「4時間しか眠れていない」などと考えることがある。
診断

DSM-IV(『精神障害の診断と統計マニュアル』第4版)による他に原因がない不眠症である原発性不眠症の診断基準に従えば、診断基準Dの他の疾患が原因でなく、診断基準Eの医薬品や他の乱用薬物が原因でなく、診断基準Aの1か月以上持続しており、そして診断基準Bの臨床的に著しい苦痛、または重要な領域における機能の障害を引き起こしている場合である[32]。正常な短眠者や、正常な範囲の睡眠の乱れは、臨床的に著しい苦痛や機能の障害を起こさないため、頻繁に問題が生じ何か月にもわたり持続し、臨床的に著しい苦痛を伴ったり、少なくない機能の障害を引き起こしているものが不眠症である[16]。因果関係の知識は、診断のために必要ではない[33]

DSM-5の診断基準に従えば、その睡眠困難は、少なくとも1週間に3夜で起こる。その睡眠困難は、少なくとも3カ月間持続する[34]

睡眠医学(英語版)の専門家は、多くの異なる睡眠障害を診断するための資格を有する。睡眠相後退症候群といった様々な障害を持つ患者は、頻繁に原発性不眠症と誤診されている。
鑑別診断

多くの場合、不眠症は他の障害や、医薬品の副作用、心理的な問題との併存である。不眠症と診断された約半数は精神障害に関連している[33]。うつ病では多くの場合、不眠症は二次的なものというより、併存とみなされるべきであり、よく精神障害に先行する[33]。実際に、続く精神障害の表れであることがある[2]。うつ病の残遺症状として不眠症状が残る場合が少なくない[35]

DSMによる物質誘発性睡眠障害には、薬物依存薬物乱用薬物中毒、そして離脱が原因となることが指摘されている[36]。不眠の原因として多いのは、物質の使用あるいは離脱によるもので、原因として最も多いのはカフェインであり、娯楽薬や処方薬も原因となりうる[16]カフェインでは量に比例して(用量依存的に)睡眠時間が短くなる[36]バルビツール酸系ベンゾジアゼピン系鎮静催眠剤からの離脱中に薬物誘発性不眠症が生じることがあり、薬の中止から1か月後までに発症し、数ヶ月間、強度を減じながら持続する可能性がある[36]。特に、バルビツール酸系や非バルビツール酸系では、慢性使用により作用に耐性を生じ不眠症に陥ることがあるが、薬剤を増量すると今度は日中に物質誘発性過眠症を生じうる[36]

過眠症は睡眠が十分であっても日中に眠気がある状態である[16]。入眠に問題があるが、正常な睡眠規則がある場合には、概日リズム睡眠障害の可能性がある[16]
原因と併存疾患不眠症の合併症[37]

以下は不眠症の症状の原因となり、また併存することもある。

痛み[38]の原因となるけがや病気は、それぞれ入眠時に快適な姿勢を見つけることや、覚醒の原因となり睡眠を妨げる。

概日リズムの乱れは、このようなシフト勤務時差ぼけは、ある時間帯に眠れないとか、他の時間帯に過剰に眠いといったことの原因になる。慢性の概日リズム睡眠障害は、同様の特徴がある[39]

睡眠衛生が悪く、たとえば騒音による健康への影響(英語版)や過剰なカフェインの消費がある[39]

身体活動による、運動誘発性不眠症は入眠潜時が長くなる形で運動選手においてよくある[10][40]

精神生理性不眠症

持続性の精神生理性不眠症(psycopsyiologic insomnia)は、異常行動のひとつとされる[10]。患者は眠れないことに先入観、恐怖感、不安感をもっており、これが更に覚醒をまねき不眠を悪化させる[10]。睡眠恐怖症(insomnia phobia)とも[10]

対応は行動療法であり、睡眠衛生の改善、入眠前の睡眠を妨げる行動の矯正を行う[10]。ベッドに入っても20分以上覚醒する場合は、入眠不安解消のため、読書やリラックスなどを行う[10]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:213 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef